【特別企画】選手インタビュー 井上菜穂編|第5回ちはやふる小倉山杯
はじめに
こんにちは。
ちはやふる基金スタッフです。
いよいよ目前に迫った「第5回ちはやふる小倉山杯」!
ちはやふる基金のnoteにて順次公開中の出場選手のインタビュー。
下記の公式サイトでは選手の詳しいプロフィールも見られますので、ぜひあわせてご覧ください。
さて、第4弾となる今回は、今年1月に開催された「第68期クイーン位決定戦」にて見事、新クイーンに輝いた井上菜穂クイーンです!
現在の井上クイーンのかるたをつくりあげてきた要素をたっぷりとお伺いしました!ぜひ最後までお楽しみください!
❶第68期クイーン位決定戦
「勝っても負けても頑張ればいい!」
―改めてクイーン戦おめでとうございます!
ありがとうございます。
―終わって今どのような心境ですか?
クイーン戦が始まる前は、日本一の景色ってどんな感じだろう…?と思っていたんですけど、何かがめっちゃ変わった!っていうわけではないので、実感が湧いてるわけではないですね。これから、この1年クイーンとしてかるたをやっていくっていうことの重みを感じています。
―歴史に残る試合でしたね。自分の中でも、いい取りできたな、あの試合すごかったなっていう感覚ありますか?
そうですね、結構ありますね(笑)
―名人・クイーン戦の場は特殊な空気感ですよね。そんな中、初出場でもすごくのびのび取っているように見えましたが、緊張はしていましたか?
昔から、タイトル戦の方が強くて。私は、絶対負けちゃいけないような相手と戦うときの方がプレッシャーを感じるタイプなので。
「勝っても負けても、頑張ればいい!」みたいな状況の方が楽なんですよね。
―粂原さんも同じようなことをおっしゃっていました。話は変わりますが、今は大学4年生?次、就職ですか?
大学院2年生で、次就職です。
―これから、かるたをする環境が変わっていくと思いますが、かるたとはこれまで通りにお付き合いをしていく予定ですか?
そうですね。一応、就職先にもかるたをやってる人がいて、職域大会(※)にも出ているので。なので、どういう風に時間作って練習したらいいかとかは、先輩に聞こうかなと思っています。
❷かるたとの出会いは?
無双の小学生から競技の中学生に
—かるた歴10年と伺っていますが、かるたを始めたきっかけは何でしたか?
もともと親が古文が好きで、百人一首は小1ぐらいで全部覚えてたんですね。小学校のかるた大会で、小1から小6まで結構無双してて。小学生は100首覚えてたら大体勝てるので、無双してたんですけど(笑)
中学に上がってもかるた大会があったんですけど、中1のときに、競技かるたをやってる先輩にボコボコにされて。決まり字を覚えてないと、話にならないから(笑)
それがものすごく悔しくて始めました。中1の冬に負けたので中2になって始めました。
―そうだったのですね!小学校1年生ぐらいで100首全部というのは、どんな風に覚えましたか?
マンガで覚えるみたいなのがあるんですけど、それをひたすら読んでいて。ゲーム的にすごい好きだったんですよね。だから、親が一緒にやってくれました。
―競技かるたの存在と出会ったのは中1の大会ですか?
そうですね。(それまでは)知らなかったですね。
―かるた部も学校にはなかったんですよね?
最初はなかったですね。でもちょうど「ちはやふる」も人気になってきた時期だったので、かるたを始めた人が増えたんですよね。
それで、その時にその先輩が部活を作ってくれました。
―そうだったんですか!では、最初は、かるた会ではなく、中2でできたかるた部に入られたんですか?
みんな地域のかるた会にそれぞれ入っていて、そのあとで私たちが部活を作った感じなので、みんな部活兼かるた会、という感じでした。
東京明静会から杉並かるた会へ
―最初に入ったかるた会はどちらですか?
最初は東京明静会に。
—恵令さんのところ!恵令さんに教わっていましたか?
そうですね。でも、初心者の頃だったので、恵令さんと試合をやったことはなかったです。
配置は恵令さんのをもとにして作ったので、結構似てる…7割くらい一緒なんですよね。
―そうなんですね!明静会にはいつまでいらっしゃったんですか?
高1ですね。最初に(明静会への入会を)決めたときは、通えるかなって思っていたんですけど、学校帰りに通うにはなかなか遠くて……。
それで、高1のときに一緒のクラスになった子たちがみんな杉並かるた会だったこともあり、申し訳ないんですけど通いやすさを考えて移籍をしました。
―中2で競技かるたの世界に入ってすぐに馴染めましたか?
