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入社後の一年間。こんなのアリ?地獄
舅姑が経営するのは、小さな建設会社。
今でも覚えていることは、入社初日、何もすることがなかったこと。
与えられた事務机に着席し、とりあえず自分の荷物を置いた。
舅と姑は彼らの日課なのか、わたしの知らない人の悪口大会が始まった。
わたしは三十分後にはここに来たことを後悔したけれど多分もう遅かった。
初日だしこんなもんか、と思った。用意してくれていてもいいのに、と。
入社二日目、何もすることがなかった。
三日目になっても何もないので、姑に聞いてみた。
「私はここで何をしたらいいのですか」
彼女は、困った顔をした。
そうは言ってもねえ、私がやってるし。今のところは、とくにね。
(こちらこそそう言われてもいずれあなたと交代するって聞いたから来たわけで。何の説明もなく放置され、困った顔されてもね。)とはさすがに言えなかった。
そしてその状況は、半年経っても一年経っても変わらなかった。
私はただ出勤し、自席でなんとなく一日を過ごすだけ。
「教えてください」
と何度訴えても、あいまいにうなずき、謎の無言のちスルー。
本当に、本当にひとつもわたしに業務を譲らなかった。
そのころになるとわたしにもうっすら理解できていた。
姑は、舅がいうからわたしを入社させたけど、自分が辞める気は全然ないんだと。
業務を引き継いで自分が引退する気なんか、ちっともないんだってこと。
わたしに何かをさせることは、彼女にとって脅威なんだってこと。
夫も何度も指摘してくれた。
姑は、その一瞬だけあわててファイルみたいなものを出してきて見せ、教えるふりをしてくるけど、そんなの数分と持続しなかった。
夫の姿が消えるとすぐにわたしから取り上げて自分の腰から下げてる鍵のかかるキャビネットにしまう。
舅姑は、わたしに何をさせなくても給料を払ってそこに置いておけばいい、自分たちに何かあったときのために。
それを我慢することがわたしのつとめだと考えてる節があった。
雨の日は夫と社員たちも事務所にいることがあるので、少しはまし。
そんな日、ひと月平均で三日もないけど。
舅姑の視界に入る場所で、彼らのおしゃべりを一日聞いているだけの、
耐え難い時間を過ごして定時に帰宅。
本当に、何のために生きてるのかもわからなくなっていた。
それでも当時のわたし、「することないから辞めます」ってなぜか言えなかった。
夫と一緒に頑張ってやっていきたいと思ってたから、自分が我慢すればいいと思ってた。
一日を通して気分の晴れることはなかった。
平日はずっと暗い気持ちで過ごし、金曜日の夜は土日というひとときの解放があるからホッとできても、日曜の朝には、またどんよりしている。
明日もあの人たちのいる会社に行かなきゃいけない、って。
入社一年後、わたしは自分が適応障害を起こしているに違いないと不安に襲われた。