空をかけるひとすじの流れ星
劇場で『カリオストロの城』4K版を放映すると聞いて、即座に予約を取って観てきた。
テレビ放送で3回くらい見てはいたが、CMなしで画面に集中したのはもちろん初めてのことだった。やはり何度見ても面白い。
現在ではおそらく再現できないであろう手書き作画の枚数も圧巻だし、100分という尺の中で豊かな世界観を描き出し、それでいて無駄のないストーリーはさすがの一言に尽きる。
しかし、最後も最後の「ヤツはとんでもないものを盗んでいきました」のくだりで泣ける日が来るとは思わなかった。名場面集では必ず言及される、日本アニメ史で最も知られたシーンのひとつだというのに……。
それから、ルパンが塔へ侵入してクラリスのもとへたどり着き、「俺が君を助け出して見せる」と啖呵を切るシーンのセリフが、実に暖かく優しいのも印象的だった。あの絶妙な表情と山田康雄の名演が光っている。
その他、悲しかったりアツかったりで何度も泣けてしまったのは、映画館で観たからというよりも、名作の持つ力がそれだけ大きいという証左であろう。
今回の上映にはオマケの同時上映があった。第5シリーズ(2018)のDVD特典として作られたOVA「ルパンは今も燃えているか?」だ。
第5シリーズじたいは完走していたが、OVAは未見。ともかくもタイトルが明らかに第1シリーズ第1話「ルパンは燃えているか…?!」を踏襲しているわけで、モンキー・パンチ氏が総監督であることも相まって、間違いない作品であろうという確信を抱いていた。
で、実際に観てみると、果たして往年の(?)ルパンファンには嬉しい一作なのであった。
筋書きとしては、第1・第2シリーズで登場した印象深い敵キャラたちが勢ぞろいして再度ルパンに牙を剥くというもので、演出や展開がいちいち過去のエピソードを踏まえているのに、制作側のルパン愛を感じた。
反面、ライト層というか、映画とかテレビスペシャル版、また近年の第4-5シリーズあたりをちょっと観ただけの人だと100パー楽しみ切れない側面もあったと思う。少なくとも第1シリーズと第2シリーズは「履修済み」でないと、次から次に出てくる敵が誰なのか、いまいちわからないで話を追いかけることになってしまっただろう。
とはいえそこは「ルパン」なので、よしんば知らなかったとしても、話じたい冒険活劇として面白く作られている。逆に、これを入り口として過去のシリーズを観る向きが増えるのもよい動きだ。
とりわけ第2シリーズ(一番知られた赤ジャケットのルパン)はエピソードが155もあるので、全部おっかけるのは日々の喧騒に溺れる社会人にとっては至難の業だと思う。(ボーっと作業用に流すにはちょうど良いのだが)
人気の高いエピソードはいくつもあるけれども、数年前に公式がアンケートを取って上位24話を順番に放送した時のランキングを引用したい。
1位 さらば愛しきルパンよ(第2シリーズ第155話)
2位 死の翼アルバトロス(第2シリーズ第145話)
3位 十三代五ヱ門登場(第1シリーズ第5話)
4位 脱獄のチャンスは一度(第1シリーズ第4話)
5位 ルパンは燃えているか・・・・?!(第1シリーズ第1話)
6位 荒野に散ったコンバット・マグナム(第2シリーズ第99話)
7位 五右ェ門危機一髪(第2シリーズ第112話)
8位 ルパン三世颯爽登場(第2シリーズ第1話)
9位 五右ェ門無双(第3シリーズ第5話)
10位 友よ深く眠れ(第3シリーズ第24話)
11位 父っつあんのいない日(第2シリーズ第98話)
12位 ツタンカーメン三千年の呪い(第2シリーズ第7話)
13位 ターゲットは555M(第2シリーズ第148話)
14位 魔術師と呼ばれた男(第1シリーズ第2話)
15位 ルパンは二度死ぬ(第2シリーズ第32話)
16位 金塊はルパンを呼ぶ(第3シリーズ第1話)
17位 タイムマシンに気をつけろ!(第1シリーズ第13話)
18位 華麗なるチームプレイ作戦(第2シリーズ第137話)
19位 原潜イワノフの抹殺指令(第3シリーズ第50話)
20位 父っつあん大いに怒る(第3シリーズ第37話)
21位 とっつあんの惚れた女(ひと)(第2シリーズ第69話)
22位 バラとピストル(第2シリーズ第26話)
23位 ボクたちのパパは泥棒(第3シリーズ第44話)
24位 さらば愛しき魔女(第1シリーズ第3話)
(引用: https://mantan-web.jp/article/20171219dog00m200013000c.html)
個人的には納得感の強い選出である。
1位と2位はともに宮崎駿が脚本・演出をつとめているので、映像の力の入りようがすさまじい。アニメーションの出来は『カリオストロ』にも決して劣っていない。
ほかにも、その筋では「ゴエキキ」と略されるほどお馴染みの「五右ェ門危機一髪」とか、ハードボイルドの傑作「脱獄のチャンスは一度」とか、コンビネーションが楽しい「華麗なるチームプレイ作戦」とか、ルパンのさまざまな魅力が凝縮されているいいランキングだと思う。(選外となった、割と地味目で終始荒唐無稽なエピソードもそれはそれで面白いのだけども)
第3シリーズまではアマプラで配信されているので、気になる方はぜひご覧いただきたい。
今月から新たに第6シリーズが始まる。もちろん早く観たくて仕方がない。
小林清志さんが88歳にして役をお降りになったのは少し寂しいけれども、後任の大塚明夫さんもシブさにかけてはピカイチなので、新生・次元大介も楽しみにしている。
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