成人式と振袖
秘書として働いていたころ、20歳になり成人式に参加するかどうかの話になった。
周りの友達はみんな参加すると言っている。
だが私は、仕事上なかなか休みが取れなかったことと連休は来客対応で忙しいため仕事を休むつもりはなかった。
振袖は買っても借りても高いというイメージがあったし、貧乏性の私には敷居の高いイベントだと考えていた。
しかし、ある仲の良い友達にこう言われた。
「一生に一度なんだから出たほうがいい」
私は衝撃を受けた。
「一生に一度」と「仕事をする」を天秤にかけて、迷うことなく仕事を選んだからだ。
しかしその友達の言葉に感銘を受けた私は、成人式に参加することを決意する。
社長に相談すると、休みのことはなんとかOKしてくれた。
残る問題は、振袖をどうするかだ。
スーツで参加する人もいるとは聞いているが、どうせなら振袖を着たいと思った。
そして調べていくうちに、着物問屋さんで購入するなら、借りるより安い値段で買えそうだった。(勝手なイメージです)
しかし仕事はかなりの薄給。
どうやってお金を貯めようか…
考えた私は、夜にアルバイトをすることを決めた。
まず考えたのは、キャバクラ。
これは面接の場で即落ちした。
当たり前だと思う。メイクにもファッションにも興味のない地味で普通の女が面接に来たからだ。
そして次に行ったのはガールズバー。
ここは面接には受かったが、働いてみると全然面白くなくかつ自分に合っていない世界だと感じたので3日で辞めることになった。
最後に行って、続けられたのが某牛丼チェーン店である。
秘書の仕事が年間30日ぐらいしか休みがなかったため、牛丼屋さんで働くのは普段の仕事が終わってからの夜〜朝の夜勤帯である。
働いてみると、朝までの勤務はかなり辛かった。なので夜中までのシフトも交えながら、コツコツお金を貯めていった。
シフトは沢山入れてもらえたため、10月頃から働いて、1月の成人式には十分に間に合うことができた。
着物問屋で振袖一色を買い、小物類はネットで安く買い、私は振袖を着て成人式に参加することができたのだ。
振袖は、古風なピンク色で可愛いと思って購入したが、ファッションというものを解っていなかった私は、自分に全く似合っていないものを選んでしまった。
おまけに秘書の仕事と牛丼屋さんでの夜勤続きで顔はパンパンにむくみ、また、成人式数日前の夜勤で、ずんどう鍋の火を付ける際、火の勢いを強くしすぎてしまってまつ毛をチリチリに焦がしてしまっていたため、個人的に振袖写真は撮ったものの、見返したくない仕上がりになっている。
そんなこんなあったが、一つの目標をがむしゃらに頑張り達成できたことが私はなんだか嬉しかった。
そして、メインの仕事が薄給には変わりはないため、牛丼屋での仕事は続けつつ、新たな目標を立てることにした。