たこやきミュージアムをご機嫌に過ごしたくて【ヤマシタのおたより#39】
前回、とあるカジュアルビアレストラン(こんな名詞があるのかは知らないけど)での気づきをここに認めた。
このように、私は出かけると何かに気づいたり、つっこみたくなったりすることが多い。
この話なんかは、いいねが28件と、健闘した。
私にしては多くのリアクションをいただいた方だと思う。
そんな私だが、先日、たこやきミュージアムでもまた、「ああ、ちゃうねん!おっちゃん、ちゃうねん!」と言いたくなるできごとに遭遇した。
せっかくなので、共有しようと思う。
あれは、8月31日。
属に言う”夏休み最終日”に、私は友人とお台場にでかけた。
チームラボボーダレスという、体験型のミュージアムが今日で営業を終えるということで、遊び納めに行ったのだ。
ここでのエピソードはまた色々あるので別の機会に取っておくとして、私たちは、帰りに同じくお台場にあるたこ焼きミュージアムへと出かけた。
大阪のたこ焼きミュージアムへは何度も行ったが(ユニバの隣にあるのである)、お台場は初めてである。
こんな、フジテレビが鎮座しているような東京感マックスの土地に、たこ焼きミュージアム。
多少、緊張感も漂う。
しかしだ。
私も友人も、大阪出身。(何なら小学校が同じ)
ここで怯むわけには、いかない。
くくるとか会津屋とか、懐かしいたこ焼き店名に心を躍らせ、関西風を吹かせながら、たこ焼きミュージアムに意気揚々と到着した。
けっこうお腹が減っていたので、色々買って分け分けすることにした私たちは、「私は会津屋」「じゃあうちはくくる」というように、たこ焼き購入第一弾のために道を分かつことにした。
(ちなみに第三弾まで行った。なんぼほど食べるねん)
ちなみに、私は会津屋が大好きである。
あの上品かつ存在感のあるお出汁に、これこれ!と言いたくなる食べ心地のたこ焼き。
あれぞたこ焼き。ソースもマヨネーズも要らない。まさにたこ焼き。
ただ、今回「くくる」も久々に食べてふわとろ加減に感動したし、「やまちゃん」の天かすマヨネギは泣く子も黙ると思ったし、「芋蛸」の歯ごたえには驚きを隠せなかった。
東京のたこ焼きは、正直高いばっかりでそんなに好きじゃなかったけど、たこ焼きミュージアムのたこ焼きは、私の心をすっかり満たしてくれた。
そういえば、中野駅に私が唯一認めたと言ってもいいほど美味しくて価格もかわいいたこ焼き屋さんがある。
中野駅付近に勤めていたときは、よく通って店先で食べたのだけれど、今どうしているだろう。
コロナのあおりを受けていないといいけれど。
非常に心配である。まあ、いま思い出した程度なのだけれど。
今度行ってみよう。
…さっそく話がずれてしまった。
まあ、とにかく私はそのとき、たこ焼き店に並んでいた。
私が惹かれて、かつ友人も好きそうな味の食券と、なんとお台場のたこ焼きミュージアム限定だという「和歌山の梅を丸ごと使ったジンソーダ」の券を、購入。
スタイリッシュに背筋を伸ばし、順番を待っていた。
…スタイリッシュに決めていたのに、店員さんに「当店は初めてですか?」と関西のイントネーションで訊かれた瞬間、「いや、大阪の店舗にはよう行っとったんですけどねえ、東京では初めてなんです~」と、バリバリの大阪弁が出た。
※「店舗」のイントネーションは、「みかん」ではなく「りんご」である。
そんなに混んでいなかったが、やはり多少は待つ。
手際よくたこ焼きをひっくり返し、引っ越しさせていく店員さんを横目で眺めながら、ふと自分の前を確認すると、そこには男女のペアがいた。
女性が前で、男性が少し後ろ。
仮にたこ焼き子とたこ焼き男と名付けよう。(安易)
焼き子はおそらく、30代後半。明るい茶髪が印象的な、お姉さん。
焼き男は、40代くらいだろうか、少しクールな印象。
焼き子は既に、カウンターでたこ焼きを受け取っている。
トレーに視線を移すと、わお。
なかなかな量が乗っている。
そっか、カップル(?)で分けるんだな。
楽しそうやん、たこ焼きデート。
焼き子の対応をしていた店員さん(大阪によくいそうな、細身のおっちゃん)もそれを察してか、「お箸は何膳おつけしましょうっ?」と元気いっぱいに聞いている。さながら夏祭り。いいねいいね。
やっぱり店員さんは、元気いっぱいでなくっちゃ。
焼き子は当然のごとく「2膳で!」と回答。
そうだよね、二人で食べるんだもんね。
焼き子は、足取り軽く、席の方へと向かっていった。
そのタイミングで、例のおっちゃんな店員さんが、私に向かって「お姉さん、食券もらいましょっっ!」と元気よく声をかけてきた。
本当に元気だった。
「これでお願いしますっっっ!」
私も、元気よく食券を手渡した。
ああ、楽しみだなあ。
そう思いながらふと視線を店員さんから逸らすと、私の隣に、先ほどの焼き男がいた。
え、このカップル、まだ頼んでたんや。
めっちゃ食べるやん。
そう思いながら、私はとある違和感に気づいた。
…焼き男、ぜんぜん顔がわくわくしてない!!!!!!!!!!!!!
