鋭い観察眼と好きと教養の深さに圧倒
「主に泣いてます/東村アキコ」
十数年前に本屋さんで出会い3巻まで読んだがその後離れてしまった。
昨年拝読したはるな檸檬さんの「れもん、読むもん!」にて東村先生に再会したこと、再会した際「そう言えばドラマも(途中までは)観ていたなあ」と回想したこと、図書館通いお休み期間がきっかけで拝読に至る(にしても何もかもが中途半端であると振り返る)
ジェットコースター並みのリズムには初読時同様の衝撃を受ける。
ただその時と違うのは、泉さんを始め、ゆっこ、仁先生、よし子ちゃんを始めとする泉さんに嫉妬する女性たちの自信の無さ、コンプレックスの強さ、自己承認不安を垣間見たことである。
初読時はまだまだ幼稚で軽薄だったのでゆっこ、仁先生、泉さんに嫉妬する女性たちに「なんだこの嫌な奴らは」と憤っていた。今読むと当時の己の傲慢と善良に鼻白み、己にもこの部分があることを省察し恥ずかしくなると同時に彼女彼等がとても人間らしく見えてとても可笑しいのだ。
東村先生のあとがき漫画も通して誰しも認めてもらいたい、自分より優っている人への妬み劣等感を持っている。勿論これは己自身にも言える。
それを不幸ぶりっ子で過ごすか、置かれた環境に呑まれず自らが自らを不幸ぶりっ子としていることに気付いて世界を切り拓き佳き方向に向かうか。自分を救い自分を変えられるのは自分だけなのだと気付ける時期はいつか。もしかしたら一生気付かず終えるかもしれない(己自身も被害者意識が強く不幸ぶりっ子な部分があるので身に応える)
「未来を切り拓き変えられるのは貴方次第だ」
東村アキコ先生はそう仰っているのではないだろうか。
泉さんはよし子ちゃんの一言で目を覚まし、向島エンジェルズたちに甘えていたことを省みて被害者意識から脱して見事前に進んだ。
その姿を見て「また明日から頑張ろう」と思ったのだ。
そして、東村アキコ先生の好きと教養の深さを強く感じたのである。
ドラマ、映画、歌劇、漫画、アニメ、美術、歴史、小説、随筆、新書、バラエティなどなど。東村アキコ先生の多趣味なことよ。
わかるものもあって抱腹絶倒なこともあれば「元ネタはなんだ?」と興味を持つものもある。
こんなにも好きを詰め込んだ作品に出会えることはなかなかない。再会したことに感謝である。