上毛電気鉄道 忖度無しレビュー
なすの地方鉄道ノートへようこそおいで下さいました。
今回は上毛電気鉄道上毛線のレビューをしていきます。
※辛口になる部分がありますので、苦手な方はブラウザバックをお願いします。
上毛線は前橋市の前橋中央駅から桐生市の西桐生駅を結んでいます。地方私鉄としては珍しくJRの駅と直接的には接続していない珍しい鉄道路線です。
今回は、上毛線全区間の乗車と、中央前橋駅、大胡駅、赤城駅、運動公園駅、西桐生での下車。JR前橋駅、JR桐生駅周辺の徒歩散策、及び沿線とは関係ないもののJR高崎駅周辺の散策を基にレビューしていきます。
レビューは「運行」「運賃・きっぷ」「駅」「車両」「その他」の5項目と、「5段階評価」を行う形でまとめていきます。
運行
運行本数
毎時2本をベースとし、朝夕時間帯に2~3本運行されています。朝夕増発分は前橋⇔大胡間の区間列車のイメージです。快速等は無く全て各駅停車です。
下調べの時には「朝夕に4本程度あればいいのに。」と思っていたのですが、高崎駅を拠点としている上信電鉄が毎時1~2本(約1.5本)、朝夕2~3本程度で運行しています。高崎駅という高い拠点性の起点駅だけではなく世界遺産「富岡製糸場」を沿線にもつ好条件にも関わらずこの本数ですので、上毛線が大変よく健闘しているなと感じました。
参考として他の路線では、
・東武桐生線赤城駅(赤城⇒太田)が日中1本、朝夕1~2本(特急除く)
・わたらせ渓谷鉄道桐生駅(桐生⇒間藤)が日中0~2本、朝夕1~2本
となっています。
しかし上毛線の利用状況はかなり厳しく、乗車客数で1000人を超える駅が1駅もありません。中央前橋駅より以前レビューした島根県の一畑電車の松江しんじ湖温泉駅(990人)ほうが利用客が多いほどです。これは抜本的な改善が迫られているのではないでしょうか。
JRと離れている中央前橋、西桐生の立地について
両駅ともにJR駅と離れてるメリットや強みが活かされていないと感じました。
・中央前橋駅
JR前橋駅から800mあり、常用での徒歩連絡は厳しいなと感じました。中心市街地や群馬県庁等の官公庁街からも程よく遠く、立地もあまりよくないと感じました。バス(JR前橋まで100円)を乗り継ぐか、周辺の市街地や歓楽街へのアクセスに限定されるのではないでしょうか。
JR前橋駅もAQERU前橋(商業施設)の開業により少しづつ賑やかになったものの、それ程拠点性は強くない駅であり、華やかな高崎駅と比べると大きな差があると感じました。
中央前橋駅周辺の開発はJR前橋駅と比べて更に消極的であり、上毛電気鉄道自身も鉄道運行だけで必死という雰囲気を感じました。駅前は商業施設どころかコンビニすらなく、少し寂れた歓楽街の端っこにという雰囲気でした。
中央前橋駅の周辺ではアーク前橋(美術館)、前橋プラザ元気21(地域交流センター)等が近接しますが、特に集客性の高い施設ではないように感じました。
中央前橋を拠点とするバスも一定数いるのですが「道沿いなのでついでに寄る」という雰囲気であり、拠点性として活発な様子はありませんでした。
以前レビューした熊本電気鉄道の藤崎宮前のような雰囲気に近く、JR駅と接続しない地方路線は、どちらかというとデメリットの要因のひとつなのかもしれないと残念に思いました。
・西桐生
JR桐生駅から350m程離れています。徒歩で5~10分程度ですので、徒歩での連絡もできなくはないなと感じました。立地もまずまずです。
桐生市の中心市街地に近い為、商店街や飲食店街、ドン・キホーテ(元長崎屋)がありますが、やや寂れた市街地ですので利便性が良いとは言えません。長崎屋が現役だった頃はなかなか華やかだったのではないでしょうか。
桐生市には桐生駅、西桐生駅、新桐生駅、相老駅などターミナルが完全に分散されていて使いにくいと感じました。
赤城駅での東武桐生線への接続
駅が離れているJRとの接続よりも同一駅で接続する東武線を重視しているようで、車内放送でも特急りょうもうの案内がありました。
