朝、娘を保育園に送る途中、自転車から一瞬見聞きしたことを勝手に考察する話。
人が聞いたらしょうもない話。
わたしだけの笑いのツボかもしれない話。
「ギア」とはエンジンの動力のパワーの強弱を変える仕組みのこと。
「ギアチェンジ」は発進や中速や高速に適したギアに変えること。
「ニュートラルポジション」はギアが入っていない状態のこと。
その日、保育園に娘を送るためにいつもの道を自転車で走っていた。
ちょうど横断歩道を渡って、向こう側の道に走り出したとき、目の前の歩道にラフな頭(以下ラフマン)のワイシャツ姿のサラリーマンが目に入った。
彼は誰かを見つけて、不意打ちのような顔をして、わかるかわからないかくらいに少しだけ口元をひきつらせて、顔をそちらに向けている。
目線の先には、髪をオールバック(以下オールバックくん)にしてツンと立てたワイシャツのたぶんこちらもサラリーマン。
オールバックくんは相手が顔見知りとわかるやいなや片方の眉毛を吊り上げ、視線はその相手からそらさないまま、異様に眼光鋭く、ひとつ「ゴホン」と瞬時に咳払いをして「近くだったんすね。」って声をかけた。
ギア入れたなと思った。
バイクの排気音が私の頭の中で「オオンッ」と鳴った。
ラフマンは先輩だろうか?上司だろうか?
こちらはあまり気を使っている風ではない。
ひきつり顔もフラットな感じ。
いつも会社での反応はドライなタイプっぽい。
オールバックくんは会社ではギア入れてテンションあげて仕事モードで頑張ってそうなタイプっぽい。
ラフマンに会った時、目力が瞬時に発動して、視線が硬直、顔の緊張で眉毛が吊り上がったのは、朝の気を抜いていたフラットな自分の状態から急に全身に緊張が走ったためと推察する。
朝のニュートラル状態から一瞬にしてガガガッとギアを入れてテンションを上げた。
「マジかよ。もう今日が開始ですか。」とでも思ってるんだろうか。
おもしろい。
例えば、女子といるときと男子といるときと態度が違う女子が、女子の輪にいて悪態ついているときに、男子に話しかけられて急に声高に男子に返答するその変わる瞬間を目にするのと同じような感じ。
そんな女子にはテレビドラマでしか遭遇したことはないけど。
わかりやすく言うときっとそんな感じだろうと思う。
朝のテンション低めの時に近所のテンション高いおばちゃんとかに話しかけられてなるべく愛想良くして早めに切り抜けようとギア入れる感じとか。
会社で、対応間違えるとめちゃめんどくさい先輩にあった時に、いやめんどくさいやつにあったよどうやって切り抜けよう〜〜って声の調子3トーンくらい上がる感じとか。
ちょっと似てるかも。
朝、気い抜いてる時に急にギア入れんのしんどいっすよね。わかる。
彼の一瞬で吊り上がった眉毛が面白くて…。
自転車で彼らの間を走り抜ける2.3秒の間の出来事の話。
全然違うかもしれないけど。笑。
例えば、誰かがいらんひとこと言って、現場が凍りつく瞬間を目の当たりにしたときとか
すごく怖い上司に何か提案したけど、瞬殺で却下された時の、ですよね〜〜って感じの間とか。
そういう瞬間って面白くないですか??
シュールな場面が大好き。
そして2人の心の声の会話はこんな感じかな?
ラフマン「なんだよ、コイツこんなとこに・・。」
オールバックくん「マジかよ、もう朝が開始ですか。」
ラフマン「しかしコイツ朝から眼力うるせーな」
オールバックくん「あーめんどくせー。何これ先輩と一緒に出勤な感じ?」
ラフマン「なんか一緒に並んで歩き出したけど、一緒に行く気?」
オールバックくん「仕方ねえ、この人何考えてるかわかんねえし、印象悪くできねえし。」
ラフマン「はーどうでもいいけど、だりー、タバコすいて」
オールバックくん「やばい、何話そう。ネタがねえ。」
ラフマン「はー、腹減ったなー。しかし美沙子のやつプリプリしてたな。俺なんかした?飯くらい置いてってくれよー」
オールバックくん「この人、めっちゃリアクション薄いんだけど、怒ってる??なんかおもしろい話…。」
ラフマン「はー、しかしコイツめっちゃ朝から元気だな、今日の仕事全部投げとくか、笑」
ラフマンなんも考えてない人だったりして。
大体頑張っても相手ってこんなもんだったりしますよね。
ラフマンもオールバックくんもお疲れ様。
今日がよい一日でありますように。