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やく たたず
私は道具 あなたの道具
私はツナギ あなたのためのツナギ
ある目的の手段として 私は居る
上手く喋れない
馴染めない
生殖できない
美しくない
頭がよくない
そんな私を ここに居(お)れと言う
別れたくないと言う
朝4時に起き
5枚のタオルを替え
洗濯物を回し
晩の食器を片づけ
米をとぎ
1階のフローリング全部をホウキで掃き
鍵を開けて雪の積もり具合を見て
鍵を1つだけ かけ直し
飼い猫に愛想をかけながら
ビタミン野菜ジュースを飲みながら
顔を洗い化粧をし
SNSを少しチェックし
テレビも新聞も見ないで
昔の事を思い出したりし
髪の形を2度 整え
手ぬぐいを被りエプロンをし
鏡を幾度も手にとり
これでいいのかと化粧と身なりを見て
いつの間にか あなたの起きる時間がきて
お風呂掃除と
ベッドの布団を整える作業がまだで
あなたの保温弁当を作りはじめて
少しの朝食おにぎり飲み物などを用意して
あなたが起きてから出るまでの
50分間にぎりぎり間に合って
いってらっしゃい気をつけてねと言い
いってきますありがとうね を
受けとめて
のこりのご飯をラップで包み
ご飯釜をお湯につけるのをやめて
くつ下をはき 急がないと
あなたが行ってしまうので上着は着ず
集めたごみの袋と連休中のごみ袋を持ち
長靴を履き
斜めに急スピードで降る雪にあおられ
その雪のにたじろぎ
あなたが車庫にまだいるのか確認し
先にメインストリートにある
ごみ捨て場まで行って
わりと長い カーブまでの直線道路を
見送りたくて急いでごみ捨て場まで
早足する途中で後ろから
軽自動車が来て私は道路脇によけて
その間に あなたは私を追い越し
ごみ捨て場のある角(かど)を曲がり
車は直線道路に入り
私がごみ捨て場にきたときは
もう見えなくて でも
最後のカーブのところであなたの車の
テールランプが見えて うれしくなって
ほっとしてごみ捨て場の扉を開けて
誰かの捨てた重たいごみ袋に
ずらしながら少し文句を言い
自分のごみ袋を納得できる場所に2つ置き
行くときより遅めの足どりで家に向かい
背中についたネジの勢いがゆるみ
だからといって再びネジを巻くこともなく
眠さを感じながら洗濯物を干し
朝洗った器具を拭いて戻し
ご飯釜も洗い猫のエサを思ったら
猫は彼女のベッドの夢の中で
私の朝食を食べる番みたいで
村上の六斎市に行きたいのを考え直し
晩ごはんのメインで迷うけど
広告を見たら特売品は外せなくて
スーパーのハシゴを考えたりして
だけどドラッグストアにも用事があって
ルートは行くときに決めるとして
あなたが書いたメモ書きは忘れられず
何度か横になり寝ようかと思っても
思いのほか気象はいいから
早く出かけたいけど
書きたいことができて 今
ノートを書いている
こんなことしかできない
私 あなたの やくたたず