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雪(文芸あさひ第八号から)
ああ
今年もまた
白い季節がやってきた
解き放たれた雪は
私の見ている目の前で
この地に降りつもる
そうっと密やかに
大胆に
降りつもる
わずか
数分の間
地面の色を変えてしまった
世界の色を変えてしまった
息が白いことさえ
忘れてしまって─
寒さの中
寒さの中
永遠に続くよに
やさしい雪が
やわらかい雪が
絶え間なく降りてくる
降りつもる
この
景色にひとり
傘をさしている
私は
雪に染まらない
少しの寂しさ
差し出した掌(てのひら)に落ちた
雪は
しばし消えずに
結晶をとらえられ
代わりに
かじかんだ手が
少し
痛かった
ああ
まだやみそうにない雪が
この地に降りつもる
まるで
永遠に続くように
離れた所から見れば
私も
きっと
雪に染まったように見えるのだろう