【選挙ウォッチャー】 NHKから国民を守る党・動向チェック(#239)。
先日、総務省が令和元年分の政治資金収支報告書を公表した。
世間では、「れいわ新選組」が個人寄付だけで5億円集めていたことが話題となっていたが、全国をコツコツと回って歩き、そのたびに寄付を呼び掛けていたことを考えれば、それくらい集まることに驚きはない。
それより異常なのは、やはり「NHKから国民を守る党」である。
奇しくも、政治資金収支報告書が発表されたタイミングで、日頃から「コロナは風邪」と言い続けている立花孝志が、37度1分と表示された体温計の写真をSNSに投稿。「風邪気味だから念のため」ということで記者会見を欠席した。記者からの質問攻めは回避した格好だ。
記者会見では、来年1月から「ゴルフ党」に変わるということで、立花孝志に代わって、大のゴルフ好きである上杉隆幹事長が、ゴルフ党の基本政策を発表した。ゴルフ税の改正、学校教育にゴルフを取り入れる、ゴルフ場を市民に開放して健康増進に役立てる、災害時の避難場所に指定する、LED照明でナイターゴルフを推奨するなどだという。日本中が新型コロナウイルスの感染拡大に震えているタイミングで、ゴルフ、ゴルフ、ゴルフ。飲食店に営業時間の短縮が呼びかけられ、社長が頭を抱えているタイミングで「ナイターゴルフをしよう」と言っているのだから、その空気の読めなさは、政党一丸となってのものである。
たった1年で「NHKの受信料問題」という唯一の公約を忘れかけているNHKから国民を守る党、改め、ゴルフ党であるが、先日公表された政治資金収支報告書は、実に疑惑に満ち溢れた内容になっている。もちろん、政党交付金が支給されている国政政党なので、立花孝志には説明責任がある。これからメディアはもちろん、税務関係の各機関からも事情を聞かれることになるだろうが、しっかり説明を果たしていただきたいと思う。NHKから国民を守る党の代表者、及び会計責任者は、立花孝志である。
■ 自分で貸して、自分で借りる立花孝志
NHKから国民を守る党は、総額で5億5530万円の借入金があり、そのうち、立花孝志が3600万円、立花孝志ひとり放送局が730万円を党に貸していることになっている。
昨年の参院選で比例区から立候補した浜田聡、岡本介伸、熊丸英治もそれぞれ600万円を貸したことになっているが、比例区から立候補する際の供託金が600万円なので、それぞれの供託金は「党が借りたことになっている」というのが、この収支報告書から分かる。
そして、立花孝志や立花孝志ひとり放送局は、党にお金を貸す一方で、党からお金を借りるという現象が起こっている。
自分で党にお金を貸して、自分が党からお金を借りる。あまりに不自然なお金の流れだが、立花孝志が党から借りたお金は6795万5000円、立花孝志ひとり放送局株式会社は6462万5154円を借りている。言うまでもないが、立花孝志ひとり放送局は立花孝志の会社なので、実質的に、立花孝志は総額で1億3258万0154円をNHKから国民を守る党から借金していることになる。
貸付金なのだから、当然、立花孝志には「お金を返す義務」がある。しかし、今の立花孝志に億単位の借金を返済できるだけの十分な収入はないとみられる。以前、「高須クリニック」の高須克弥院長との対談では、返済の原資を問われ、YouTubeの広告収入とYouTubeに関連した新たなビジネスによる収入だと答えていた。ところが、立花孝志は現在、YouTubeであまりに過激な内容を配信し過ぎたせいで、広告収入は完全に途絶えている。かつては森友学園の土地や建物を手に入れ、そこにYouTuberの養成学校を立ち上げるというプランをぶち上げたこともあったが、新たなビジネスも進んでいないようである。
立花孝志ひとり放送局の株主総会によると、現在、この会社の主な収入源となっているのが「視聴料」と呼ばれるN国信者(NHKから国民を守る党を熱狂的に支持する者たち)からのお布施のようなお金である。
