【選挙ウォッチャー】 西宮市長選2022・分析レポート。
3月20日告示、3月27日投票で、西宮市長選が行われました。
この選挙は、2期目を目指す民主党系の現職に対し、本気で日本維新の会が首を取りに来ており、そこに来て地元の自民系会派が離反し、4年前に惜しい戦いを演じた元県議を擁立。自民党が分裂してしまったため、結局、日本維新の会が「漁夫の利」で兵庫県初の市長を誕生させてしまうのではないかと噂されていました。
いよいよ日本維新の会が兵庫県を解体する足掛かりを掴むのか。まさに兵庫県のみならず、日本全国にも大きく影響するであろう、かなり重要な選挙が、この「西宮市長選」だったと言っても過言ではありません。
日本維新の会は、自治体の長を「維新」にする戦略で、大阪の大部分を陥落させました。大阪の陣取り合戦にはほとんど勝利したので、今度は兵庫だということで、まずは維新の支持率の高い西宮市長選と尼崎市長選で勝利を目指しています。ちなみに、尼崎市長選は今年11月頃に行われる見込みです。
兵庫県は既に実質的に「維新」である斉藤元彦知事が就任しており、大規模な行政サービスの切り捨てが断行されています。しかし、ほとんどの人が政治に興味を持っていないせいで、人々の暮らしがどんどん悪くなっていることにも、新型コロナウイルス対策が最悪であることにも気づいていないのです。これでは兵庫県初の維新候補が誕生しても不思議ではありません。このたびの選挙の結果は、政治に危機感を持っている人たちの間では、ものすごく注目されていました。
■ 吉岡政和候補の主張
今回、西宮市長選をますます混沌とさせた人物が、4年前の市長選で108票差の大接戦を演じた吉岡政和さんです。前回は大本命と言われながら惜しくも落選。今回こそリベンジを狙っていますが、情勢はかなり厳しそうです。というのも、今回は「西宮市が維新にやられてしまうかどうか」が最大の争点となってしまったため、アンチ維新の人たちからは「空気読め!」と白い目で見られてしまっているからです。
こうなってしまった背景には、自民党の危機感があります。大阪では、地元組織を壊滅され、昨年の衆院選の小選挙区では1議席も取れなくなってしまいました。これが兵庫県まで広がったら大変だと危機感を募らせた自民党本部が、自前で候補を立てたところで維新には勝てないので、ここは民主党出身であっても現職の石井登志郎さんに乗っかり、維新の党勢拡大を阻止したいという思惑があり、「どうして民主党出身の奴を応援しないといけないんだ!」と反発した地元市議たちが吉岡政和さんを擁立してしまったと言われています。
一説には、自民党を割って維新を勝たせるために立候補したのではないかと言われていましたが、実際に話を聞いてみると、そういうことでもなさそうです。
しかも、吉岡政和さんが立候補したことは、最終的に石井登志郎さんを当選させるために、より一層、人々を結束させることになったのではないかと見ています。もし一騎打ちだったら「なんだかんだ維新に勝てるのでは」という空気が生まれ、こんなに一生懸命になることはなく、逆に隙が生まれてしまったのではないかと思います。
そもそも、どうして吉岡政和さんが立候補することになったのか。それは自民党系の西宮市議たちが、どうしても石井登志郎さんを推す気になれなかったことが原因です。かと言って、維新を推すこともできないため、両方とも投票したくない人たちの受け皿を用意すれば、塵も積もって当選できるのではないかと考えたからでした。
もう一つ、彼らの背中を押した意外なものがあります。それが西宮北口駅から徒歩10分ほどの場所にある「左翼ハウス」です。おそらく今年で御年82歳になるオールド左翼の爺さんのアジトなのですが、市民の皆さんに平和の大切さを伝えたいという熱い気持ちが前面に出過ぎた結果、とっても気持ち悪いことになってしまい、市民からドン引かれている建物です。
ここに立憲民主党の安田真理さんのポスターが貼られていますが、ちょっと前までは石井登志郎さんのポスターが貼られていました。みんながドン引きするレベルのゴリゴリの左翼から応援されている石井登志郎さんを、保守の議員として応援するわけにはいかない。市民からは「左翼と手を組むようなことがあったら次から投票しないところだった」と言われたそうです。
見た目が圧倒的に気持ち悪いので、到底受け入れがたいところがあるのですが、それでも訴えていることは基本的に間違えていません。一番大きく掲げられている看板には「ロシア・プーチン、病院学校を攻撃・軍事侵攻の即時中止を」と書かれています。このゴミ屋敷も同然のアジトで西宮市民に向けてメッセージを呼び掛けたところで、「キモい!」と思われておしまいかもしれませんが、ロシアによるウクライナ侵略については、自民党の皆さんも同様の抗議をしているはずですし、皆さんもそう思っているはずです。
はたまた、辺野古基地の建設についても、右翼とか左翼とか関係なく、沖縄県民による住民投票の結果、「反対」が「賛成」を上回ったという結果があります。だから、オールド左翼の爺さんがガタガタ言っていますが、辺野古基地の建設に反対するというのは「沖縄県民の総意」でもあるわけなのです。なので、ここに並べられている看板の内容は、まったくおかしなことは書かれていないはずではありますが、もはや主張の中身ではなく「ビジュアルの問題」なので、爺さんの溢れんばかりの情熱がむしろマイナスに働いていることは、爺さんにも気づいてほしいところです。もしかしたら、爺さんが応援している安田真理先生にも悪影響かもしれません。
そんなわけで、片方は「維新」だし、片方は「左翼ハウスに応援されている野合」だしという気持ちで、このたび、吉岡政和さんが立候補してきたというわけです。だけど、あんまりにも維新の兵庫侵略計画に危機感がありすぎて、何でもいいから石井登志郎さんに投票するムーブメントが起こってしまいました。
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