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アイスクリームフィーバーはどんな映画か

今の若い人たちは映画にたいして、
どんな原体験があるんでしょうか。
配信の世の中になって、
どこにいても小さな画面で
映画が見れる時代に、映画館の思い出ってどんなものがあるんでしょうか?
2倍速で映画を見るとか、最後から見るとか
心が苦しくなるエピソードをよく耳にします。

90年代僕が20代を過ごした時代には
街に映画館がたくさんありました。
今のようなシネコンはほとんどなく
「単館」と呼ばれる小さな映画館に並び、
パンフレットやポスターを買って帰る、
その帰りにレコード屋に寄ってみる
という流れが映画の原体験でした。

アイスクリームフィーバーを発想したときは、
「あの」時代の感覚の映画を作りたいという思いがありました。
超高性能なエンタテインメントを浴びるというより「映画体験」。
そんなことを具現化、言語化できないかなと。

今の映画ももちろん大好きなものもたくさんあるんですが、とてもよくできているものじゃないと見てもらえない。
出演者、ストーリー、全てがお客さんファーストというか、子供から大人まで、都会から田舎まで、ヒットを前提とした映画が良いとされている気がします。
邦画は、「大切な人が死ぬ」「社会的問題」「ホラー」「サイコパス」「殺人」と、最近はダークなものがとても多いです。
明るいのは、アイドルが出ている「学園恋愛もの」。

90年代は、
「意味がわからない」「おしゃれ」「スタイリッシュ」「感覚的」「おいてかれた」なんて言葉で
映画を見終わった時に、「面白かった===!」とか「感動した!」ではない、
感覚的に「なんかいいね」みたいな映画がたくさんあったように思うのです。

今回映画制作にあたり僕の会社「れもんらいふ」ではなく、
「I SCREAM FILM」という制作プロダクションを作りました。
アイスクリームではなく、「私は叫ぶ」です。
今の映画の傾向や、面白いってこういうことだ、とか、配信とか、製作委員会とか
パンフレットってこうだよねとか、宣伝のやり方とか、ポスターのデザインとか
その全てに「ちょっと待って」って叫びたいというか。
それが全ての映画なら僕はちょっと考え方変えたいなというか。
興行収入や今の時代を考えるとできないことたくさんあって
製作委員会があるから出資者に従う、なんてこともちょっと違う気がしていて。

アイスクリームフィーバーは、どんな映画ですか?
ってよく聞かれます。
ジャンルがないというか、、、
大きくくくると「ラブストーリー」なのかもしれません。
それぞれの気持ち、人を思う気持ち、自分の心にあるものが
繋がっていき、未来を形成していきます。

吉岡里帆+モトーラ世理奈+詩羽(水曜日のカンパネラ)のパート。
松本まりか+安達祐実+南琴奈のパートにわかれた
オムニバスのような映画です。
コーンの上にのっかったダブル(二つの話の)アイスクリームが
だんだん溶けて一つになっていくような話です。
人が死ぬシーン、号泣するシーン、がなくても成立するというか
もっと毎日の中で起きている小さな事ってドラマチックなんだよって
気づいてもらえるような映画にしたかったのです。

「あの夏の、たった一瞬の夕立のような
いつか忘れてしまう、小さなラブストーリー」

というキャッチコピーを予告に書いていますが、
映画という一瞬で流れて次の映画が始まって、消えていく記憶というか、
どんなに夢中になって好きになった人がいても、いつか忘れてしまう儚さ、
それでもその経験が心の中に小さく残っていて次の行動、その後の人生に影響していく。
そんな体験ができる映画になればいいなと思っています。

僕は90年代、「恋する惑星」や「黒い十人の女」「パルプフィクション」「あの頃ペニーレイン」「スワロウテイル」
など、単館と呼ばれる映画館に足を運んで観た映画が、少なからず今に影響しています。
その頃見た心に残っている映画は、なぜか感動したわけでもなく、めちゃくちゃ面白かった!というわけでもないです。でも、ずっと残って影響している。それはなんで??
なんて問いをずっと探しながら作った映画が「アイスクリームフィーバー」です。

