ひまわりの国
その国は太陽のかわりに、大きなひまわりが空に咲いているのでした。
空を覆わんばかりの大きなひまわりは
朝から昼にかけて明るくひらき、
夕方から夜にかけてはだんだんと閉じて光を落とし
一日の終わりを告げます。
ひまわりの国にはお城がひとつありました。
お城には広いお庭がありました。
その庭に毎朝一枚、
太陽のかわりのひまわりが空から花びらを落とします。
きらりふうわり
その花びらは両手でやっと持てるくらいの大きさで、
表面は天鵞絨のようにやわらかく、
けれど普通の花びらよりもしっかりとした厚みがあり、
キラキラと輝く特別な一枚。
ひまわりの国のお城には大臣がいて、
庭に落ちてくるそれを毎朝拾い、
大広間の壁に飾る仕事をしています。
その花びらを365枚、毎日拾い続け、
大広間の壁一面を覆ったら
わたしたちと同じ、一年の終わりです。
ひまわりの国にも四季があります。
太陽のかわりのひまわりは、
春は淡くやわらかいクリーム色に、
夏はめいっぱいまぶしいほどの黄色に咲き、
秋にはオレンジがかった花びらになり、
冬は乳白色がその黄色に混ざるのです。
ひまわりの国の人々は
毎日空を眺めては
瞳に大きなひまわりを映し出します。
あまりにいつものことなので
ひまわりの国の住人は
目の中にひまわりを育てているようなのです。
あなたの周りで
目の中の虹彩が花のような人がいたら、
その人はきっとひまわりの国の人です。
夏が来るとひまわりの国の門が開きます。
その門は夏のひざしが作り出す、
色濃い木陰で開きます。
大きな樹の木陰を見つけたら、
そこに夏の門があるかもしれません。
そこで足を一歩踏み出せば、
ひまわりの国。
見上げたら、
大きなひまわりが空に咲いていることでしょう。
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2020/07/28放送 chigusaの庭より
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