キラキラしていない深圳ですが…
Amazonプライム・ビデオで公開のドキュメンタリー映画
ずっと前から公開中ですが、最近やっと見ました。
日本語公式サイトもありました。
世界で一番ゴッホを描いた趙小勇氏
映画は10年位前の、深圳大芬油絵村が舞台。
当時既に20年以上、ゴッホの複製画を描き続けた趙小勇氏、
オランダの画商の招待を受けて、欧州旅行へ。
初めて見た本物のゴッホと、自分の複製画が売られている
現場の現実を知った後の葛藤、
その後の決断と変化を追いかけたドキュメンタリー映画作品。
趙小勇氏は湖南省出身の出稼ぎで、深圳市の都市戸籍を持たないため、
彼の娘を故郷の両親の元に預けて学校に通わせますが、
現地の方言が分からないと、両親に泣いて訴えるシーンが辛いです。
中国は居住地と異なる戸籍の場合、現地の学校に通う事が出来ません。
中国人のパスポート取得は戸籍地で取得のため、
故郷に戻って手続きをする必要があります。
作品の端々に中国社会の格差を感じさせるシーンが
次々と描かれます。
趙小勇氏が上京した90年代の深圳大芬村は布吉に有り、
当時は第二ボーダーの境界外に有り、
深圳市とはいえかなりの田舎でした。
そのため農村戸籍でも住む事が可能だったと察します。
それまで模写だけの職人だった趙小勇氏が
欧州で本物のゴッホに出会い、単なる真似から
精神の深い箇所まで向き合い、
少しずつでもオリジナルを描く画家を目指す様になるところで
話が終わりますが、
思いの外感動しました。
中国に帰国後、仲間たちとの会話で
オリジナルを目指すと宣言する中で、
「生前のゴッホの様になるのが怖い」と涙声の女性に
「今は時代が違うから大丈夫」と励ます描写が素敵でした。
ニセモノの生産基地からオリジナルを目指す中国の変化と
いかにもな描写でしたが、
それでも彼らの一途な姿勢に、心が打たれました。
映画の概要と、趙小勇氏のインタビューはこちら。
深圳大芬油絵村について
大芬油絵村について(百度・中国語)
大芬村の場所はこの辺り↓
羅湖から地下鉄で大芬駅までは26分。老街で3号線に乗り換え。
3号線高架線沿いにあるので、分かりやすいですが、
駅から10分位歩きます。
1989年、大芬村を訪れた偶然訪問した、香港の美術商、黄江氏が、
十数名の画家を率いて大芬村の民家を借り、油絵制作を開始。
後に、油絵の複製画制作の大量生産、輸出システムを確立。
中国国内から画家や画工が集まり、
中国で最も有名な油絵村と知られている。
複製画の他に、大芬美術館もあります。
入場無料ですが立派な建物です。
軽い気持ちで入ったら、ガッツリと館内鑑賞になりました。
大芬油絵村の印象
今まで大芬村へは3-4回行った事があります。
村と称していますが、地下鉄駅が徒歩圏内に有り、
周囲にマンションが建ち並ぶ住宅地です。
初めて行って時は、村中に立ちこめる油絵具の匂いに圧倒されました。
村中が美術室の匂い‼︎
複製画が可能なのは、パブリックドメインが切れた作家達の作品で、
独特の分かりやすい作風と、世界中で人気のある、
ゴッホの複製画が圧倒的に多い。
しかし店頭に飾られる多くの作品のレベルは、正直言って高くない。
「手軽な値段で入手出来る贋作」の印象。
更に見ていてキツいのは、スマホを片手に模写をする画工達。
彼らは恐らく、本物を一枚も見た事が無い。
色彩を見れば一目瞭然で分かります。
日本に居れば名作を見る機会が少なくないし、
意欲が有れば海外の美術館巡りも可能。
香港でも時々、趣き深い有名作品の展覧会が開催されますが、
出稼ぎで深圳に来た画工達は、深圳の都市戸籍を持たず、
香港にすら行く事が難しいのかと思われます。
一方、深圳だけどゆったりとした雰囲気の
街並みは、中々です。
中心地から離れていますし...。
力作揃いの絵画展を大芬美術館で鑑賞しました。
最近の大芬油絵村
コロナ明け後、久しぶりに大芬村に行きました。
以前ほどの油絵具の匂いは感じなかったです。
以前には見なかった陶芸教室を
多く見かけました。
色々変化を感じます。
次回は趙小勇氏の画廊に行ってみようと思います。