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【選挙ウォッチャー】 大阪維新の会のファクトチェックチェック(#04)。

 また「大阪維新の会」が懲りずに市民を晒し上げています。
 実質的な国政政党であり、大阪では「与党」であるにもかかわらず、市民のツイートを晒し上げ、デマではないのに「デマ扱い」をする「大阪維新の会・ファクトチェッカー」ですが、3週間ほど更新が止まり、もうやらないのかと思いきや、懲りずに第4弾を出してきました。しかも、大阪がこれだけ新型コロナウイルスで大変なことになっている時に、よりによって、新型コロナウイルスに関する市民のツイートをデマ扱いしてきたのです。ということで、まずは吉村洋文知事のツイートをご覧ください。

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「何故大阪で感染が急拡大したのか。NEWS23で脇田座長がコメントしてた緊急事態宣言で大阪は感染を抑えすぎた、結果、変異株が既存株にとって変わる速度が早まり、変異株が急拡大してる説。逆説的でえっ?と思うが真実をついてるかもしれない。緊急事態宣言解除時の大阪の陽性者は1日約50人だった。」

 まず「大阪維新の会」がファクトチェックするべきは、この吉村洋文知事のアホアホツイートではないでしょうか。大阪が千葉や埼玉と変わらず、厳しい状態だったにもかかわらず、わざわざ政府に申し出て、とっとと緊急事態宣言を解除したのが3月1日。しかし、2月10日の段階では兵庫県で変異株の感染者が複数確認されており、同じ時期に滋賀でも確認されているので、「大阪に入っていない」と考える方が不自然です。
 そもそも「感染を抑えすぎた」と言っていますが、いつ何の対策をして感染を抑えたのでしょうか。イソジンでうがいする程度の対策しか打てていないくせに、どの口で「感染を抑えすぎた」と言っているのか。さあ、今日も大阪維新の会のファクトチェックをチェックしましょう。


■ ファクトチェックチェック(#04)

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 今回、晒し上げられているツイートは、新型コロナウイルスによる死亡者が多いのは、大阪が10年間、医療を削減してきたからだというツイートです。改めて、見てみましょう。

「コロナ感染者数が多く、死亡率が高いのは北海道、大阪、兵庫である。特に大阪が同一人口比で東京の1.5倍人が死んでいるのは、維新三羽鳥のこの10年の医療削減に原因がある。病床数、保健所、看護師など。吉村が国より緩い基準で緊急事態宣言を解除すると感染終息はさらに遅れる。正に維新災である。」

 このファクトチェックの面白いところは、医療削減の話や、保健所や看護師の数が足らないという話を「デマ」だと言っていて、「吉村が国より緩い基準で緊急事態宣言を解除すると感染終息はさらに遅れる。まさに維新災である」の部分は、まったくのスルーだということです。これが「維新災」であることは「本当」だと思っているのかもしれません。それでは、彼らがデマだと思っているところを見ていきましょう。

【POINT①】
病床数について
・平成30年11月現在の地域内医療機関情報の集計地によると、大阪府の人口10万人あたりの病院病床数は1182.94であり、東京都925.17、神奈川県810.30、愛知県881.41、兵庫県1154.10などを上回る水準で病床数が確保されている。

 よりによって、大阪維新の会は「平時の病床数」を持ち出して、「こんなに病床数がある」とドヤをしているのですが、大事なのは新型コロナウイルスの感染者を受け入れられる病床数がどれだけあるのかということです。普通のベッドがどれだけあっても、新型コロナウイルスの患者を受け入れられるベッドでなければ、どれだけ数があっても議論にならないからです。議論するべきは量ではなく「質」です。
 NHKが第3波の山が高かった今年1月11日時点で、主要な都道府県の病床数をまとめてくれていますので、例に出た都道府県の数と人口比を見てみることにしましょう。

 東京都:4000床(人口10万人比:28.63)
神奈川県: 919床(人口10万人比: 9.97)
 埼玉県:1267床(人口10万人比:17.26)
 千葉県: 975床(人口10万人比:15.52)
 愛知県:1102床(人口10万人比:14.62)
 北海道:1811床(人口10万人比:34.14)
 大阪府:1478床(人口10万人比:16.78)

