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かわいいの発見@原田治展

月にだいたい5か所くらい、週で言うと1か所くらいは美術館・博物館に行くようにしている

「ようにしている」なんていうとまるで義務感に駆られているような語り口だけど、そうではない。
目下しょうもない生き方をしているのだから、せめて芸術くらいは精一杯享受したいと思っているだけの話なのだ。

美術史とかナントカ理論とか、そういうムツカシイ話はさっぱりだが、ただ気になる特別展に行って、何となく「いいな」と思う。
それだけで乾いた日々が潤うような感覚を得られるのだから嬉しい趣味ではないか。


で、今週は世田谷文学館の「原田治展」に行ってきたのだけども、これがものすごくよかったので紹介しておきたい。

原田治、とだけ聞いてピンとくる人は、80’s的なかわいいもの好きの方だろうと思う。でも「オサムグッズ」と言われれば、かなりの人が絵柄をイメージできるのではないか。
そう、かつてミスタードーナツのオリジナルグッズで一世を風靡した、あのオサムグッズだ。

現代でもっと身近なキャラクターだと、カルビーのポテトチップスのキャラクターが挙げられる(商業キャラに珍しく、実は名前がない)。

そんな、ポップに彩られたイラストでおなじみのデザイナーのしごとを、「『かわいい』の発見」と題して振り返ったのが今回の企画展である。


原田は幼少期からアメリカに憧れを抱いていたらしく、またアメリカに長期滞在した際に触れた「プッシュピンスタジオ」の影響もあって、アメリカナイズされた絵柄を身に着けたようだ。

しごととして最初期のan・anの挿絵を見ると、今知られているものとは全く異なるタッチが使われている。
今回の展示をザっと流すだけでも、原田の知られざる絵柄の多様性(10種とも言われる)を俯瞰することができた。


絵とか原画以外に、オサムグッズもズラリと並べられている。

あとになって絵柄を貸し出してライセンス販売されたものもいいのだけど、やはり初期の、原田が自ら商品のプロデュースをやっていた頃のグッズは、パッケージから何からものすごい凝りようで、とりわけ魅力的に感じられた。


また個人的には、泉鏡花などの本を装丁したことで知られる小村雪岱との関連があるというのは興味深かった。
アメリカン一辺倒でなくて、日本的な美意識も取り入れていたのだなぁと。

年代順に辿っていくような展示ではないけれども、原田のしごとを一通り楽しむことのできる、満足感の高い展示だったと思う。


それから、ミュージアムショップにもかわいいが溢れていた。
どうやら新作グッズが大半を占めているようで、値札には「会場先行発売」と書いてあるものが多い。

悩みに悩んだ末、公式図録の他に2点購入。ハンプティと、中身ランダムのキーホルダー。どちらもかわいい。


また、これはいつまで在庫があるか不明だが、原田の旧蔵書を販売するコーナーが設けられていたのには驚いた。
こういうときは書き込みとか蔵書印のあるものが楽しいのだけど、見当たらなかったので原田の好きだったらしい久保万太郎関連の本を買っておく。


会期は9月23日まで。
僕の文章で魅力が伝わるとは到底思えないが、好きな方には心からオススメしたい企画展だ。なお、写真撮影は自由。



そういえば、僕が小学校のときに学校配布のカタログで購入したお習字セットも、オサムグッズであった。黒地に黄色の縁取りのバッグで、キャラクターが2人描かれていたと思う。

これは男子小学生に特有の感情ではないかと思うのだが、当時の僕はそういうかわいいモノを使うのに、何となく恥ずかしい気持ちがしていた。

今は、齢を重ねたからか分からないけど、多少キュートなアイテムを身辺に置くことはどうとも思わなくなり、むしろモノによっては好んで使っているくらいである。(周りからどう見られているかは知らない)

あのバッグは、まだとってあるのだろうか。

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