短編小説 5月の空を泳ぐヤツ。
「今度のゴールデンウィーク、先輩はご家族とどこか行くんですか?」
昼休みも終わりに近づく頃。喫煙所で偶然居合わせた笹本は、挨拶もそこそこに、人懐こく切り出してきた。
「ちょっと遠出して、○○川沿いでも歩こうかって嫁と話してる。毎年、たくさん鯉のぼりを泳がせてるから、息子が喜ぶかなって」
「おお、いいですね。息子さんいくつになったんですか?」
「もう三歳だよ」
「じゃあ、まさに…だ」
「まさに?」
「三つ子の魂百までって言うじゃないですか。今が一番、一生の思い出になる確率が高い