しかし赤城駅も拠点性のある駅ではない上、先述のように東武桐生線の本数も多くない事から利便性が良いとは言えません。
運賃・きっぷ
初乗りが180円、中央前橋~西桐生の25.4㎞で690円となっています。初乗りは地方私鉄としては普通ですが、長距離はやや高い印象です。
また、並行するJR両毛線は前橋~西桐生で510円となり、JRの方がかなり安価となっています。上毛線はJR両毛線よりも4㎞程短いので勿体なと感じます。所要時間も上毛線は約52分、JRは約31分となっていますので、JRのほうが便利です。
企画切符としては少し割高ですが1日乗車券(1300円)や往復割引券が販売されています。特徴なのは東武方面への連絡きっぷが用意されていることが特徴でした。
駅
全体的に地方私鉄らしい駅だなと感じました。
地方私鉄らしく安全や福祉に係る設備設置が追いついておらず、スロープの設置率は高いものの、点字ブロックが無い(城東駅、三俣駅など)もしくは古い駅(西桐生駅など)が多いです。また接近放送等もないので、どちらかを先行して整備すべきだと思いました。
またICカードも非対応であり、これは首都圏を走る都市型鉄道としては利便性が悪いと思いました。
ただひとつ驚いたのが、自転車に対する素晴らしい取り組みです。無料のレンタルサイクルを中央前橋等で設置する他、殆どの列車かつ全区間でサイクルトレインとして持ち込みが無料で実施しています。
実際に持ち込む乗客の姿も何度か目にしており、周知されていることがよくわかりました。更に、全駅で駐輪場が設置しており、十分なスペースかつ多くの駅で屋根付きとなっています。
ここまで自転車の事を意識している鉄道会社も珍しいのではないでしょうか。改めて素晴らしいと感じました。
車両
元、京王電鉄で活躍していた700型で統一されており、イベント時のみレトロ電車のデハ100型が運行されています。
外装、内装は良くも悪くも地方私鉄らしい雰囲気でした。シートの表皮がかなり限界でしたが、2023年より東京メトロの中古車に置き換え開始とのことで、それまでの辛抱かもしれませんね。
乗り心地は悪くはなく、60㎞/h程度なら地方鉄道特有の突き上げるような揺れもありませんでした。遅延の際や運転手によっては最高速度の75㎞/h付近で走行し、その際は大きな騒音と揺れがありました。
踏切も多いことから前面排障板(スカート)があってもいいのかなと思いました。
その他
企画に関しては、あまり沿線に観光資源が少ないようで、車庫イベントやハイキングなどに限られていますので、県外からのお客さんを呼び込むのが難しいのかもしれません。
西日本出身の私からすると、高崎市や富岡市等の近隣都市と比べると、上毛線沿線の都市は自らのカラーをまだ見つけられていないように感じてしまい、正直「地味だな。」と思ってしまいました。前橋市(人口33万人)、桐生市(11万人)、みどり市(5万人)と沿線人口は比較的恵まれている筈なので、もう少し町を代表するイベントがあれば盛り上がる気がしてしまいます。
5段階評価
☆☆★★★ 星2つ
今後に期待!
まとめ
いかがでしょうか。
辛口な評価となりました。評価内容としては熊本電気鉄道に近い印象を持ちました。
上毛電気鉄道としては、運行本数の確保や自転車へのアプローチを中心に利用客促進に対し取り組んでいますが、鉄道路線の立地の悪さが際立っている他、沿線都市の観光、商業等の魅力が見えにくいように思います。
福祉や安全に関する面では、点字ブロックの設置すらない駅がある等、課題が多いと感じました。鉄道会社だけで解決せず、沿線自治体や民間団体とも協議して、前橋エリア一体となってサポートする体制作りをしても良いのではないかと思いました。
鉄道ファンとしてはJRと接続しないガラパゴスな雰囲気を楽しめる不思議な魅力がありました!昭和レトロ感がOKな方は西桐生駅から徒歩10分にある「五十番のソースカツ丼」がおすすめです。是非上毛線に乗って遊びに行ってみてはいかがでしょうか!
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