NHKから国民を守る党は、かねてから「NHK集金人が来なくなる」という魔除けシールのようなものを配っている。このシールに効果がないことは、既にNHKが「シールの有無で訪問するかどうかを決めているわけではない」と表明している上に、彼らが選挙期間中にシールを配っていても公選法違反になっていないことが何よりの証明である。もし、シールの効果を各選挙管理委員会が認め、金銭的にも価値のあるものだとすれば、その瞬間に公選法違反となってしまう。彼らが選挙期間中も堂々とシールを配れるのには、それなりに理由があるのだ。
実際には効果がなくても、彼らの言うことを信じて「効果がある」と思う人はいる。手首に巻くだけで女にモテまくり、最終的に、両脇に美女を抱えながら札束風呂に入れると信じて疑わないブサイクが数珠を買うのと同じである。彼らはN国党のコールセンターに電話をかけ、まんまと個人情報を抜かれながら、無料で「NHK撃退シール」なるものをもらう。ただ、このシールには手紙が添えられ、そこには任意で「立花孝志ひとり放送局」への視聴料を払うように書かれている。立花孝志様のおかげで、これから一生NHKに受信料を払わないでも生きていけると思った人たちは、立花孝志の口座に数千円から数万円の「視聴料」を振り込むというわけである。そのお金があるのなら、いっそNHKに受信料を払ったらいいのではないかと思ってしまうが、こうした「立花孝志ひとり放送局」への視聴料は月に300万円ほどになるのだという。
ただ、現状はこの「視聴料」さえも減収になると考えられる。立花孝志自身がN国党コールセンターへの問い合わせは少なくなっていると言っているし、来年1月からの「ゴルフ党」への改名で、立花孝志に期待する人は激減するとみられるからだ。
さて、公表された政治資金収支報告書を見ると、NHKから国民を守る党は11月28日、「立花孝志ひとり放送局」に対して5000万円という巨額の貸し付けをしている。時同じくして、立花孝志は当時、名古屋の有名キャバクラ嬢の引退式に参加している。「引退式」と言っても、無料で参加できるセレモニー的なものではなく、キャバクラ店の営業内で行われているイベントである。参加する人たちはもれなくお客さんで、普通にキャバクラを楽しむのと変わらない。ここでは卒業を祝って、立花孝志名義の豪華シャンパンタワーが打ち立てられているのだが、立花孝志いわく、飲食代はすべて別の人が支払ったとされ、立花孝志は1円も払っていないそうだ。そうだとすると贈与税が発生するとの指摘もあるが、誰がどのような目的で立花孝志名義のシャンパンタワーを立てたのかは分かっていない。当時、立花孝志は有名キャバクラ嬢をN国党から立候補してくれるように頼むという大義名分を語っていて、やたらと高そうなシャンパンを開ける様子もアップされていたのだが、どうやら彼女を口説くために支払われたお金は、今回の収支報告書には計上されていない。立花孝志ひとり放送局に貸し付けられたお金から支払ったのだろうか。
不可解な点はいくつもある。例えば、12月24日から25日にかけ、NHKから国民を守る党は立花孝志に対し、22万5000円などの貸付を細かく繰り返している。中には322万5000円や645万円といった高額のものもあり、この2日間で立花孝志に貸し付けられた総額は、3795万5000円となる。11月28日のように、いっそまとめて4000万円ぐらい貸し付けても良さそうなものだが、あえて22万5000円のような中途半端な数字が連続して並ぶというのは不可解だ。これまでN国を監視してきた我々の目には、年末に何らかの返済、もしくは利子の支払いが立て込んだのではないかと映ってしまう。早くも借金の中から借金の返済が進んでいるように見えてしまうのだ。このあたりは、然るべき機関が事情ぐらいは聞くだろうから、我々としては見守るだけである。
■ N国党の懐事情は大変厳しいと推測される
