あらためましての、自己紹介。三昧琴奏者編①
考えてみたら、このnoteに自己紹介を書いていなかった、と気づきました。
三昧琴(ざんまいきん)という楽器を奏でています、福島千種と申します。
2012年の秋のある日、ある友人が「あなたが絶対気にいると思う楽器があるのよ!」と教えてくれたのが三昧琴(ざんまいきん)でした。
彼女が主催のイベントで展示販売するために預かったその楽器を、前日だけど見にこない?と誘われて彼女の家に行ったのが運のつき(笑)
そこには、お皿のような形の楽器らしきものがお行儀よく並んでいました。
チタンでできているという、初めて目にする楽器でした。
少しだけ、鳴らしてみていい?と添えられていたバチを手に取って、その楽器の縁にそっと触れてみた瞬間、ひろがったその響きにわたしは一瞬で魅了されてしまいました。
そこに、理屈や理由はありませんでした。
それまで聴いていたどんな楽器とも違う不思議な響きは、芯があるのに優しくて、深い海の底のようであり、高い空を眺めているようでもありました。
響きの世界が好きで、音叉をはじめとして、クリスタルボウル、波紋音、シンギングボウルなどいろいろな楽器と出会ってきたわたしでしたが、三昧琴はそのどれとも違う、なんとも言えない響きをたたえていました。
「私、この楽器、欲しい。買ってもいい?」
気が済むまで響かせたあとに私は友人に言いました。
「いいよ。どれにする?」
「え〜と、ここからここまで」
「えっ?」
それは、そこに並んでいた三昧琴のほとんどでした。たしか10枚だったと思います。
イベントの前日だったのに、翌日販売するはずだったものをほとんどわたしに買われてしまったものだから、彼女は慌てて作家さんに連絡し、追加で送ってもらったそうな。
でも、その連絡を聴いて作家さんも大変喜んでくださったとのことでめでたしめでたし。
三昧琴を生み出しているその作家さんとは、石川県小松市にある「あとりえ三昧亭」の主、河上知明さん。
河上さんご本人に直接お会いできたのはこの時点からまだ少し先のことになります。
河上さんが三昧琴を制作することになった物語がとても面白く、三昧琴はまさしくマジカルな楽器なんだな、と私はさらに惚れ込んでしまったのですが、それは長くなるのでまたいつかご紹介したいと思います。
とにかくも、三昧琴に一瞬で惚れてしまい、「この楽器たちと一緒にいたい」という想いだけで(値段も聞かずに)お迎えしてしまったわたしでした。
さて、一目惚れして連れ帰ったその三昧琴たちを、サロンや自宅のテーブルに並べては気ままに鳴らしていました。
三昧琴には楽譜がありません。こう演奏しなければいけない、というメソッドもありません。
何もない、自由すぎる楽器なのです。
わたしはもともと、ゴールを決めてそこに向かってガシガシと歩を進めていくという目標達成型の人間だと自分のことを捉えていたし、そんな風に歩いてきた人生だったのですが、そこに突然飛び込んできた三昧琴は、そんな世界とは真逆の存在でした。
だって三昧琴にはそもそもゴールがありません。何が正解なのかも誰も示してくれません。
奏法を誰に教わるわけでもないので、自分の耳だけが頼りで、自分が美しいと感じる響きを探していくしかないのです。
いえ、探す、という行動もちょっと違うかもしれない。
心を静かに、何も考えずに響かせていると、ときどき、自分でもハッとしてしまうような、なんとも言えない不思議な響きに出逢うのです。
自分がいない瞬間、その響きは降り注いでいるように思います。
2012年の秋の晩に、私と三昧琴の旅は始まりました。その後、旅はこの頃の私自身が想像もできない驚くような展開を見せるのですが、それはまた書きたいと思います。