辻 惟雄『伊藤若冲』(ちくまプリマー新書)

突然日本美術(の知識)を身につけようと思い立ち、美術館に通い始めたがきっかけはこの本。子供の将棋教室でお迎えの時間を待つ間、本でも読みたかったが持ってくるのを忘れたので、近くの書店で吟味した末に買った。

中高生向けなので、難しい言葉が使われておらず、辞書を引かなくても言葉は理解できる。かといって、内容を噛み砕きすぎて退屈ということもなく、大人の初心者にもちょうどいい内容。若冲の人生、絵画にしか能がなく、家業の青物問屋も投げ出した社会不適合者のオタク、と言うイメージがどう覆されたか、代表作の見所、プライスコレクションの話、何が若冲を特に魅力的な作家にしているのかの美術史以外からのアプローチなど、短いながらもりだくさんである。

「瑞獣伝来」で百鳥図や鳳凰図を見ていたからこそ、話の文脈がわかったこともあり、本で知識を仕入れつつ、実物も見つつ、だと楽しいんだなあと実感したので、『皇室の名宝』で動植綵絵が出品されると知ってすぐに見にいった。若冲の絵の実物を見るのは初めてではなかったけど、少しでも知識があると心構えが違うのもあり、より感動したように思う。

何の知識もなく前評判もなく、現物を見てすごさに打ちのめされる、という体験が至高だとどうしても思ってしまうのだが、これまでの知識や経験を無視することもできず、感性も柔らかくはないと思うので、これからは知識を得ることを面倒くさがらず馬鹿にしないでちょっとずつ知っていきたい。最終的には、海外の人を美術館やお寺に案内しつつ、作品を通してお互いに色々と話せるようになるのが目標。

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