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【新連載記念】末次由紀スペシャルインタビュー(前編)|続編への想い、強くなることの外側。
こんにちは。
ちはやふる基金スタッフです。
12月、2つの新たな章が始まります。
ひとつは『ちはやふる』の続編『ちはやふる plus きみがため』。
「BE・LOVE」2024年1月号(2023年12月1日発売)から連載が開始されました。
待ちわびていた方も多いのではないでしょうか。
そして、もうひとつは「ちはやふる基金」。
みなさまのご支援・応援のおかげさまで、基金は12月17日(日)に設立4周年を迎えます。
2つの新たな節目を記念して、今回は特別企画。
漫画『ちはやふる』作者であり、基金の発起人でもある末次由紀先生に、スペシャルインタビューを実施しました!
自身も『ちはやふる』のファンである基金スタッフが突撃。
1時間たっぷりとお話を伺ってきました。
今回はその前編です。
末次先生の言葉を通して、新連載への想いや物語の展開、その背景に迫ります。
末次由紀スペシャルインタビュー|前編
新たな物語のはじまり
—「ちはやふる plus きみがため」(以後、続編)の連載開始、おめでとうございます!
末次:ありがとうございます。
—続編はどんなお話になるのですか?
末次:日本一強くなるという話は『ちはやふる』の時にやったので、今度はそうじゃない目線からの作品を作りたいと思いました。
日本一になれない人の方が多いので、強さのそばの違う強さの話を描きたいと。
日本一になれなくても、競技かるたを大好きになってずっと携わっている人の多さを感じる時に、その場が豊かになる方向の関わり方もあるんじゃないかなと思ったんです。
強くなれなかったらやめちゃうんじゃなくて、一緒に頑張れる人たちといろんな角度でこの場を良くしていく…。
例えば、後から始めた幼い子たちを助けたり、もっと強くなりたいと言っている人たちのサポートをしたり。
登場人物のかるた実力アップのほか、そういうところにも人生の楽しさを見出す話になりそうです。
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強くなることだけが全てではない
末次:続編の中で、小学生の子と高校一年生の子がいるんですけど、いろんな年代で初心者に対する教え方も難しいじゃないですか。
—小学生も出てくるんですね!
末次:はい、主人公の凛月くんの妹です。
内容はまだ触れませんが、いろんな年齢の人がいるというのは良い部分も難しい部分もあります。
小学生くらいの小さい子にも、高校生の初心者にも、経験者は自分はもっと強くなりたいから教えきれない。
「まだ覚えていないレベルのやつと試合なんてできない!」と、彼らを突き放してしまう自分のキャパの小ささというのも身近な葛藤を生むと思ってます。
どんなに競技かるたが好きでも、初めてかるたをやる子がそばにいた時ちゃんと対応しないと、「難しいしもうやだ」って離れちゃうじゃないですか。
普通の25枚対25枚で試合をするところじゃない小さなステップを、ちゃんと作品の中で見せていきたい。
ハイレベルではない部分の『ちはやふる』も描きたいなと思っています。
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「教えなきゃ」と「強くなりたい」のジレンマ
—ただ強くなるのではなく、楽しんでほしいという気持ち…凛月の中でも葛藤がありそうですね。
末次:両方叶えたいけど、そんな器用なことは高一男子にはできないというジレンマみたいなものがドラマになると思います。
—高校の時に部活をやっていた身として、彼の気持ちがよくわかります(笑)
末次:余裕がないとイライラしちゃうばっかりですよね。
でも教えないと次の代が続かない・・・競技かるたは一人ではできないんです。
しかも団体戦で勝ちたいのなら、自分が強いだけじゃ済みません。
周りの仲間もみんな、実力アップしてほしい。
その点は続編で言えば凛月の気持ちがグルングルン動くんだろうなと思っていて、描きがいがありそうです。
千早は出てくるの?
—新しいキャラクターも多そうですね。
末次:はい。同期は4人いるんですけれど、4人ともすごく面白い子になりました。
キャラが立ってるというか、描いていて楽しい子たちが4人揃いました。凛月以外も勝手に動き出すので、「ちょっとまってちょっとまって」と急いでネームの時紙に描き留めている感じです。
—凛月たちは千早と過ごした時間はないですよね。
末次:そうですね。「クイーンになったすごい先輩がいたらしいけどよくわかんない」という状態。
千早のことはよく知らないままです。
部にしっかりとした指導者がいるわけじゃないのに全国優勝した先輩がいるということは、「自分でできることをやろう」という方向で凛月を励ますと思います。
読者の方も、千早のことは覚えていてほしいけれど、凛月たちも新たに応援したいなと思ってほしいですね。
—いちファンとしては、続編中にも千早が出てきてほしいな、なんて思います(笑)
末次:もちろん、詩暢ちゃんとか新とか太一とかもいる世界なので、「気配を感じる」ということはたくさん出てくると思います。大事なところでしっかり登場させたいという思いもあります。
詩暢のことはYouTube「しのぶちゃんねる」で知っていたりするので、詩暢の努力が広がっていっているな〜と私も思います。
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みんな漫画のキャラクターみたい!
