Barbershopを聴きながら
僕は出先で音楽を聴くのが苦手で、つまるところ、移動中にイヤホンで耳を塞ぐということを一切しない。
まあ安全面での問題もあるわけだけど、街歩きをするときは周りの景色を見回しながら歩を進めることもあって、音楽は必然的に邪魔となってくるのだ。
けれども、たとえばこの原稿を書いているときなんかは、バックで何かしらの音楽を流している。
そのチョイスは、オタクらしくネットラジオだったりアニメ動画だったりアニソンだったりするのだけど、最近のトレンドはバーバーショップカルテット(Barbershop Quartet)だ。
バーバーショップというのは、主に男性4人が無伴奏で歌うアカペラの一形式だと思ってもらえたらいい。
パートは主旋律のリード、低音のベース、高音のテナー、それから中音域のバリトンの4人からなり、ハモネプみたいにボイパ的なものは用意されていない。
これが「バーバーショップ」=床屋、と呼ばれている理由について、ちょっとネットで調べたところでは諸説あるようで、禁酒例のもとで「BarがだめならBarberで歌おう」となったとか、そもそも床屋に簡単な楽器が用意されていて、即興で歌う場になっていたとかいう話が錯綜している。
日本でこの形式がどれだけ浸透しているのか、寡聞にしてよく知らない。
というのも、僕が目下ヘビロテしているグループは、軒並みアメリカで活動している人たちなのである。
このジャンルを聞くようになったきっかけの動画がこれ。
メリーポピンズの名曲「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス(Supercalifragilisticexpialidocious, スペル合ってる?)」である。
なぜオススメに上がってきたのか今に分からないが、かの名曲を実に軽快で愉快にアレンジしているのに衝撃を受けた。
このグループThe Newfangled Fourは大会でも結果を残しているチームのようで、4人それぞれのキャラクターが非常に立っているのが特色だと思う。
彼らの歌うアレンジはすべてジョークがふんだんに盛り込まれていて、だからこそ英語としては難しくて聞き取りにくいのだが、アメリカンジョークの定型みたいなものも垣間見えるのが面白い。
あと、やたらに審査員(Judges)をいじるのもアメリカンでいい感じ。
The Newfangled Fourの動画はどれも面白いのだけど、アカペラの完成度ということで言えば以下のIt Sucks to Be Meがピカイチだと思っている。
元はパペットミュージカル「アベニューQ」の曲で、ネットで見ると邦題は「自分にうんざり」とか「自分ってサイテー」とかつけられていた。
浅学なことに知らない曲だったので元のミュージカル映像を見ると、これが中々いい曲。いつか全編観てみたいなぁ。
これ以外のグループにも魅力的な動画はたくさんある。
例えば2019年のインターナショナル優勝者のSignature。
この動画で、出だしのリードにしびれた。
語弊を恐れずに言えば、リズム感と音感で黒人には適わないなぁと改めて思ってしまう。
もちろん実力派だから、どの動画を見てもカルテットとしての綺麗なまとまりが楽しめることは言うまでもない。
かっこいい、としか言いようがない。
僕は楽器は笛しかできないし、ソルフェージュもよくわからないから、こういうのを見ると音楽の勉強をもっとしておくんだったなぁと後悔ばかりが募る。
またオモシロよりに戻るけど、2017年のインターナショナルで優勝したMain StreetのPop Songs Medleyなんかも実に面白い。
20年前あたりのちょっと懐かしのヒットソングを詰め込んでいるらしく、ところどころ僕でも知っている曲が出てくる。
Main Streetの歌うこのメドレーのすごいところは、幾度となく公演されているにもかかわらず、毎回曲の編成とかネタが微妙に違っていて、しかもハズレがないという点だと思う。
それからこの、Evolution of Dance Medleyも好き。
こちらはダンスが印象的なヒットソング、といったところだろうか。日本で有名な曲も、英語で歌われると印象が変わってくることがわかる。
こういうメドレーモノで顕著だけど、自分の知らない曲で観客が盛り上がっていたりすると、それがアメリカの音楽好きには常識の、いわばアンセムだと気づくことができる。
別に知らないまま死んだって困りゃしないのだが、僕にとって、そういう音楽との出会いがあるという意味でバーバーショップは面白いのだ。
いろいろ挙げたので、興味のある人は耳の空いた時に是非聞いてみて欲しい。
ものによっては10分くらいの動画になっているから、僕などスルスル時間が溶けてしまう。我ながら、他に聞くものはないのかというくらい聞いているのだから呆れる。
次、平日の休みがあったらヒトカラに洒落こもうかと考えている、徹夜明けの土曜日である。
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