もう一つの終わり
金髪ヤンキー彼氏からの心理的虐待や母との大喧嘩は毎晩続いていたが、薄暗いアパートからは引っ越すことになり、近くの団地に住むことになった。
この団地はどうやら母の名義で借りてるらしく、喧嘩になると彼氏に出ていけと偉そうに言っている。
ついこの間までは自分が言われていたので、言い返しているつもりなのか。
とにかく毎晩のように私たち子どもが怯えるような大喧嘩はやめてほしい。
その彼氏はいつも色々な事で…主に理不尽なことで怒っていたが、一度兄に直接手を出したことがある。
住んでいた5階の窓から、兄の胸ぐらをつかんで「ここから落としたろかぁ!!」と脅していた。
母は「あんた何してんのよ!!」と口で言うだけで何もしない。
ブチ切れた当時小学5年生の私は、彼氏の胸ぐらをつかみ返して、「離せやこらぁ!!」と言って兄と彼氏を引き離した。
兄は「俺が死んだらいいんやな…」と泣いていた。兄は当時中学1年生だった。
私は強い憤りを感じた。
そんなひどいことが日常的に起こる日々も、ある時終わりをつげる。
それは私が中学3年生の終わりの頃。
またいつもの大喧嘩の際、彼氏が「出てくからな!!」と言ったとき。
私たち子どもたちは、「いいよ…」と恐るおそる口にした。
それが終わりだった。
彼氏はどうやら私たち子どもにそう言われたことがショックだったようで、初めて意気消沈し、「わかった…出てくわ。」と言った。
私たちは本当かどうか分からずすぐには喜べなかったが、数日かけて彼氏は荷造りをはじめ、本当に出て行った。
やっと恐怖の日々が終わった。
その日は外がやけに明るく見えた。
私は幸せを噛み締めていた。