pha『パーティーが終わって、中年が始まる』
phaさんは同世代な上、直接は知らないが友人の友人で、まったく同時期に京都に住んでいたし、私も当時はてなダイアリーを利用していてあの頃のインターネットの雰囲気はよくわかるので、内容が他人事ではなさそうで怖くて読めなかったというのも少しある。
今20代の終わりくらいの人に聞いたら、この本を読んでいろいろと心を抉られたと言っていたが、私にとってはだいたいここ数年の自分の気持ち、感じ方が可視化されたという感じだったのでさらに追い打ちで心を抉られることはなかった。むしろ、逃げ切れずに中年になってしまった自分を受け入れ、前向きにこれからの生き方を捉えていて、励まされる本だった。
私は20代後半で結婚してしばらく夫婦だけだったが、家族としての暮らしはそれ以降ずっとあるし、ここ十年は子供までいるので、そこは自由なまま逃げ切ろうとしていたphaさんとは異なる。2000年代から10年代に、確実に新しい生き方をして何かの先頭を走っていたphaさんですら、中年になってしまうということだけが少し悲しかったが、やっぱりそうか、とも思った。
確実に少しずつ衰えていく身体と、感じやすさと瞬発力を失っていく心と、ぼんやりと何かになれるつもりだったのになれなかったという失望と向き合って、勢いや楽しさで、その場に落ちてきたことをやってみるのではなく、やるべきことやれることをその時の能力の限り着実にやっていくしかないんだと諦めること、そしてやっと人並みにそういう境地に至ったのかという感慨をphaさんは言語化していると思う。
文体もあの頃のインターネットの手触りがあり、自分の世代が最先端だったころがもう過ぎてしまったらしい実感を得るのはさびしいが、今の中年の気もちをこうしてphaさんが書いているのを読めるのは幸運だし、うれしい。