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ミスタードーナッツAI店員

昨日、久しぶりにミスタードーナッツ(以下スミド)に行った。本当に久しぶりだ。

娘たちとパスタを食べたあと、家へ帰ろうとした瞬間に「そういえば、ミスドでなんか新しいやつでたよね」と長女が呟くように小声で言った。

そういえば菅田将暉がニヒルを装い、その新商品を甘いマスクで口にするCMが流れていたことを思い出した。たしかに、オイシそうだと思った僕も「うん」と二つ返事でミスドへ向かった。

店内へ入ると人の列ができていた。けっこう人気があるんだなとミーハーな素振りをみせないように毅然とした態度で並んだ。

お盆とトングを次女に持たせて、色鮮やかに陳列されたドーナッツたちをショーケース越しに眺めた。

ああ、なんてオイシそう。

あれはズルい。ズルすぎる。食べたい衝動を抑えながら、お盆をスライドしていく。

最初はやはり今売りの新商品だった。ピエール・マルコリーニ……?(以下ピエマル)

その場でググって知ったのだが、ピエールなんちゃらさんはベルギー王室御用達の超有名パティシエらしい。さらにイケメンだ。それだけで期待は倍にふくれあがった。

4人家族、ひとり2個ということでピエマルを4つ、あとは個々に好きなやつを4つ選んでレジへ進んだ。

最近はコロナ対策でレジ前には飛沫防止のパーテーションがある。このパーテーション越しに会話する声が聞き取りにくいのはよくあることだが、担当したレジ店員の声が小さい。小さすぎる。

「お客様、お持ち帰りでよろしかったですか?」

前のめりに耳を傾けながら、

「はい?」

「こちらピエール・マルコリーニはお一人様、3個までとなっております」

「え?」

「どうなさいますか?」

店員はマニュアルを読むように間髪いれず言ってきた。

かなり聞き取りにくかったが、どうやらピエマルはお一人様3個限定のようだ。レジまで運ばれてきたピエマル1個は、店員の手によって入り口のショーケースに戻された。

たぶん、この店員は「お一人様、3個まで……」というセリフを何百回、いや、何千回も言ってきただろうと想像した。

入り口には注意書きがあったかもしれない。しかし隣のレジでも同じセリフを別の店員が申し訳なさそうに言っていた。店員が悪いわけではない。

「お一人様、3個まで……」

今日は何回言っただろう。そう思うと店員が無機質なロボットに見えた。

AIによる無人化が早く普及することを願いたい。



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