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「人が集まらない」と嘆く前に考えたい スタッフのための環境整備とは何か?

最近は、ラーメン店に限らず、飲食業界は慢性的な人材不足が指摘されています。採用の募集をかけても応募がない。何とか採用できたとしても、続かない。離職率の高さに悩まされている――こんなネガティブな話ばかりが耳に入ってきます。

だけど、僕はこう思います。

今、世の中ではパラダイムシフトが起こり、従来のような人の集め方ではまったく通用しなくなっています。ゆとり世代や悟り世代と言われる若者たちの意識が変わった。よく言われることですが、それだけじゃない。インターネットや技術書によってレシピがどんどん開示されていて、修行を積んでから独立しようという人が減っているという現状も見逃せません。「ラーメン作りのノウハウは店でしか吸収できない」という考え方が、まず古いんです。

そして、若い人たちが集まらないということは、僕たちが運営している会社やお店、ラーメン現場が魅力的に映っていないことを表しているのかもしれません。このような厳しい状況で、僕たちがやらなきゃいけないことは一体何なのか? そんなことを書いてみたいと思います。

冒頭に挙げたように、人が足りない、人が減って営業ができないという話ばかり。しかし、外部環境が変わり、スタッフになってもらう若者世代の意識がこれだけ変容しているのに、店舗側は果たしてチェンジできているのか? という問題があります。

みんな、従来どおりのやり方で人を集めようとしていませんか? 採用募集をかけて集まってきた人を、すぐに現場に入れる。厨房でもホールでも、やり方は仕事を通して実地で覚えてもらう。いわゆるOJT、オン・ザ・ジョブ・トレーニングです。しかし、その受け入れ方って、そもそもどうなんでしょうか?

人が足りないから即戦力として起用したい。それはよく分かります。だけど、往々にしてそこに飛び込まされたスタッフが長続きする確率は低い。定着しにくいんです。

ラーメンにたとえたら、先味です。お客様がラーメンを食べるその前に、笑顔で「いらっしゃいませ!」と元気に挨拶され、活気ある店内に案内される。そのように明るく迎えられて食べるラーメンと、そうじゃないお店のラーメンは、先味としてまったく印象が異なるでしょう。

採用も同じです。採用募集の電話応対、メールの返信から面接、合格から採用までの受け入れに至るまで、きちんと研修があって、その会社のことを理解してから現場に入るのか。それとも、入ったその日からいきなり洗い物をさせられるのか。採用された人の印象は、まったく異なってくるでしょう。

ハッキリ言いますが、多くのラーメン店は勉強していないと思います。ラーメンの作り方は自分自身で考え、磨いてきている人ばかりだと思いますが、採用、育成に関しては学びの姿勢を持っているでしょうか? 人が集まらないと嘆く店主さんに、僕は聞いてみたいですね。

人が動やったら定着してくれるか。スタッフが気持ちよく働ける環境とは何か? 成長ができ、会社に愛着が持てるようにするためにはどうしたらいいのか? マンパワーが集まり、組織として力をつけている会社は、みんな勉強し、考え抜いて手を打っています。たとえば凪、麺屋武蔵、ムタヒロ……彼らから「人が集まらなくて困った」という話は聞いたことがありません。きちんとお金をかけて仕組みや環境を作り、努力しているからです。

そう、人材を育てるのはお金も時間もかかります。研修の時間もスタッフには時給を払わなければいけませんし、教えるこちら側も時間を割かなければならない。だけど、それを投資として考えられるか? ということです。

技能やオペレーションのノウハウ、育成マニュアルがあればいい、という小手先の問題ではありません。会社のミッション、理念をしっかり理解してから現場に出てもらわなければ、お店の魅力もラーメンのおいしさも伝えられないからです。

まずはコストをかけること。人材教育に投資をしていくというマインドを持ちましょう。スタッフが成長したら会社にも還元がありますし、お客様にもメリットを伝えられる。自分たち、店側のことを先に考えるのではなく、まずは従業員のことを考えるという発想からしか、いい店、いい会社は生まれません。

スタッフ、お客様、店舗がみんなハッピーになるためには、三者の関係が好循環となり、経営を続けていくためにはどうしたらいいか? 環境整備についての考えを書かせていただきました。

次回はソラノイロの研修マニュアルを公開する「実践編」をお届けします。こちらもご期待ください!

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