しあわせのねだん
先日、角田光代さんの「しあわせのねだん」という本を借りた。
今日、私が「しあわせのねだん」をつけるとしたら、
「ふかふかの毛布とふわふわのシーツ、1,000円」である。
朝起きて、カーテンと窓をガバっと開けるとすでに暖かい空気が広がっていた。
「毛布とシーツを洗濯したい!!」
しかし花粉情報をチェックすると案の定「非常に多い」で、赤い怒りマークまでもがついている。
うん、知ってた。。そうだよね。。春だもんね。。
そして思いを張りめぐらす。
選択肢1:花粉の中洗濯してベランダに干す
選択肢2:また今度にする
しかしここ最近諦めの悪い私は、「どうしたらできるか?」ということを常に考えている。
ほかの選択肢は・・?
そうだ!あるではないか!とっても近いところに!
コインランドリーが!!
大きな道路を渡ってすぐ、その距離なんと100mかそこらに、優秀で画期的なマシンが佇んでいる。
これだ。
コインランドリーは究極に忙しい人か、またはお金持ちが使うところという個人的な思い込みがあり、いつぶりに使うんだろうか、記憶がないほど使っていない。
洗剤は必要だったっけ、一応持っていこうか、
待ってる間、本でも読もうか、昨日あったことを残しておこうか、お隣にコーヒーを飲みに行こうか。
軽くシャワーを浴びて毛布とシーツを両手で抱え込み、向かいのコインランドリーへいそいそと歩く。
店内は洗剤と柔軟剤のふわっとしたいい香りと乾燥機の熱気が立ち込めていた。
慣れない顔つきでぐるっとマシンを見回す。
ほかのお客さんはみんな慣れた顔つきでカードを入れてボタンを押して、颯爽と出ていく。
いかにも初めてです、という手つきでコインを入れる。
ご丁寧に音声で案内までしてくれる。
グルグル、バシャバシャと回り始めたマシンを見つめているとなんだか不思議と心が落ち着いた。
電子パネルが赤い文字で”40”を示している。40分かぁ。。
昨日の夜にあった出来事を、忘れないように書き留めておくことにする。
赤い文字が残り”2”になったころ、段々とそわそわとワクワクが急上昇してきて、開ける瞬間を待ちきれずにいた。
あとのお客さんはまだかまだかと焦っている人や、怠そうに携帯をいじってる人のどちらかで、コインランドリー如きでこんなにワクワクしている人はおそらく私くらいだっただろう。
あったかくて、ふわふわで、いいにおいの毛布を想像するとたまらなく待ち遠しい。
忙しなくグルグルしていたマシンがゆるゆると速度を落とし、ご丁寧に終わったことを知らせてくれる。
いよいよだ。。!
周りにこのワクワク感を悟られないように平然とした態度でドアを開ける。
ふわ〜っとした熱気と柔軟剤のほのかな香り、カラダ中がしあわせである。
バスケットに取り込んで四角くコンパクトに畳み、両手でふかふかの毛布とふわふわのシーツを抱きしめた。
お店を出る私の足は誰よりも軽く、浮き足立っていた。
時刻は11時前。
お昼を食べてふかふかの毛布で昼寝までしたら、少し贅沢だろうか。