 平時の病床数でドヤをしていましたが、大阪府が他の都道府県に比べて病床の確保ができているとは言えません。病床の確保ということで言えば、大阪より東京の方が圧倒的に整っています。埼玉県や北海道にも劣り、愛知県や千葉県よりは「数字の上ではマシ」というレベル。実際の運用はもっとシビアなのではないかと思われます。
 ちょっと前後しますが、「看護師の数」についても、似たような話なので解説しておきたいと思います。

【POINT③】
看護師の数について
・政府統計の隔年報によると大阪府内の看護師、正規雇用数はむしろ増加している。(平成20年で4万9103人だったものが平成30年で6万9126人になっている)

 大阪維新の会は、大阪府内の看護師の数はむしろ増加していると息巻いていますが、どこも看護師不足で大変な中、普段は出席していない全国知事会の会議にこんな時だけ顔を出し、厚かましくも「看護師を派遣してくれ」とSOSを出したのは、全国で大阪府ぐらいなものです。数字の上では十分な数の看護師がいるはずなのに、実際には数字と大きく乖離があって、全国で唯一、深刻な看護師不足に悩まされ、頑張っている他の自治体から看護師を引っ張り出さなければならなくなった場所、それが「大阪府」です。看護師の数が増えていて、デマだと言えるぐらいに看護師が足りているなら、看護師を派遣してくれた自治体に返してほしいし、むしろ手が足りていない都道府県に派遣してあげてほしいです。看護師が足らないことをデマだと言ってしまうなんて、派遣してくれた自治体への感謝の気持ちが足りません。
 このように「数字」と「現実」に大きな乖離が見られるのも大阪の特徴です。入院を要する難病患者が入院できず、医者が「あなたみたいに入院できない人はたくさんいるんだから諦めてくれ」と言ってしまう所は、全国にも大阪ぐらいしかなく、数字を示して「まだまだ病床数に空きがある」と言いながら、実際には多くの患者が締め出されているのが大阪なのです。これは私の知人のリアルな体験談です。

【POINT②】
保健所について
・平成15年9月の定例本会議における太田房江知事(当時)の発言のとおり、「健康危機管理機能の強化、高度で専門性の高い分野での相談・支援サービスの充実」のため、平成16年4月に保健所支所を本所へ統合するとし、「大阪府保健医療計画」の通り、再編統合した。
・平成16年4月当初は14か所あった府の保健所が現在は9か所となっているが、この間、府下5市が新たに中核市となったことにより、保健所機能が府から市に移行したためであり、保健所そのものが削減された事実はない。

 確かに、保健所の再編計画は、太田房江さんの時代に行われました。正確に言うと、20年以上前から保健所を再編する計画はあって、当時から大阪市内の各区(24ヶ所)にあった保健所は1ヶ所にまとめられています。
 ただ、「身を切る改革」と言って、さまざまな行政サービスを削ってきた大阪維新の会が、まさか保健所を増やすような政策をするはずもなく、今日の今日まで太田房江府政で断行された1ヶ所の保健所をそのままにしてきたのは事実です。それどころか、このコロナ禍では「大阪都構想」を実現するための人質に使って、「大阪都構想が実現したら、保健所を1ヶ所から4ヶ所に増やす」という公約を掲げていました。こんなに卑劣な話があるでしょうか。保健所を増やすことは、べつに「大阪都構想」が実現しなくても増やせるのに、増やしてほしいんだったら「大阪都構想」に賛成しろと言わんばかり。これでは保健所を減らした張本人より、自分たちのエゴのために保健所を人質にとっている方が、よっぽどタチが悪いのではないでしょうか。


