退職
牛丼屋さんと秘書の仕事のWワークは、体力的に少しきつかったがどちらも楽しく働いていた。
ただ、社長のセクハラを除けば。
セクハラは入社前日におでこにキスをされてから、毎日のように色々あった。
肩から腰のあたりをマッサージと称して触ったり、歩く時や車での移動中は恋人つなぎをしてきたり、出張の際は同じ部屋に泊まらされて体中マッサージといって触られまくったり…
どれも嫌で嫌で仕方なかったが、20歳前後の私は「社長」にそれを嫌と言えることができなかった。
高校の時のアルバイト先の人との「約束」もあったし、どんなに嫌でも3年は辞めないでおこうと思った。
そして、やっと3年が経った4月。
4月〜5月は1年で一番忙しい時期だったため、この時期に辞めるのはさすがに可哀想かと思い、少し先にすることにした。
そして5月の終わり頃、社長に辞めたいという話をした。
もちろん社長は猛反対。
仕事終わりにちゃんと話がしたいとファミレスで何時間も説得されたり、仕事中にも合間をみては説得された。
私はそれに強く言い返すことができず、辞めたいという意思だけは伝え続けていた。
今思えば、社長の許しなんかいらないのだから、辞めると言って辞めれば良かったのだが、そんなことも知らなかったので仕方がない。
話し合いが並行線のまま2ヶ月続き、ついに精神的に参ってきてしまった私は、やっと労働基準局に相談に行く。
すると話は早かった。
内容を伝えると、相談員の人は憤った様子と心配そうな様子で、「何度も退職の意思を伝えているのだから、もうすぐに辞めてしまって大丈夫です。明日から行かなくても大丈夫です。」と教えてくれた。
私は翌日会社に行き、朝の開店準備をしてから、置き手紙を置いて会社を飛び出した。
家に帰り、連絡が来るのではと怯えていたが、社長からの連絡はなかった。
数日びくびくしていたが、何もなかった。心底ほっとした。
私の3年4ヶ月の戦いが、やっと終わったのである。
長かった。