「第十帖・賢木」2021/11/24 源氏ゆる語り
さて、今回は「賢木」
なんといいますか、源氏周辺に嫌ぁぁな空気が立ちこめ始める、そんな巻です。一つのターニングポイントと言えるでしょう。
アーカイブはこちら。
アーカイブ5:30くらいから、六条御息所のその後がまず描かれます。
彼女はこの時、娘と一緒に野宮(ののみや)におります。
この野宮とは伊勢の斎宮に選ばれた娘が、伊勢に下る前にまず禊をするために1年間暮らす場所で、占いによって決まった宮郊外の浄野に設置されます。平安時代は京都の嵯峨野や西院に造営されていたようです。
禊の地に通うことは憚られるうえに生き霊事件のこともあり、すっかり足が遠のいていた源氏。でもやはり、いざ彼女が娘と一緒に伊勢に行ってしまうとなると寂しい。せめて挨拶だけでもと、野宮まで会いにいきます。
会ってみるとやはり御息所はいい女。源氏の中にむくむくと未練が…。
しかし、帰宅後の源氏から送られてきた手紙を見た六条御息所の一言…。
思いを断ち切るための、切実な「自分への言い聞かせ」のように思えます。
ぜひアーカイブでどうぞ。
あ、系図も貼っておきましょうね。
一方で光源氏はぐずぐず。しかも娘の斎宮14歳に興味を持つという…。
本当に呑気です。刻一刻と自分を取り巻く状況が変化していってる中で、光源氏だけ取り残されていってる感じがします。
15:00頃からは、ついに桐壺院崩御へとお話が展開していきます。
自分の余命の程を悟り、幼い東宮(藤壺が産んだ皇子・実は源氏の子ですね)を心配し、朱雀帝にくれぐれもと頼みこむ桐壺院。
光源氏を頼りにせよ。二人で政治を行なっていけ。遺言のように帝に告げます。
その言葉をしっかり受け止める朱雀帝。彼は本当に人間ができている!
そして桐壺院は崩御され、アーカイブ19:00すぎから、右大臣方の勢いが増す中で源氏&左大臣家方がどんどん寂しくなっていく模様をお話してます。
除目(人事異動)の時の話なんかは、きっと現実にこうだったんだろうなぁと思いますね。
源氏・左大臣方の不遇の時代。あ、私の「不遇」の発音が関西訛りで聞き取りにくいですか?これ、発音違うとだいぶん印象変わりますね。これ、生徒からも言われました。だから教えるときは標準語で頑張ってるんですよね〜。やっぱりまだ訛りますけど。難しい〜。
そんな中、源氏はまだわかっとらん!
29:30くらい〜朧月夜と密会してこっそり帰っていくところを、右大臣方の藤少将に見られてしまったり!
32分くらい〜三条宮にいる藤壺さんに逢いたくなって忍び込んだり!
これがね、朧月夜と慣れ親しむうちに、ふと藤壺と比較しちゃって、その慎ましい在り方に「やっぱ藤壺様サイコー」って思って恋しくなるという…。
アホか!オマエは!今自分が置かれてる状況を考えろ!ってなとこなんですが、もうこれが筆者の筆が乗っちゃってる!乗りまくってる!
この作者はよく男女のやりとりの場面であえて「男」「女」と呼称を変えたりするんですけどね、今回の藤壺さんとの場面では、源氏は「男」と書かれるんですが、一方の藤壺さんは女ではなく「宮」と書かれるんです。
つまり、源氏は男の本能に支配されてるけど、藤壺さんは終始冷静なんですね。冷静に自分の立場を考えて身を守り抜くんです。
ますます、源氏だけが過去に取り残されてる感じが際立ちます。
この事件は、彼女に出家の決意を固めさせます。自分の身を守るため、東宮の立場を守るため、そしてそれは源氏の立場を守るためにもなる。
彼女は本当に聡明な人でした。
42:00くらいから、藤壺宮と幼い東宮との別れの場面のお話をしています。可愛い虫歯の表現についてもお話ししてます。これ、いいですよね〜。
そしてこの後、アーカイブでは45:00すぎからになりますが、源氏と朱雀帝の会話を挟んで、物語は次のステップに進みます。
朱雀帝は源氏と仲良くありたいと思っている。父帝の遺言も守りたいと思っている。ここに兄弟の語らいが挟まれることで、それがよくわかります。
しかし帝を取り囲む右大臣方の勢力が源氏を貶めようとしていることを制御する力は、帝にはない。これが切ないんですよね。朱雀帝の悲劇です。
その後、藤壺さんがついに出家。49:30〜です。
源氏をバックアップしていた左大臣も世の中に嫌気がさして辞任。
時代は完全に右大臣方の天下になります。
そんな中で光源氏はどうしたかというと…!?
55:20〜、ここからはもう、ぜひゆっくりじっくり聞いてほしい。
ここからがこの巻の一番の読みどころです!!
朧月夜ちゃんが体調を崩し、里下がりしてるんです。
で、ちょっと体調が戻ったところで、二人は夜な夜な密会を繰り返します。つまり、源氏は敵だらけの右大臣の屋敷に夜な夜な忍び込んでるわけです。アホです!アホ!破滅まっしぐら!朧月夜もなんとかせぇよ、帝の寵愛を受けてる立場やのに!
しかし、ここで官能の渦に溺れてしまうのが光ちゃんと朧月夜ちゃんなのでした。まさに、そしてまたもや、甘い破滅……(チエルーム4thアルバム『甘い破滅』よろしくお願いします)ww
若い二人のやったことは本当に、時代が読めていないアホな行いでした。
ただ…右大臣に発見されてしまった時の源氏の艶っぽさったら…!!
この場面は、花宴の巻での朧月夜との初めての逢瀬のシーンに次いで、源氏の色男ぶりが炸裂している場面です。
アタクシ、案の定大興奮でお話ししてますので、ぜひ苦笑しながらお聞きください。
二人の恐れ知らずな密会のことを聞いた弘徽殿大后の大爆発は1:05:00〜。
怒ってます。そりゃそうでしょうよ。しかしあまりに怖い。この人、本当に怖いんです。
そんなわけで、この巻の後半を簡単にまとめるなら「世の中の状況が変わっていくのに源氏だけが取り残されている」ような印象。
良かった時代を引きずったまま。
ずっと恵まれてきた人の甘さが露呈。
そんな印象です。
そこで引き起こしてしまったこの大事件。
さぁ、どうなることやら…
というわけで、アーカイブ、もう一度貼っておきますね。