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琥珀色のパラフィン紙で幾重にもくるまれた星を買った。 不愛想な店主に軽く挨拶をして店を出た。インバネスに湿った空気がまとわりつき、空を見上げると、月が雲に隠れ、星も疎らにしか見えない。不意に肩を叩かれて振り向けば、店主が無言で黒い蝙蝠傘を差し出した。 夜半にさしかかった町は静かで、たまに車が通り過ぎるだけだった。私は周りに人のいないことを確認し、今しがた買った星を取り出した。 包まれている星はランダムで、開けてみるまでわからない。 何度か購入しているが、めあての赤い星
その少女は、西側の昇降口から入ってすぐの階段を上った、三階にある美術室にいる。 肌は透き通るように白く滑らかで、栗色のまっすぐな髪は肩より少し長い。一直線に切り揃えられた前髪の下にある硝子の瞳は青みがかかった深い灰色で、レースのようにしなやかな、長い睫に縁取られていた。 僅かに開いた唇は小さく、赤いバラの花びらを思わせる。生徒たちから時代遅れだと評判の悪い制服も、彼女にはとてもよく似合っていた。 僕はそっと彼女の隣に座り、窓から見える夕陽を眺めた。 うっす
いつの間にか鼻まで下がっていた眼鏡を外すと、午後の三時を回っていることに気がついた。まだ昼も食べていない、と思った瞬間に喉が渇く。朝からディスプレイを睨んだままで、テキストが眼鏡のレンズに貼りついてしまったんじゃないかと思ったが、もちろんそんなことはなかった。 もう昼はいい。とりあえず珈琲を淹れよう。 珈琲を淹れる動機はそれが飲みたいからではなく、豆を挽きたいからだ。戸棚からミルを取り出し、銅のスプーンで豆を掬う。ハンドルを回してがりがりと豆を挽いているときに漂う珈琲の香