—キャラクターを作るために、たくさん取材をされたのではないでしょうか?
末次:高校選手権の取材にも行かせてもらいました。
これまでは優勝に手がかかるような強豪校を中心的にお話を伺っていたんですけれど、今年は1回戦で惜しくも負けてしまった高校にもたくさんお話を伺うことができました。
予選からトーナメント戦なので、負けたら終わりです。
負けたらここで去らなければならないという悔しさが目の前で展開されていて。
「その悔しさを私はすくい取るのだ!」と思って、たくさんお話を伺いました。
いろんな高校のOBOGのみなさんも応援に来ていて
「去年まで高校生でここにいたんです」
「私たちの代より強い子がここにいるんで応援してるんです!」
という話をたくさんお聞きすることができました。
全部書けませんが、カメラがなかなか向かわない子たちのこともしっかり教えてもらいたいなと思って、メモをしたたくさんの事柄があります。
「一番変わった子は誰?」と聞いたら、たくさん出てくるんですよ(笑)
ゴミがあったらすぐ払うとか(笑)決まり字でしか返事をしないとか。
—へー!(爆笑)
末次:「ゴミを払い手で払っちゃうのは5人くらいいるよね!」とかお話ししてくれて。
みんなすごい漫画っぽくて、描いたら楽しそうな子たちの話をたくさん伺うことができました。
濃くて短い夏の物語を
—続編も長編になるのでしょうか。
末次:実は続編は6月から高校選手権までの話をまず想定しています。
その1〜2ヶ月の話をちゃんと頑張ろうと思ってるので、5巻くらい…?
—短いですね…!
末次:私が5巻くらいと言ったら多分8巻くらいになるんですけれど(笑)、気持ち的にはそのぐらいです。
今回は濃い夏を描きたいと思っています。
漫画は10巻くらいで終わるのが親切だろうという気持ちがずっとあるので。
—短い中で前作では描ききれなかったところを描く感じでしょうか?
末次:サポートする人たちのことをちゃんと描きたいですね。
—その心は…?
末次:瑞沢高校の子は恵まれていたと思います。
千早も他の部員も基本的に親に部活動を応援してもらえるし、金銭的に厳しいとか、自分じゃどうしようもない苦境にあるわけではありませんでした。どちらかというと応援してもらえて幸せな高校生活だったと思うのです。
色々あっても順風にクイーン戦までやり切らせてもらったという、すごくラッキーな子が主人公でした。
でも、みんながみんなそういうわけじゃない。
もっと大変なこと、例えばバイトをしないといけないとか、親が協力的じゃないとか、そんな状況にある子たちだっているわけです。
そういう応援されてない子のことを描きたいと思っています。
なんとか工夫をして、時には嘘をついて、全然協力してくれない親を説得して、なんとかここまで来ましたというような、違う生命力のある子、逆境の子を描きたいなと。
「かるた部でみんなと頑張ることくらい叶えさせてよ!」という思いです。
—環境のせいで部活を頑張れない子どもたち…競技かるた界に限りませんね。
末次:競技かるた界だけじゃなくて、親が応援できない、物理的にも金銭的にも親が協力しきれない若い子たちがかなりいるんだろうなと思います。
部活に一生懸命になれるのってほんと幸せなことなんですよね。
「バイトしてうちに金入れてくれないと困る」みたいな状況だってあるのです。
そういう子たちは漫画も読めないかもしれないんですけど、どうにか届けたい。漫画の中で似た境遇の子が奮闘する姿を描きたいです。
もっとお話を聞きたいところですが、前編はここまで。
続編では、前作では描ききれなかった側面を味わうことができそうです。
インタビュー後編では、作品の話に加えて、競技かるた界のお話、そして「ちはやふる基金」発起人としての想いを伺いました。
いつもご支援・応援いただいているみなさまに向けたメッセージもありますので、お楽しみに。
最後にお知らせです。
ちはやふる基金チャリティーカレンダー2024が絶賛販売中です!
イラストはすべて末次由紀描き下ろし。
ぜひ、お近くに置いていただけると嬉しいです。