■ 肝心の医療が二重行政を理由に破壊された話

 大阪維新の会によって「質の高い医療が破壊されてしまった」という話をする時に、よく例に挙げられるのは「住吉市民病院」の話です。この話はあまりに有名なので、今回は二重行政を理由に統合されてできた「大阪健康安全基盤研究所」について触れておきたいと思います。
 一言に「医療が削減されている」と言っても、それが「病院」であるとは限りません。大阪維新の会は2017年に、1880年設立の警察部衛生課を前身とする「大阪府立公衆衛生研究所」と、1906年設立の市立大阪衛生試験所を前身とする「大阪市立環境科学研究所」を「二重行政」だと言って統合し、ついでに民営化(独立行政法人化)まで強行しました。
 大阪府立公衆衛生研究所と大阪市立環境科学研究所は、もともと保健所を指導・サポートする立場にあり、今回のような感染症が発生した際に、迅速な原因究明と被害拡大を防止するための重要な役割を担っていました。研究分野や検査方式がそれぞれ異なり、こんな時こそ役立つはずの機関が、大幅な人員削減と縮小化で、保健所との連携も薄れ、ほとんど機能しないものになってしまったのです。これこそまさに「維新災」であり、「二重行政」にこだわった結果、大阪府民の命を守れなくなってしまった典型例です。
 つまり、大阪維新の会のファクトチェッカーは、「医療削減」という言葉をデマだと扱っていますが、大きく「医療」と括った時には当然、そのための研究機関も含まれるわけですから、大阪府内の保健所の数が減っていないことだけを理由に「デマ」と扱うのは乱暴にも程があるのです。


■ 東海道新幹線の下りの乗客だけ検温する愚策

 今、吉村洋文知事が打ち出している新型コロナウイルス対策は、東海道新幹線の下り列車に乗って、新大阪駅で降りた人たちへの検温です。これで新型コロナウイルスの水際対策をしているつもりになっているのです。
 言うまでもありませんが、新型コロナウイルスの厄介なところは、無症状の人がたくさんいるということです。そもそも検温では気休め程度にしかならない上に、東京を出発する人を検温するわけでもなく、既に新大阪駅に降り立った人を検温をして、熱のある人に「保健所に連絡してください」とお願いしたところで、ただでも業務が逼迫して連絡が取れない大阪の保健所はどう対応すればいいのでしょうか。どうせ「しばらくの間、自主隔離してください」と言うに決まっていて、2週間も自腹でホテルに泊まれる経済力を持った人が一体、どれだけいるでしょうか。ましてや、今はどこのホテルも検温をしていて、チェックインの際にいちいち体温を測られるほどです。そこで引っかかったらホテルにも泊まれやしません。
 車で来る人も、バスで来る人も、在来線で来る人も、はたまた飛行機で来る人もノーチェックなのに、どうしてわざわざ東海道新幹線の下り列車に限定して検温をするのか。それは、新型コロナウイルスの流行が大阪で起こっているものではなく、東京からの流入によって起こっていると言いたいからだと見ています。それが対策だというなら、ずっとやらなければならないはずなのに、あえて期間限定で取り組むのは、「東京からやってきた発熱のある人は、こんなにいたんだ」と言うためではないでしょうか。「自分たちは悪くない」と言うために、ちっとも対策になっていないことをやって、やっている感を演出しながら、自分たちの正当性は主張していく。この「ファクトチェッカー」も基本的な構造は一緒です。自分たちが批判されることに対して人一倍敏感なのは、維新がやっていることが「雰囲気」でしかなく、その「雰囲気」を壊されてしまうと支持してもらえなくなってしまうからだと思います。


■ 選挙ウォッチャーの分析&考察

 実際のところは「緊急事態宣言」とほぼ同じ内容にもかかわらず、吉村洋文知事や菅義偉政権が何度も口にしている「マンボウ」こと「まん延防止等重点措置」。やっていることが「緊急事態宣言」と同じなら、今までと同じように「緊急事態宣言」でいいはずなのに、あえて「マンボウ」という言葉を使うのは、「緊急事態宣言ではない」という建前にすることで、やらかしているイメージを少しでも軽減するための「日本語大作戦」です。
 大阪は率先して「緊急事態宣言」を解除して、中身はそのまま「緊急事態宣言」の「マンボウ」を発令しているのですから、本当は「すぐさま緊急事態宣言を再発令せざるを得なくなった」のです。これを「マンボウ」と呼ぶことで今までよりマシであるかのような演出をしているのですが、変異株の蔓延で起こっている第4波は、両手にマラカスを持ち、陽気なテンガロンハットをかぶりながら「緊急事態宣言」を発令しているぐらいのヤバさだと思ってもらった方がいいと思います。「ウー、マンボゥ!」です。今にも頭が狂って踊り出すのではないかというぐらい、大阪、マジでヤバいです。

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