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筑波大・琉球大のシステム開発合宿(enPiT合宿)に技大生8名と参加中

筑波技術大学には産業技術プロジェクトC・Dという、学外の学生と一緒にプロジェクト学習を行うことが目的の科目がありまして、その1テーマとして、アジャイルな開発を学ぶ合宿に参加しています。

今年は9月18日から27日にかけて7日間開催しています。第1週が終わったので、今回の記事はその記録です。書いてたら長くなっちゃったんで、適当に呼び飛ばしながら見てください。


前提:名称(enPiT/AgileMiniCamp)について

まず、この合宿の名称が複数あるのでその整理から。

この合宿「成長分野を支える情報技術人材の育成拠点の形成(enPiT)」という文部科学省主導のプロジェクト(https://www.enpit.jp/)で2013年から多くの国立大学で実施されているプロジェクト型学習の一部です。1週間程度の合宿と半期のPBL授業で構成されており、筑波大では通称enPiT(科目名はまた別)、琉球大では合宿名をAgileMiniCampと呼んでいます。

筑波技術大学では2022年に琉球大AgileMiniCampに合流してから今年で3年目です。今年から筑波大enPiT夏合宿と琉球大AgileMiniCampが合流し、3校合同開催になってます。

1週目(9月17日〜20日)は筑波大と筑波技大のみで開催、第2週は琉球大も(オンラインで)合流してAgileMiniCampを開催します。

なので…さてこの合宿の名前をどうしたら良いやら…ひとまずenPiT合宿と呼ぶことにします。

なお、通称enPiTというプロジェクト型授業は上記の経緯により日本の多くの大学で行われており、大学によってやっている内容も異なります。
この記事ではenPiTはenPiT筑波大・琉球大の活動内容を指しています。ご了承ください。

1週目:デザイン思考入門

1週目は講師のkyon_mm氏によるデザイン思考入門です。
実はこの1週目のワークショップは今年から導入されました。enPiT筑波大・琉球大では身近な困りごとをテーマにチームを作り、困りごとを解決するシステムを開発します。このワークショップでは、その困りごとに隠れる真の課題やインサイト(ひらめき・気づき)を見つけ、そこから最初のアイデアを出していきます。

ワークショップは「リサーチクエスチョンを立てる」「インタビューをする」「問題のインサイトを探る」「問題を解決する問いを見つける」という流れで進みました。

なお、ここからの説明は私の理解をベースにしているので違っていたらご指摘ください!今回は初めての内容で私もかなり勉強になりました。

リサーチクエスチョンを立てる

まずはユーザーリサーチからです。チームで選んだ「身近な困りごと」をあらためて掘り下げ、困りごとがどんな人がどんな状況にある時に起こるのかを「リサーチクエスチョン」として考え、その状況が起こる人(あるいは起こらない人)に対してインタビューします。

今回は医療分野で使われるリサーチクエスチョンのフォーマットであるPECOフォーマットを使いました。
参考)https://www.jaot.or.jp/files/page/wp-content/uploads/2010/08/practice-lecture-33-2.pdf

情報系の研究でも最初にリサーチクエスチョンを立てますが、(少なくとも私は)決まったフォーマットにはしたがっていませんでしたので、とても参考になります。

そこからインタビューで聞きたい具体的な問いを出して、インタビューに入っていきます。

インタビュー

インタビューでは困りごとが起こる時の周辺(人・環境など)と感情を洗い出したり問いを聞いたりして、困りごとの解像度を上げていきます。ほぼ半日間のワークで、受講生同士インタビューしあったり、オンラインでインタビューしたり、食堂に突撃しているチームもありました。インタビューによって、チームで考えていたニーズがあまりなく、別の問題を発見したっていうチームもありました。困りごとを出した時点ではソリューション起点(〜が欲しい)というチームも、このインタビューによって「なぜそれが欲しくなるのか」「本当に欲しい場面があるのか」が洗い出されていたように思います。

困りごとのインサイトを見つける

インタビューからをまとめて、困りごとに関して新たな気づきが得られるか、掘り下げていきます。本当に問題になる部分はどこなのだろうか。引き出しやすいツールとして、東工大のEngineering Design Project (EDP) が提供している「たてまえメソッド」を使いました(参考:https://medium.com/titech-eng-and-design/povの新フォーマット-ce21359703b8)。「困った」という状況では出てこなかった「とはいえ〜〜である」という言葉から「困った」の裏にある問題が気づきやすいようになっています。ここまで進むと、困りごとがいわゆる「あるある」から抜け出して、本質的な問題が垣間見えるチームも出てきました。

解決の糸口を見つける

困りごとのインサイトを掘り下げたところで、今度は解決の糸口を探っていきます。 d.schoolが提唱している10種類の切り口を使って考えます。

https://edp.esd.titech.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2022/04/hmwq_samples.pdf

学生チームの発表では、へぇっ、予想もしなかった展開!と驚くような糸口が出てきて興味深かったです。

この後それをポスターで表現するなどして、糸口を少しずつアイデアを具体的にしていきます。

今週はここまで。第2週は、ここで出たアイデアからスタートして、プロトタイプシステムをアジャイルに作っていきます。

技大からの参加体制

今年度、筑波技大からは2年生3名、3年生5名の8名が参加しました。そのうち3名は2回目の参加です。

さらに今回は技大でのメンター体制も導入しました。本学卒業生・元フリーエンジニアで新任助手の田中先生、3人の修了生にに協力してもらい、なかなか手厚いメンタリング体制になりました。

正直とっても頼りになるメンター達で、特に2日目と3日目は各チームにガッツリとついて良い相談相手になっていました。情報保障面でもかなり強力にサポートしてくれました!

情報保障の試行錯誤

今回は筑波大生50名近く、筑波技大8名が参加していて、80名キャパの教室ぎちぎちでやってます。
情報保障体制は正直試行錯誤中です。基本的に講義はcaptiOnline (https://captionline.org/) を使い、音声認識したものを筑波大のメンター学生が修正するという体制でやっています。筑波大メンターさんの修正能力が凄くて、私はあわわとしているうちに高速で修正してくれます。なんならJavaScriptコードも(ローカルで)書き換えて使いやすくしたりしててさすがすぎる。

ただ現時点でいくつか改善点も多くて。

  • メンターが別の環境準備とかメンタリング対応している時に講義や教室のアナウンスが入ることがあり、文字起こし修正が間に合わない。

  • 人によっては音声認識されにくい。(早口で喋る、低音など)

  • 話し言葉に切れ目がなく、音声認識未確定の文章が長くなってしまう(未確定の文章は修正できないし見づらい)

あと、振り返りの結果を他のチームの人に説明し合う「レトロスペクティブツアー」があるんですが、それがブース形式(各チームがブースを出して、1人画説明、他の人は別のブースに行って話を聞きにいく)なので、情報保障がしにくい、という問題もあります。これが一番解決できてない問題かもです。

技大生・技大メンターだけじゃなく、教員や筑波大メンターとも相談して、試行錯誤して態勢を探っています。

2週目のスプリントレビューでは手話通訳も入るので、発表がしやすくなるのではと思います。

2週目が楽しみ

いよいよ第2週からプロダクト開発に入ります!ここから具体的な開発と価値検証のフェーズに入ります。楽しみです!!


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