NHKから国民を守る党の収入総額は、6億8166万9174円となっている。この金額だけを見ると、なんだかすごくお金を稼いでいるように思えるかもしれないが、このうち、受け取った政党交付金は6983万1000円で、それ以外に国から返還された供託金が1200万0480円あるだけだ。あとはN国党の地方議員たちが寄付したお金が4305万円あるのだが、これらはあくまで身内から集めたお金に過ぎない。残る5億5530万円はすべて「借金」である。
いまだに立花孝志のことを「経営者としては天才的なセンスである」と評する人たちがいるようだが、ほぼ同じ金額を寄付で集めている「れいわ新選組」とは埋めきれないほどの大きな差がある。
これらの借金は、初年度の利息が10%、2年目以降の利息が5%という高金利を約束して集めたお金である。銀行に10年預けても0.002%しか利息がつかない時代に、最低でも5%の利息がつくとあれば、こんなにおいしい話はない。この投資話に200人以上が参加し、中には1000万円を貸し付ける猛者までいる始末だ。もしNHKから国民を守る党が存続し続け、立花孝志が利息と元金をきっちり返した場合、貸した1000万円は5年後に1300万円に増える計算となる。
しかし、これらの「借金」が無事に返済されるのかどうかは、かなり怪しい。そもそも、これらのお金は「次期衆院選にかかる選挙費用が足りないから」ということで集められたはずだ。当時はすぐにでも解散があるかもしれないということで、弱小政党だったNHKから国民を守る党にお金がないことも理解ができた。ところが、あれから1年が経っても解散総選挙は行われず、このままだと来年の秋に行われても不思議ではない状況だ。そうしている間に、お金を集めてからわずか2ヶ月で、立花孝志や立花孝志ひとり放送局に1億円近い政党交付金以上のお金が貸し付けられ、さらには森友学園に8400万円が寄付されたという話もある。ざっくり2億円ものお金が「衆院選の選挙費用」とは別の形で消えているのだ。これに加えて、今年の立花孝志への貸付金がどれくらいになっているのかは、来年の今頃に政治資金収支報告書が公表されるまでは不明。高額の報酬を受け取っているとされる上杉隆幹事長の人件費は、この収支報告書には記載されていない。コールセンターの人件費なども不明のままだ。
かつては「お金の透明性」をウリにしていたはずのNHKから国民を守る党だが、今ではすっかりブラックボックスだらけの政党に成り下がってしまっている。立花孝志や立花孝志ひとり放送局に借金を返済できるだけの収入の目途が立たない中、そもそもNHKから国民を守る党が借金の返済をできるのかどうか。すべては立花孝志の手腕にかかっている。
■ 選挙ウォッチャーの分析&考察
既に多くの人が指摘していることだが、NHKから国民を守る党は、調査研究費として計上されているものが「0円」だった。つまり、「NHKの受信料問題の解決」という唯一の公約を実現するために、勉強したり、調査したことは何もなかったということである。
カラオケ館で支払った忘年会のお金はご丁寧に計上されているのに、NHK問題を解決するために購入した本や、調査のためにかかった実費は1円たりとも計上されていない。これはつまり、すべて立花孝志の「富岳」ばりにハイスペックな頭脳さえあれば、調査も研究も必要ないということだろう。
2021年からは「ゴルフ党(NHKから国民を守る党)」に改名される予定だが、この年から調査研究費が異常に増えたとすれば、それはもう税金でゴルフがやりかっただけだということになる。ゴルフの調査研究費にはいくらお金が費やされるのか。公表されるのは2022年の今頃ということになるが、私たちは毎年、NHKから国民を守る党に限らず、すべての政党がちゃんと税金を適正に使っているのかどうかをチェックする必要がある。
日頃から政治資金収支報告書をチェックをする人はあまりいないが、だからこそ、それを逆手に取るように、一個人に巨額の貸付を行うような政党が出てきてしまうのだ。私たちは常に監視の目を怠ってはいけないのである。
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