100首覚えていたのもあったので、意外と馴染めました。
D級まではすぐ上がりましたね。
D級でも1回目の大会で3位入賞したんですけど、明静会は優勝しないと昇級できない会で……。
普通の会だと入賞だけでもD級からC級に上がれるんですよね。
実力を上げるためには優勝しないと上がれない制度はすごく大切だったんですが、中学生の私にはだいぶフラストレーションがありました(笑)。
―時間がかかってしまうことで焦る気持ちも生まれそうですね。
めっちゃ悔しくて(笑)そこで結構もがきましたね。
―今振り返ってみると、もがいたことは良かったですか?
もがいて良かったです。D級で、2回、3位を取ったんですよね。でも上がれなくて、それでかるたを1回辞めてしまったんですよ。半年ぐらいイヤになってしまって(笑)
もうやらないかなって本当は思っていたんですけど、高1になってかるたやってる子たちが「もう一回やろうよ」と誘ってくれたから復帰したんです。
杉並の同期の子たちが先に上がっていってたので、すごく原動力になりました。1回諦めてしまったけど、そこからの反動は大きかったですね。
―A級になったのはいつですか?
高2の9月ですね。
―どの大会か覚えてますか?
北國大会です。富山出身で、祖母の家から行けるとこだったので北國大会に行きました。
―それ以降、かるた人生的には、あまり挫折はないですか?
そうですね、大きな挫折は辞めたときが1番大きかったんじゃないかと思います。
だけど、自分の中でしんどかったのは、2022年度。就活をがんばっていて練習をあんまりしてなかったのもあるんですけど、2022年1回も大会入賞してなかったんです。
けど、2023年の1月末に就職が決まって、2月の横浜大会で久しぶりに準優勝して、その時はもうキレッキレだなと感じました。
―練習量は普段から多いですか?
あんまり練習量が多いタイプではないです。
ただ、調子が悪いなと思いつつ打開できないまま、就活で練習をぱったりやめてしまったことが良くなかったと思います。
良い状況で練習をやめるのと、悪い状況でやめるのとで全然違うんだなぁってことに気付いて、それから気を付けようって思いました(笑)
それまでは、調子が悪くなったときはメンタル面しかケアしていなかったんですが、今回は技術的な戻し方、例えば敵陣が取りにくい構えになっていたとか、音を聞くタイミングが変わっていたとか、そういう部分に気付けたと思うので、戻しやすくはなったかなと思います。
かるたの師匠
―今までのかるた歴の中で、師匠はいますか?
会をまたいでいるので、最初の時期は恵令さんが神!という感じでした。
初心者のときには、クイーン戦に出られる方のかるたはほど遠かったので、参考にするレベルではなかったんですけど。
特に覚えているのが、D級の試合で、多分10枚ぐらいで負けていたんですが、最後追いついて2枚差で勝った試合があって。
それを恵令さんが見ててくださっていて褒められたのを覚えています。すごく嬉しかったです。
杉並に移ってから…というかA級になってからは、鈴木(旧姓:森田)真央さんに大変お世話になりました。
2020年のクイーン戦の東日本予選、私が初めてA級決勝にいったときの相手が真央さんだったんです。
その時は、大先輩との決勝でとても緊張してしまって、全然歯が立ちませんでした。そのまま真央さんが東の代表になられました。
去年の各会対抗団体戦では、それぶりに当たって試合をさせていただいたんですが、そのときに初めて勝てたんです。
真央さんにも強かったって言っていただいて、本当に自信になりました。
❸今の練習環境・練習相手は?
理想的な切磋琢磨
―普段の練習相手は早稲田の中で誰と取ってるのが多いとかありますか?
全員後輩で、いろんな後輩と取るんですけど、決定戦前とかクイーン戦前とかは、並河辰樹くんとか林真尋ちゃんとか。A級優勝経験がある後輩が5人ぐらいいるんですけど、その子たちにお願いして練習をやってもらっていました。
—そうなんですね。早稲田大学かるた会のいいところはどこだと思いますか?
すごく良い子が多いんですよね。前向きだし、人の良かったことを自分のことのように喜べる子が多いので、誰かが勝ったってなったら、みんな一斉に喜んでくれるような場所です。
―すごくいい空気!
みんなで頑張ろう!みたいな空気がほんとにあるんです。
ちょっと前までは、早稲田に限らず切磋琢磨の種類が「負けたくないから頑張る!」が中心な感じで、それが普通だと思っていたんですが、こんな理想的な切磋琢磨が生まれるんだと思って、ビックリしています。
―端からみてても仲がいいんだろうなっていうのが伝わってきます。何か心がけてたこととかありますか?