たこ焼きを待つ雰囲気じゃない。
なんか、怒ってる…?
あれ。あれれれ。
そう思っていると、なんだか嫌な予感がしてきた。
私は、恐る恐る焼き男の手元を見た。
…ある!!!!!!!!!!
握りしめられている!!!!!!!!!!
食券、ある!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
私は瞬時に、理解した。
焼き子と焼き男は、カップルじゃない!!!!!!!!!!!!!!!!!
赤の他人!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
別々~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!
隣には、めちゃくちゃ不機嫌な顔をしている男性。
たこ焼き男なんて、ふざけた仮名を付けている場合ではなかった。
自分の順番を抜かされてイラっとしている、一般男性(40代)だ。
私はとっさに、一般男性へ向かって「あ、すみません待たれてますよね、先どうぞ!」と伝え、順番を譲った。
努めて明るく、極めて陽気に。
たこ焼きミュージアム感を、満載にして。
ところが一般男性は、「いや、いいっすよ」と言い放った。
んもう、めちゃくちゃ不機嫌。
小さい声で、ぽそっと。不機嫌の極み。不機嫌が服を着ているのかと思った。
「私がご機嫌に譲ってるんやから、あんたもご機嫌に対応せんかい。」
そう言いたかったけど、ぐっとこらえて、店員さんに私は状況を伝えた。
「こちらの方、まだ食券持ってらして…すみません、私が先に出しちゃって。」
本当のことを言えば、私が謝る必要はない。
だって、店員さんは「お姉さん」と明らかに私に声をかけたのだから。
でも私はなにより、もめたくなかった。
この、たこ焼きミュージアムというご機嫌なネーミングの空間を、ご機嫌に過ごしたかった。
すると店員さんも察して「あ、申し訳ないです!すんません!お客さん(一般男性)、伺います!(私にペコリ)」と素晴らしい対応をしてくれた。
やはり大阪のおっちゃんは、こういうときに空気を汲むのがうまい。
うむうむ、これで平和は守られた。
…はずだったが、一般男性は
「いや、あなたが、僕を無視したんでしょ。もういいっすよ。先どうぞ」
とまたもや冷たく、言い放った。
今度は、さっきよりは少し大きめの声で。
不機嫌さ増し増しの、棘ありありで。
…修復、不可能。
そう判断した私は、「あらま、すみません、ではお言葉に甘えて。ありがとうございます~」と努めて明るく、極めて陽気に答えて、受け取り口へと近づいた。
その後すぐに出てきた、たこ焼き&「和歌山の梅を丸ごと使ったジンソーダ」はとてもおいしそうだった。
ペコリと会釈をして受け取り、席へと戻った。
その後は、このエピソードを友人に話しつつ、美味しくたこ焼きをいただいた。
だが…私はこういうとき、いつも悩む。
あの一般男性と店員さんの仲裁に入るべきだったか…?と。
なんてことない、もしくはどちらかが明らかに悪い場合は、そんなこと考えない。スルーでいい。
でも、今回の場合。
一般男性は、誤解をしている。
店員さんが、自分を無視した、あるいは自分に気づかなかった、と。
きっと気分が悪いだろう。
そんな気分で頬張るたこ焼きは、おいしさが半減してしまう。
だいたい、あの一般男性は、恐らく一人でたこ焼きミュージアムに来ている。
不愛想だけれど、きっと、たこ焼きそのものをこよなく愛しているのだ。
なのに、こんな思いでたこ焼きを食べるなんて…かわいそうだ。
ただ、勘違いなのもまた、事実。
あのおっちゃん(店員さん)は、前のお姉さん、もとい焼き子とカップルだと思ったのだ。
二人で仲睦まじく並んで、受け取って、席に戻ると思ったのだ。
私だって、そう思っていた。
だって、あのお姉さん!
あんな量のたこ焼きを買って、「お箸は二膳★」って言ったんだもの!!!
誰だって、寄り添うように立っている男性とペアだと思うわ!!!!!!
そう。いま思い出したけど、二人の距離感は近かった。
あ、でも、それも、焼き男がたこ焼きを楽しみにしていた顕れなのかもしれない…
前に詰めすぎちゃうほど楽しみだったのかもしれない…
一般男性がひとりでたこ焼きミュージアムにやってきて、距離感がバグるくらい前のめりになっていたのか…ああ…なんということ…
あの場で私が「あ、さっきの方と一緒かと思っちゃいました」と言えば、きっと誤解はとけた。
だけど、それはそれで、別のベクトルで嫌な思いをさせる気もする…
この件は、けっきょく、なんにも解決策が浮かばないまま終わった。
ただ、気づいたことがある。
自分が「なんやねん」と思った店員さんの行動も、もしかしたら何か予想外の勘違いをした結果なのかもしれない…と。
学びをありがとう、一般男性と焼き子とおっちゃん。
ただ!それにしても!!お姉さん(焼き子)!!!
紛らわしかったぞ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!
(でも彼女は何にも悪くない)
こうしてまた、小さな気づきを得た私。
あの店員さんが、今日も元気にたこ焼きを回していますように。
あの一般男性が、またたこ焼きミュージアムに訪れてくれますように。
そんな願いを込めて、本日の【ヤマシタのおたより】を、締めることにします。
完
※たこ焼きホントに美味しかった!また行きたい!