見出し画像

2 神社 鳥居 part1 なぜあの形?


動機 


先月、とある催しに参加するため初めて慶応義塾大学を訪問した。人生初の地、せっかくなら大学以外も散策したい!と一緒に参加する東京住みの友人に頼んで、周辺を案内してもらうことになった。

東京タワー・伊太利亜大使館・その傍の半地下の蕎麦屋…
田舎者では見ることのできない建物に、終始圧倒される中、私は声を出すほど変な建物を見つける。それがこちら↓


画像1.三田高野山弘法寺が管理する納骨堂

ビルで寺!?なんて高級感だ!
この写真だと分からないがしっかり直方体。
思っていたお寺と全然違う。
厳密には納骨堂であり本堂とは違うらしいが、それでもあまりのお寺感の無さにジェネレーションギャップが押し寄せてくる。

あぁ、東京はお寺をビルにしなければいけない程に土地がないのだ。田舎はコンビニの駐車場ですらあんなに広いのに…

「そこを少し言ったら神社もありますよ。」
友人がそっと声をかけてくれる。

まさか神社もビル化してるのかな、何だかとても寂しい。でも近代的な神社も見てみたい気もする。まさかね、もしかしたら、いやいや、、好奇心と不安が混じった変な気持ちで一歩ずつ進んでいく。

視界の端に何か映った。あれは⋯!!


画像2.三田春日神社


鳥居だー!!!
神社は私の知っている神社だった。睨む狛犬・揺れる紙垂、そして石の鳥居。全て私の想像通り!(賽銭箱の位置が謎だが、東京の人は時短が命なんだろう)

なんという安心感。そして安定感。
さながら都会のオアシスを見つけ出した気分だった。

と、その時はひとつのエピソード程度に捉えていた。
しかし、自宅に戻りその日の写真を見返しているとじわじわとギモンが浮かんでくる。

どうしてお寺は見た目が変わっているのに、神社(特に鳥居)はどこいっても同じ形なのだろうか?日本は広い、違う土地の人々とどのように連携をとったのだろう。
時代を遡ってもあの形なのだろうか?
そもそも、なぜ鳥居はあの形なのだろうか?

解決したいギモン

①鳥居にはどのような由来があるのか?
②鳥居はいつの時代もどこの土地でもあの形なのか?


調査方法


今回は以下の文献から該当箇所を探した。
・『カタチのひみつ図鑑』(STUDIO TAC CREATIVE/2023年)
・『鳥居大図鑑』(株式会社グラフィック社/2019)
・『神社と神様がよ〜くわかる本』(藤本頼生 著/株式会社秀和システム/2014)
・『鳥居』(谷田博幸 著/河出書房新社)
+α インターネット

結論

①鳥居にはどのような由来があるのか?
残念ながら、「鳥居」は起源・字義どちらにせよ今なお定説がないらしい。
「鳥居」という表記すら、「華衣」「雞栖」「桓」と全く違う漢字で書かれることもあり、鳥居はしょせん当て字で意味などないと考える研究者もいるほどだ。

とはいえ、分からないからと曖昧にしておくのは心地悪いので、中でも一般的とされる説を3つほど挙げておく。

・長鳴鳥説
『古事記』において天照大御神が天岩戸に籠った際に高天原の神々が大神の出現を願うため、長鳴鳥を横木にとまらせたという記述に基づくもの。(鳥居の形は鳥がとまっていた木がモチーフということになる)

・語感・語呂転化説
神社に参拝する際は必ず鳥居を通るため、「通り入る」が転化して「とりい」になったという説。(なぜ「鳥」「居」なのかは不明)

・古代インド説
古代インドでは塔門を「トーラナ」と呼んでおり音が近く、形も鳥居に似ていることから起源とする説。(写真を見た限り、たしかに似ていた)

ここまで調べて、なぜあのような形になったのか納得いくものがなかった。が、代わりに次のような「鳥居」の語源にまつわる大変興味深い説を知ることができた。




「神社の「鳥居」とは、仏教によって本名を奪われた後の呼び名である」


本来「鳥居」は一般に、止まり木に似た横木、つまり門全般を指す言葉であった。(これは平安時代の漢和辞典「和名類聚抄」にて、あえて文中の「雞栖」に注釈をつけて何の雞栖なのか説明されてることから推測している。)

では、現代の「鳥居」は何と言われていたのか?これが「門」である。(現代とは意味が逆転していることがわかる。)

しばらくして、どちらも本質的には同じものを指すことから神社の「門」もよ「鳥居」で表現するようになった。
しかし、その際は神聖さを失わないよう「大門/神門 鳥居」と若干の付け加えがある。(「神護寺實録帳写」937年に記載あり)著者によるとそのころには「鳥居」と言えば神社の「大門鳥居」というイメージが定着していたようだ。

しかし、事件は起きた。仏教伝来による神仏習合である。
神社では仏教建築に影響を受け、社殿への入り口に寺院と見間違うような楼門の設置が進められていった。その楼門のなんと立派なことか。参詣・参籠の習俗が広まるにつれ「大門/神門 鳥居」より楼門のほうがよっぽど「大門/神門」らしいじゃないかと考えられるようになった。

最終的に神道は「大門/神門」を仏教由来の楼門に譲り、自らは本来ただの門の意であった「鳥居」を名乗らざるを得なくなったのである。


以上、ここまで①鳥居にはどのような由来があるのか?を調べてきた。結局のところなぜあの形なのか、答えを得ることはできなかった。しかし、「鳥居」の語源にまつわる興味深い説を知ることができたので結果オーライである。


さて、次のpart2ではついに②鳥居はいつの時代もどこの土地でもあの形なのか?という当初の私のギモンに迫っていく。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?