つわり中のあなたに届けるメッセージ。
妊娠〜出産を経験して、その1年弱は間違いなく簡単なものではなかった。
そんな中でも私が陣痛よりも、分娩よりも、産褥期よりも、つらくてつらくて仕方なかったのが"つわり"です。あれは妊娠8週目の夏の出来事でした。
私はいわゆる"重度妊娠悪阻"で3週間程度の入院をしました。本当につらくて、何度検索エンジンで「つわり 終わる 何週目」と検索したことでしょう。入院までしてしまうようなケースは少ないと聞くけれど、もちろん今まさにキツい人もいるはず。私は経験者のブログを読みあさってなんとか生きていたので、私も思い出しながら綴ってみようと思う。
空っぽになった体
残暑を感じることもなく、ぐったりする日々。
その頃の嘔吐は1日15回を優に越えていた。
夏バテでも風邪でもない、”つわり”です。
妊娠して、個人差はあるものの訪れる”つわり”。私がなってしまったのは「妊娠悪阻(おそ)」といういわゆる入院レベルの「飢餓状態」。ある時から私は嘔吐するだけでなく飲食物が一切摂れなくなった。
食べても飲んでも吐いてしまうので、しんどすぎて食欲なんてこれっぽっちも湧いてこない。当然仕事もいけず、家でぐったりしたまま過ごし、旦那の出勤をソファで見送り、全く同じ姿勢で「おかえり」と言う。時々口に氷をいれてもらったり、点滴に通ったりしながら乗り越えようと必死でいた。
9/1は私の30回目の誕生日。節目なので、本当は旦那とご飯にでもと思っていたが、お盆ぐらいから加速しだした私の悪阻はとどまることを知らずこの日も完全に寝たきりだった。
夕刻が訪れようとしていた頃、事態は悪化。
もうこれは吐き気云々じゃない、身体中が痛かった。息をしても苦しい、寝ていても苦しい。ずっと辛い。精一杯の声をだしてリビングにいた旦那を呼び「もう夜を越えられる自信がない」と泣いて訴えた。そして日曜日だったので救急外来に連れて行ってもらった。
そして医師から言われたことは、「飢餓を表すケトン値が3も出ている。入院を勧めますが希望しますか?」と。私はか細い声で「入院させてください・・・」と涙で訴えた。だってもう家にいるのは無理だ。何かあったときに処置ができる場所にいたかったし、お腹の赤ちゃんも心配だったし、何より毎度点滴に通う力なんて私には残ってない。痩せて筋力も落ちてしまい、うまく歩くことさえできないから。ぴったりだったデニムはジャージを履いているんじゃないかと思うくらいブカブカになった。
入院し、点滴をいれてもらってから、吐き気は和らぎ体の痛さは落ち着いた。でも1週間経っても「きもちわるさ」だけは全然消えない。ベットから体を起こすことすらできず、ただただ天井を眺めて嘔吐する日々。腕のいろんなところから点滴をいれたので、そこらじゅう傷だらけになった。ぜんぜん治る気がしなかった。お見舞いに来てくれた旦那に、ひたすら辛いと訴えてずっとずっと励ましてもらっていた。
久方ぶりに感じた空腹
しかし10日がすぎた頃、ついに「空腹」を感じ始めた。
入院してからというものの常に「絶飲食」で水を飲むことすら許されなかったため、今度はご飯が食べたくて仕方がなくなった。隣のベッドの人には運ばれてくる食事が自分のところには来ず、朝も昼も夜も関係ない毎日を過ごした。朝が来るのも、夜が来るのも嫌だった。その後、吐き続けてはいるもののすこしだけ状況が良くなった私は「水と飴」のみがようやく許された。最初の1個は美味しかったけど、何個も食べられるものじゃない。むしろ余計にお腹が空いてしまって、辛いだけだった。
サワーの飴を舐めたら吐くとき喉が辛い。
甘い飴を飴たら吐くときくどくて気持ち悪い。
どっちにしろ飴ですら嘔吐。笑
さらに数日が経過してついに「差し入れのものを食べて見ましょう」ということになった。
すぐに旦那さんにいろんな種類のお粥を買ってきてもらい食べたときはその美味しさに感動した。しかしながらすぐさまキレイに戻す。調子に乗ってお粥を食べたせいで、嘔吐で何も食べられない生活に逆戻りした。(調子に乗るのはあかんのです)
こんなでも診察によると赤ちゃんは順調。もう自分が辛すぎて、このときばかりは「よかった」じゃなくてちょっとだけ「このやろう」って思った。
ぶり返して数日。いまだ吐き続ける私はついに「肋骨」が痛くなってきた。
きっと吐く時ここに力が入るみたい。咳をしてもなんなら息をしても痛くてこの状態で吐く時なんてベッドで悶えた。
そんなある日ついに心が折れかけた。
「ちょっと落ち着こう!今日は仕事で来れないって言ってた旦那に電話でもしてせめて声を聞こう。」そう思って、点滴を引きづりながらロビーまで歩いた。
電話して彼の声を聞いた途端、精神的に崩壊してしまって涙が止まらなくなった。良くなっている気が全然しなくて。お腹どころか体の中は空っぽで7キロも痩せてしまって。吐きすぎで喉がイカれて、食べてないから体力もない。もう声もうまく出なくて自分でも聞き取れない。そして何よりもこんな状態だから赤ちゃんを愛しいと思えなくて。そんな自分が憎かった。
思ったことは何一つ心の叫びは言葉にならず、本当は「助けて」って言いたかったのに泣きながらか細い声で「大丈夫」って言った。
ロビーで涙が止まらないもんだから看護師さんが飛んできた。別室に連れて行ってくれて話を聞いてくれて泣き止むまでここにいていいと言ってくれた。そして面会時間も過ぎたころ、旦那も仕事終わりに飛んできた。ただただ手を握って励ましてくれて、心がだいぶ晴れた。
彼がいなかったらもう私はとっくにいろんなことを諦めてしまっていたと思う。旦那さんの支えって本当になによりも大切だ。病院は救急外来で入院したから決して家から近くなかったのに毎日1時間半かけて往復してくれた。本当に感謝しかない・・・。
そうやってなんとか乗り越えた入院生活。最後の5日はやっと病院食も食べられるようになり、お風呂に入って気持ちが良いと感じるようにもなった。
1ヶ月ぶりに私は人間らしくなれた気がした。窓の外を眺める余裕もでき、秋が来ていることにも気づいた。
退院してからもしばらくは吐き、点滴にも通った。それでもなんとか安定期に入り、臨月を迎え、わたしは3時間半という超安産で息子を出産したのでした。
こんなに可愛いなんて知らなかった
今思うことはただ一つ。あまりに息子が可愛くて、あの時あの日々を耐えて君に出会えて本当によかった。あの時の私に会えるなら、「こんなに可愛い子に会えるからがんばれ!」って言いたい。
そして今だからこそ「こんなに可愛い子が入っていたと知っていたならもっとがんばれたのに」とも思う。
今つわりを必死に耐えているママたちへ。まだ会えていないから半信半疑かもしれない。けれどあなたのお腹には間違いなく命が宿り、間違いなく天使のような可愛くて愛しい生き物が生きています。今日の頑張りも、これから出産までにあるかもしれない辛さも、全部見事に帳消しにしてくれる存在です。無理はしないでいいし、辛いと叫んだっていい。命はそれほどに尊いから、だから辛いんです。でもきっと越えられる。だからあなたもがんばって!