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どこ見てるの?

東京の美術館と大阪の美術館では、鑑賞するお客様の温度がまるで違う。

東京の展覧会は満員電車みたいに混んでいるのに、朝の通勤時みたいにしーんとしている。
時々ひそひそ声がする。虫が枯葉の上を這っているような音量だから、何を言っているのかわからない。面白いことは(たぶん)話していない気がする。

その点、大阪の展覧会は賑やかだ。元気な人多数。新世界みたい。ドヴォルザークの新世界じゃなくて、通天閣が見えるほう。ボケとツッコミが勝負している。関西DNAすごい。

モジリアーニ展では、肩パッドの入ったボディコン女性とちょい悪をやや通り越した感じのバブリーな大人カップルが作品の前で大声で話していた。

「このモジなんとかて人、昼間からカフェでくだまいてて、何もせんとあんたみたいやな」
「俺もこの人もインスピレーションが降りてくるのを待っとんねん!それが芸術家いうもんや」
「あんた大したアーティスト様やね。チャック開いとるで」男性は顔色も変えず「わざとや。風通し良くしてんねん!!」

大阪の人はチャック開いてたってタダでは起きない。っていうか、開いたチャックじゃなくてモジリアーニの作品をみてくださいよ。

モジリアーニの絵の中に、チャック開いてる人物がどこかにいないかと探してしまった私。当たり前だけど、どこにもチャックなんて描かれてなかった。

どこ見てるの?モジリアーニ








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