公開しないと答えは出ない事なのかもしれません。
4年間ずっとこの映画と向き合って、何を作っているのかわからなくなってきます笑。
ヒットするのかしないのか、誰かの心に残るのか、何も感じないのか
あとは、観た人が育ててくれるものなのかなって思います。
でも、
毎日怖いです。
悪夢を見ます。
どうなるんだろう、みんな見てくれるか?など
ずっと心が締め付けられている感覚です。
デザインという仕事をしていると、こんなプレッシャーを感じた事なかったです。正直。
デザインは、あくまでも真ん中にある商品の「友達」という存在。
CDジャケットもアーティストが主役だし、広告も商品が主役、
先日佐藤可士和さんと対談したのですが、可士和さんが言っていたのは、
僕はあくまでも「友達」だと。
例えば、ユニクロの社長の柳井さんに好きな人ができた時に
「何を着ていくのか」「どこで食事するのか」など一緒に考えて背中を押す存在、って例えてました。
佐藤可士和展を国立新美術館でやった時に初めて、心が締め付けられる感覚を覚えたって言ってました。
こんなすごい人でもそんな感覚に心が押されるんだなと、「同じ気持ち!」って少しホッとしました。

公開まであと3ヶ月です。
作品は完成しています。

パンフレットや、グッズ、コラボ商品、イベント、ライブ、テレビ、雑誌、舞台あいさつなど
映画と連動した企画に取り組んでいます。
映画館でどう楽しんでもらえるか、毎日考えています。
単館の映画館で感じた「映画体験」は、作品だけではなく
映画館に行くこと自体の原体験にあると思います。
ゴダールの映画なんかは、観にきている人もおしゃれで
僕も、ギャルソンとか着て笑、気持ちを上げて映画館に向かった記憶がある。
そこで買う、パンフレットやポスターもデザインが素敵で、
インテリアとして部屋に貼ったりしていた。
映画を見るということだけではなく
アイスクリームフィーバーという体験を楽しんでもらえたらなと思ってます。

先日、
MAと言われる作業の中で、初めてこの映画を大画面と5.1chという音響で見ました。
それまで編集作業はずっとパソコンの中だったのですが、
びっくりするぐらい感動してしまった笑。
音が大きいとか、画面が大きいということはとても特別なことなんだなあと。
「映画館」という価値というか、配信の世の中の中で、あの箱の中で映画を見るための環境づくりは、
実は大事なことだったと気付かされました。
なんか、かなりグッときました笑。我ながら。

だから、映画館で観てほしい!って思いました。
興行とか、映画館に行こうキャンペーン!とかそういいうことではなくて
全然映画館で観た方がいい!って思いました。
ダイナミックな表現やCGをたくさん使った映画ではないですが
アイスクリームフィーバーは「音楽映画」でもあります。
田中知之さんのDJのサウンドとというか、音声と音楽をmixしたような編集になってるし、
吉澤嘉代子の主題歌、BGM、エンディングテーマに至るまでライブのように楽しめます。
これは5.1chという音響で観るのと、パソコンで観るのとでは全然違いました。

で、
結局どんな映画なの?
って思われるかもしれませんが笑
タランティーノのパルプフィクションに僕の中では近いです。
どこから始まってどこで終わるのか、
誰が主役で誰が脇役なのか
恋愛映画なのか、女の子の成長ものなのか
そんなことも見る人によって感じ方が違うのではないかと思っています。

100人いたら100人が同じ体験をする
体験を「与える」映画ではありません。
SNSの社会の中で「共感」が社会の定義であるなら
わかりやすい映画がヒットするのでしょうが、
観た人のきっかけ、あとはみんなの心に委ねるというか
そんな映画があってもいいのかなって思います。

先日、
クランクアップ以来、吉岡里帆さんに会う機会があり
「めちゃくちゃ面白かった!」って言ってもらえました。
編集がとても良かったから、撮影中にはわからない
面白さがたくさんあったと。

めちゃくちゃ嬉しかったです笑
思惑通りではなく、そういう感覚なんだなと。
一人一人反応が違うし、
こう感じてほしい!とかはあえて決めてません。
ここがいい!とか、ここが泣けるとか、ぞれぞれ100人いたら100人違う
そんな映画です。
偶発的な反応を楽しみたいと思っています。

予告も意味がわからないかもです笑。
https://youtu.be/amxyQIfyOm8
↑予告です!
「切なくも爽やかな余韻を残す」って書いてくれた人がいたけど、
ほんと、映画見終わった時にこう感じてくれたらそれこそが
この映画を作った「思惑」なのかもです。

ゴールデンウィーク明け
5月9日はアイスクリームの日です。
また一つ情報解禁があります。
6月にもびっくりな情報公開があるので、
ぜひ、アイスクリームフィーバー体験を
公開まで楽しんでもらえたらと思います。

観てほしい!

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