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言葉を選ぶということ

「奥さん」という言葉を書くのも発するのも、とても気が引ける。「家の奥にいる人」を指すのが語源らしい、という話を聞いてしまったせいだ(失礼ではない、とする話もあり正確なところはわからない)。

ご本人が目の前にいる場合は良い。初対面で自己紹介をしてもらえるので、それを覚えておいて、お名前でお呼びしている。

しかし、私は名前を覚えるのが苦手だ。聞いたらこっそりスマホのメモ帳にメモしている。メモできないときは心の中で連呼して染み込ませている。

ご本人が目の前にいない場合、例えば会社の同僚との話の中に配偶者の方が登場した場合だ。この場合は迷う。相手が目上の方の場合、割り切って「奥様」とお呼びすることもあるが心の中で気にしている。ある程度気安く話せる相手であれば「どうお呼びすればいい?」と潔く聞くようにしている。

こうなってくると、「旦那さん」、「ご主人」と呼んでいいのかも気になってくる。これも基本的には同じ戦法を取るようになった。

「奥さん」と言われて怒る人は少ないと思うし、気にしない人の方が多いと思う。それでも一度由来を知ってしまった以上、言葉に無意識ではいられなくなった。「あなたを一人の人間として尊重しています」という意思を言葉の選び方で示したいのだ。

こんなふうに気にするのは、相手からすれば余計なお世話なのかもしれない。シンプルに上から目線である。それでも、言葉に潜む小さな偏りや価値観を意識し続けること。それを手放さない自分でいたいと思うのだ。

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