【楽曲レポート】魔女狩りの嵐が吹き荒れる!吹奏楽伴奏によるミュージカル。B・アッペルモント/サタンの種(ZAAD van SATAN)
自分が吹奏楽の世界が好きな理由の一つに、多くの作曲家が生きていることが挙げられる。
生きていれば次々と作品が生み出され「◯年◯月××の交響曲第◯番が初演!」といったニュースをリアルタイムで感じることができる。
毎年、誰かの作品がどこかで初演されCDとなって発売されたり、作曲家と演奏者の距離が近いのがこの世界の魅力だなと感じています。
新しく生み出される作品に触れている中で知ったのは、キャッチーなメロディとドラマティックな音楽が魅力の作曲家ベルト・アッペルモント。(1973-/ベルギー)
ベルト・アッペルモント(1973-/ベルギー)ベルギー・リンブルフ州ビルゼン(英語版)出身。ルーヴェンのレメンス音楽院に入学し、ヤン・ヴァン=デル=ローストらに師事して作曲、指揮などを学ぶ。1998年に同校を卒業、作曲家として活動を始める。近年は、日本の吹奏楽団体においても作品が演奏される機会が増えてきており、若手作曲家として注目されている。ロベルト・フィン(Robert Finn)の筆名でもいくつかの作品を発表していた。引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/ベルト・アッペルモント
アッペルモントが日本ではじめて紹介されたのが2000年代前半。
吹奏楽作品『ノアの箱船』で名前が知られるようになり、2003年には古代メソポタミアの文学作品でもあるギルガメシュ叙事詩を基に書かれた交響曲第1番『ギルガメシュ』を作曲。
作品はたちまち話題作となり、日本テレビの「笑ってコラえて!吹奏楽の旅」でも取り上げられました。
キャッチーなメロディとドラマティックな展開が聴き手の心をつかむアッペルモントの作品は、吹奏楽による編成の作品が多く、今日においても日本の吹奏楽界においても頻繁に演奏されています。
吹奏楽伴奏によるミュージカル『サタンの種』が誕生
日本でアッペルモントの名が知られるようになった頃と同じ時期、アッペルモントが音楽を担当したミュージカルが話題となりました。
魔女狩りの嵐が吹き荒れる中世ヨーロッパを舞台に物語が展開される「サタンの種」と題したこのミュージカルは、吹奏楽伴奏をバックに演じられ、日本では東芝府中吹奏楽団が創団65周年記念第40回定期演奏会で国内初演をしています。
〜あらすじ〜
物語の舞台は中世ヨーロッパ。ある小さな村に住む美しい婦人エリザベスは、村で薬を調合してはその薬で村人達の病気や怪我を治しては人々に感謝をされるという日々を送り、夫はエリザベスのために薬学の本を買い旅に出てており、家を留守にしていました。
しかし、時は各地で魔女と疑惑をかけられた女性が迫害される、魔女狩りの嵐が吹き荒れていた時代。
村でも、エリザベスは不思議な力を持つ魔女なのではないかと疑うものが現れはじめ、近年村で起こった出来事も全て魔女であるエリザベスが原因なのではないか、そして彼女が妊娠している子は悪魔の子(サタン)ではないかという噂が流れます。
ー魔女を捕まえ殺害しろー
魔女の疑惑をかけられたエリザベスは、果たしてどうなってしまうのでしょうか…?
ヨーロッパでは宗教的な理由で恐れられ、嫌われる悪魔“サタン”の子をめぐる騒動を描いた物語。
これがミュージカル『サタンの種』です。
『サタンの種』の楽曲で書き上げた2つの作品
アッペルモントは「サタンの種」の楽曲を通して2つの吹奏楽作品を書き上げました。
『サガ・キャンディダ(純粋な物語)〜魔女狩りの7つの印象〜』
絵本の世界に出てくるような村の情景が浮かぶ序奏にはじまり「神よ、我を憐れみたまえと」歌われた後は魔女狩りの告発シーンへ。
原作では男女のデュエットで歌い上げられる愛のテーマなども顔を出し、サタンの種の物語を彷彿させる作品です。
『サガ・マリーニャ(邪悪な物語)』
前作のサガ・キャンディダに比べるとシリアスで暗い雰囲気の音楽。
これから始まる不吉な物語りを予感させる冒頭や、誰かを皮肉ったようなテーマ(村の愚か者)など「邪悪な物語」といった意味を含むようなイメージで音楽が展開されますが、情報量が少なく詳細は不明です。
曲が始まり2:00を過ぎたあたりに聴こえてくる「シャン…」って音が、これから始まる不吉な物語りを予感させるようで大好きです。
『サタンの種』シリーズまとめ
これまでの流れをまとめると、アッペルモントが音楽を担当した吹奏楽伴奏によるミュージカル「サタンの種」が上演される。
その後「サタンの種」の音楽を再編した作品として『サガ・キャンディダ(純粋な物語)〜魔女狩りの7つの印象〜』次に『サガ・マリーニャ(邪悪な物語)』と2つの吹奏楽作品が誕生するという感じです。
この2曲は吹奏楽の演奏会でも取り上げられる作品です。
『サタンの種』はサウンドトラックが発売されているので、興味のある方はぜひ聴いてみてください!