泣きっ面に切れた千円札の角
家族と猛烈にケンカをした
ケンカの原因は今日のことではない。もう昨日のことだ。怒りがやまないわたしの火山噴火を抑えられなかった。
昨日の怒りを口から思いっきり腕を突っ込んで、ぐつぐつ煮えたぎった感情のままひっつかんできて、机にぶちまけた。だから、ケンカというか、一方的にまくし立てて、問題提起だけして、外へ出た
どんなにケンカをしても顔を見たくないことなんてなかった
でも今回は顔もみたくない。世間の人の顔もみたくない
ケンカの原因になった出来事で傷ついたままのわたしに、世間のだれかも追い討ちをかける。
すれ違っただけの人に、悪態をつかれたり、よけたはずの肩越しにぶつかられ、荷物が放り出され散乱したり、もうライフマイナス時点の最後ダメ押しで、誰も彼も嫌いってなった
なぜか不幸顔していると不幸は不幸を呼ぶ
泣きっつらにハチ
そんなわけで、ハラワタごとぶちまけて、家を出たわたしは、ズルズル鼻をすすりながら、歩いていた。
泣いて化粧がとれた顔面は、もちろん眉毛も消えて、目深に被った帽子だけが頼り。その下に隠してる顔は、なるべく見られたくない。
不幸が不幸をよぶ
家を出て、数歩で、モワッとした空気に家に戻りたくなる。
啖呵を切って出たのにかっこわるい。う、うん、行くか。
諦めて汗ばんだ顔と涙に濡れた顔と鼻水がずるずるしてる中、喉の乾きを覚えて自販機の前だ。
炭酸のぶどうジュースが飲みたい。スマホ決済はできない機会か。
財布をのぞくと小銭…。一円と五円しかない…。
う、うーん、気を取り直して、ああ千円があった。取り出した時にひらりと風に舞った何か。
ああ、千円の角が1センチくらい切れてとんだ。ま、まぁ、自販機は大丈夫かな?
千円の挿入口につっこむ、と、ウィーンといいながら返ってくる
もう一度。
ウィーンっつって返ってくる。
うぉーーーい!はいれや!
不幸は不幸を呼ぶ。なんだろね、この不幸スパイラル。なんで今千円切れるん?
一生のうちで自販機に入れる千円札が、こんなタイミングで切れることありまっか?
おかしいやろが。
そりゃ東京出身だけど、エセ間違いまくり関西弁も言いたくなるわ
んんん、もうー、
と歩きだした街に向かう商店街を歩き出す
このぐちゃぐちゃの顔には明るすぎる
わたしの居場所なんてない
いつも思う
じゃあ反対側に歩けばいーじゃん
明るい方に向かうのは、やっぱ寂しいからなんだろうか。
夜光虫みたいだね。
わかってるんだ。わたしの家族は優しい。わたしが怒ったらきっと謝ってくれる。家族の行動いろいろなことに理由があったんだ。わかってるんだ。わたしが向けた刃は、また全部私に刺さる用意をして待っている。
傷つけられたから、辛くて反撃した刃は、反撃したこと自体が辛くなる。
ごめんね。もう帰ろう。
こんな明るいところにわたしの居場所はないし。
千円が早くお帰りって言ってたのかな。
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