瀟洒に着実に力強く進む4人の物語
10年近く前、とあるバンドに出会う。
go!go!vanillas
言わずと知れた多くの人々の支持を得る実力のあるバンドである。
メンバーは全員平成初期生まれ。知った当初平成初期生まれのバンドが出始めたことに驚愕し時代の変容を感じたことを記憶している。
直喩、時には隠喩な歌詞は日本語の特徴を表しており、直球勝負を思わすような曲調、揺れに身を委ねるような曲調の時もあれば静寂に包まれているような心持になる曲調もある。
曲の表現の幅、紡がれる歌詞の広さは無限大である。
まるで「マジック」にかかったように錯覚する。
派手さ、煌びやかさ、絢爛さはない。一方で一歩一歩確実に踏み締めて目指している方向へ進んでいる。その姿は実直で瀟洒だ。
不躾ではあるが、同期バンドが多くのメディアに登場し武道館、アリーナ級の会場をこなしていく中、バニラズはライブハウスとフェスを中心に数をこなして地道に集客力とパフォーマンスに磨きをかけていた。
その中には波乱と紆余曲折が付き纏っていた。メジャーデビューから半年の頃にメンバーとの別れと新たな出会い、それぞれの路を歩む互いに発破をかけながら進んでいること。いよいよ武道館だろうという頃に交通事故による災難が降りかかったなか艱難辛苦を飲み込み踏ん張ったこと。
多くのアーティスト、ミュージシャン、芸人、役者の方々に打撃を与えたあのパンデミックを見事機会と捉えて様々な試みを行い、アリーナライブへ到達したこと。
そしてこの夏は独立して自主レーベルを立ち上げた。多くの積み重ねを活かして自分たちを画一していく路を選んだということだろう。
ここに述べたことはほんの一部でまだまだあるし公表されていないこともあるだろう。
ただそれに対して腐らずに着実に、前向きも後ろ向きも飲み込んで進んでいる。
その4人の姿に胸が熱くなるのだ。
今年2024年の11月5日に彼等はメジャー10周年を迎えた。
翌日にリリースされた「Lab」と両国国技館でのフリーライブという試みはその10年の軌跡が集成されているように見える。
両国国技館で最後に流れた「Lab」は作り上げていくこれからを見せにいくといった心意気を感じて胸が熱くなった。
個人的なことで申し訳ないが、数十年前とあるバンドに出会い初めて「好き」を知った。そのバンドとはORANGE RANGEである。彼等は当時の多くの10代に大きく影響を与えた。その時10代だったバニラズがレンジを見てを時代を駆け抜けたように、「好き」を知り体感して数十年の時を駆け抜けた人々がいる。
10年前10代だった方々がバニラズを見て影響を時代を駆け抜けたように、「好き」を知り体感して10年の時を駆け抜けた人々がいる。
かつて夢を志した若手が今は志しある若人のきっかけ、日々を過ごす糧となっている。
身勝手であるがその瞬間に立ち会えていることがとても嬉しい。
「Lab」を引っ提げたツアーが間も無く始まる。
10年を駆け抜けたバニラズが次の10年、その次の10年を駆け抜けていく物語を目の当たりにしたい。