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言葉は人の心
「やまとうたは
人の心を種として
よろづの言の葉とぞなれりける」
これは、古今和歌集の序文(仮名序)。
かつて、和歌は自分の思いを表現する大切な手段だった。その思いは、人の心を種として、たくさんの言の葉としてひらいていく。
時代が変わっても、私たちが表現する言葉の根っこは、心につながっているんじゃないかな。
発する言葉はその人自身。
そして、素敵な言葉を使う人の表情は素敵だなと思う。言葉が表情にしみついている。
不思議なことに、書かねばならないと義務感で書いた文章は、当たり障りはないけれど、読み返すと心惹かれるものがなにもない。
何か良いことを言わなきゃ、という気持ちで言ったことも、人には届かない。心につながっていない「うわべの言葉」だったと反省する。
心から生まれた言葉はその人の人間性が滲み出るから、とてもエネルギーがあるんだなぁと、色んな人と話していても思う。
そういう、エネルギーのある言葉は、ふとした瞬間にぽこっと生まれることが多い。
だから私は、なにか感じたとき、その感じたことに余計な装飾をつけないで、辛抱強く待つことにしている。
そうして、ぴったりの言葉が見つかるととても嬉しい。
待つことは、人の話を聞くときも同じかもしれない。無理に聞き出そうとしても、本心は出てこないもの。
私は言葉が好き。
それは、言葉を通して誰かの心と、ほんの少し、つながることができるからかもしれない。