私自身が勝負事に対して、「何としてでも勝つ!」「手段を選ばない!」みたいなタイプではないんですね。
「どんな手を使ってでも勝つ!」みたいな方が、勝ちに対しては正義みたいなイメージがずっとあったんですが、私はどうしてもそういう風には考えられないので。それでも、強くなれるように頑張ろうっていうのは心がけていました。
なので、自分より下の学年の子にもそういう感じの子があんまりいないイメージですね。
―小倉山杯のアンケートのときにも、「綺麗に札を払います」って書かれていて。山添さんや恵令さんもそういうタイプかなと思いますし、勝つことも大事だし、強いけど、やっぱり綺麗に取るっていうのを大事にしている選手がいてくれるっていうのがすごくいいことだなぁと思います。
そうですね。
「激しく揉める」みたいなのをして勝つのはあまり好きじゃないので、そういう選手にならないようにというのは気を付けています。
杉並かるた会の横矢会長が、わりと「揉め」に対して厳しい方で。
基本的には「揉めるな。揉めないで勝て」、というスタンスの方なのでそれが強いのかもしれません。
❹ポジティブスイッチは?
とことん1回考える!ネガティブになりきる!
—ポジティブになるためのスイッチ・きっかけは自分の中にありますか?
意外と、1回ネガティブになりきるっていうのをやったりします(笑)
―面白い!ちなみに、ネガティブになりがちですか?
そうですね…。忙しくしてるかどうかが、わりと大きくて。
最近はほんとに修士論文が忙しくて、ネガティブになっている暇があまりないです(笑)
でも、1回ネガティブになりそうだなぁってなったときに、それを止めちゃうとよくわからないまま残り続けるので、自分が何にネガティブになっているのかを、とことん1回考えますね。
何が怖くてネガティブになってるのかとか、不安なのかみたいなのを、わりとかるたの場じゃないところで家族に話したり、大学の友達がいるSNSに書いたりして、あまり影響がない場所で言ってます。
―言葉にすると見えてくるタイプですか?
何が理由で自分が弱気になるのかっていうのを、言葉にして、考えて、じゃあこういうふうに考えれば弱気じゃなくなるよね、みたいなのを決めておくと、もう1回弱気の波が来たときにすぐ「ちがうちがう」って思えます。
―論理的ですね!1回ネガティブになりきったら、対処方法が見つかりますか?
そうですね、大体。自分で見つけられないときは、親に聞いてもらうとかしています。
―かるたをやってる方って、切り替えがうまい人や、もともと前向きな人が多いって聞いていたんですが、小さい子とか、まだ切り替えがうまくいかない子たちもいて。
そういう子たちにも、強い選手でもそういう気持ちになることがあって、それに対処している、そのときはなりきるんだよっていうふうに伝えられますね。ありがとうございます。
❺小倉山杯、どんな戦いをしたい?
綺麗な払いを
—「第5回ちはやふる小倉山杯」に向けて、大会への意気込みやどんなかるたがしたいというのはありますか?
札を綺麗に払い飛ばすことは、今回も頑張りたいと思います。 みなさん綺麗なんですけど(笑)
―ほんとうに綺麗です。楽しみにしてます。
ありがとうございます。
❻誰と対戦したい?
体感したいかるた
—当たりたい選手っていますか?
当たりたい選手は恵令さんですね。
―恵令さんのかるたって、井上さんからみてどんなかるたですか?
かっこいいですね。女性らしいのに力強いっていうのが好きな部分です。
恵令さん、自陣の右上段の「あ」札とかすごく早いんですけど、あれは私も真似してて。
配置の影響もあると思うんですけど、結構、取ってる札とか場所とかが近いですね。自分の中でやりたいことが恵令さんのかるた、という感じなので、対戦して目の前で感じたいですね。
―お2人が当たったら、これはすごく楽しみな対戦になります!
当たったらものすごく頑張りたいです!
―楽しみにしています!お忙しい中お時間いただきありがとうございました!
おわりに
いかがでしたか?クイーン戦後のインタビューでも感じられたやわらかい雰囲気と、試合中の強さ・芯の強さを感じられたインタビューでした!
いろんな時期があっても、必ずプラスに転換している感じが伺えて、これからもすごく楽しみな選手だなぁ、井上クイーンの対戦や試合をもっと見たいなぁと思いました。
さて、次回のインタビューはどなたでしょうか…?
記事の更新は基金のSNS(X・Instagram・Facebook)でお知らせします。
お楽しみに。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?