大学生自転車日本一周旅四十六日目:静岡駅から甲府駅へ
本編
この日の目的地は山梨県甲府市。静岡市からの距離は100㎞ほど。7時間かからないくらいで到着してしまうが、それ以上は進まないことにした。甲府市より東側にある街で宿泊するには東京都八王子市まで行かなければいけなかったし、もう野宿はしたくなかった(逃げ)から。それと、単純に山登りが多いから疲れるだろうという予想もあった。
甲府市は標高250mぐらいある。一方出発地の静岡市は比較的海沿いだから基本標高は1桁台。つまり、最低でも250mは登る。しかも、甲府は盆地だから、実際はもっともっと登るはず。今日が最後の山登りだと気合を入れる。明日は標高250mから標高0mまで行くわけだから下りが多いだろうと考えていた。
まずは静岡市の葵区から清水区へ行き、国道52号線に乗る。道路案内の標識が無かったからどこで曲がればいいのかわからなかったけど、その時は勘が冴えていてピンポイントで国道52号線に入れた。そこからは山登りが始まった。実は山梨県に入るまでにまず結構登る。最初は意地で漕ぎ進めていったけどさすがにギブ。最後の最後で耐えられなかった。もう少しの我慢だったけど、スピードが出なくなってペダルも回せなくなったから仕方がない。そのまま押して新清水インターまで行くと、そこからは下りが始まった。一気に下っていく。甲府は標高250mもあるのにそんなに下っちゃうの?というくらい下りが長い。県境までその道は続き、山梨県に入るとまたそこからは登りが始まった。今までは逆で、峠の頂点で県境や市の境だった方が圧倒的に多かったのに、谷底で県境。こんなに喜べない県境があったものか。また250mぐらいは少なくとも登り直さなければいけない。というわけでまたも長い長い登りが始まった。
我慢し続けていると、道の駅南部が見えてきた。時刻はおよそ12時。日曜だから混んではいるけど食堂に入っていく。他に店もあまりないから多少の待ち時間は許容範囲。一人で贅沢に二品頼んでやった。茶そばならぬ茶うどんと親子丼定食。うどんはワンコインだったしおまけということで。どちらもうまかった。信玄鶏って言うのを使っているって書いてたかな?聞いたことはないけど。好物の抹茶ソフトクリームもあったけど、今回はパス。二品も頼んでいたし、ちょっと出費が気になってしまった。
昼ご飯を食べ終えたら、さあ甲府市へ。距離自体も約半分に近付き、気合も充分。まだまだ登りだけど頑張っていく。半分以上はこの道の駅までに登っていて、二時間も経たないうちに登り切って下り始めたと思う。ここからはもう登ることはほとんどない。
南部町の北にある身延町を越えたあたりのトンネルで、一瞬死にかけてしまった。車通りがなぜか切れたから、トンネル内の狭い歩道を走るよりはと車道に出たはいいが、トンネル内は音が響くせいでいつ後ろから車が来たのかが判断つかないから、結局ビビッて車道の端っこの白線の外側を進んでいたら、段差に引っかかって制御不能になりバランスを崩してしまった。幸いなことに車道は車が来ていなかったので事故には至らずに済んだ。だけど、前輪が思いっきり車道でさまよってしまったのでまじで死ぬかと思った。危ない。道の端っこを通るときは真っすぐっ進むように慎重に漕がなくちゃ。心臓のバクバクが抑えられなくなってしまって近くのコンビニで気持ちを落ち着ける。旅もほぼ終わりに近づいてきているのに、ここで死んだら笑えない。い一や危なかった。
甲府市がぐんぐんと近づいていくと、山は遠くに消え去っていき、今度は田んぼや畑が広がっていった後、住宅街が始まって道も平たんになった。甲府市内の県道はめっちゃ狭かったし、日曜で車も多かったからマジで危なかった。一旦渋滞気味になっていたから、こんな狭い道わざわざ通った上に渋滞なんてついてないよなと思いながら、抜かされていった車たちをじっくりと抜き返してやった。(心が狭い男による)リベンジ!
甲府駅に着き、そのまま駅の北側にある武田神社へ向かった。甲府駅から武田神社までは一本道の長く緩やかな登り坂で行ける。途中に山梨大学や放送大学のキャンパスがあって、さらに進んでいくと鳥居に迎えられる。武田氏がこんなところに本陣を構えたから、わざわざ山を越えて甲府まで来なきゃいけなくなったんだよ多分。疲れさせてくれるよ。武田神社自体はあまり大きいものではなかったが、そこから甲府の市街が完全にとは言えないまでも一望できた。昔もこんな眺めだったんだろうな。
武田神社を訪れたても時刻はまだ16時過ぎとかだったから、今度は駅に自転車を置いて甲府城へ行くことにした。駅まで登ってきた道を下る。気持ちが良い。駅の南側まで行って甲府城に入る。説明文などの上を目でなぞった後は、本丸跡から甲府市を今度は完全に一望する。天気が良かったら富士山まで見えるみたいだが、あいにくの曇りでこの日の山はきれいに見えなかった。その後、本丸にある芝生でダラダラ。高校生とかもだらだらしていたから、格好のたまり場なのかもしれない。寝っ転がると気持ちがいい。ずっとこうしていたいぐらい。最後は明らかにTikTokを撮影中の女子高生二人組を横目に城を降りていった。
甲府の有名なご飯はなんなのだろうか。甲府と言えば、ブドウしか出てこない人間なので、ブドウを買って食べようかと思ったものの、スーパーで買えるブドウは関東と比べても大差がないだろうし、ブドウ狩りには行けないし、直売所に行くには遠すぎる上にもう閉店時間を過ぎているらしい。旬が近いだけに食べないのは勿体ないが仕方がない。他に何かないものかと調べてみると、ほうとうが有名らしい。ほうとうなんてあまり食べたことは無いけど、おいしかった記憶はあるから、駅前の有名店「小作」へと足を運んでいった。
ほうとうと一言で言っても、そのお店は種類が豊富で、何を頼むべきかよくわからなかったから、豚肉ほうとうをチョイス。5~10分ぐらいしてほうとうと小さなお椀が運ばれてきた。正直食べかたなんてわからないけど、なんとなくそれっぽい感じで食べ進める。とてもおいしかった。特にカボチャが大きく、食べ応えも満点だった。出来るだけお汁も完飲した。この旅を通していろんな麺類を食べ、一番うまい麺類はラーメン、特にとんこつラーメンだ、という考えが幼稚に思え、もっとうまい麺類はたくさんあるんじゃないかという気がしてきた。食は広い。
そういえば、甲府駅は山登りの格好をした人が大勢いた。皆富士山に登ったのだろうか。もうシーズンは終わったはずだから、どうなんだろう。ここら辺は高い山がたくさんあるから、山好きにとってはいい場所なのかもしれない。いつかは富士山に登っておきたい。日本を自転車で制覇したのなら、日本で一番高い山ぐらいも制覇しておかないとね。
ようやくこの旅にも終わりが現実的に見えるようになってきた。残すところあと二日。そして、明日は遂に関東に戻る。ただ、その前に山梨県でまだ長い長い笹子トンネルが残っているから、そこを越えるのが一番の課題。そこを越えたら後は下って行くだけのはず、そうこの時は信じていた。
ルート
静岡駅から県道67号線で清水駅まで移動した後国道150号線で北上し、国道52号線で山登り。富士川市で県道26号線、県道12号線、県道3号線とつないで北上し、甲府駅へ。