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【選挙ウォッチャー】 栃木県知事選2020・分析レポート。

10月29日告示、11月15日投開票というスケジュールで、栃木県知事選が行われました。立候補したのは、今年で5選目を目指す現職の福田富一さんと、元NHK宇都宮放送局長の新人で無所属の田野辺隆男さんの2人でした。福田富一さんは実質的に自民・公明から支持されているとみられ、宇都宮市長候補の佐藤栄一さんとも連携。田野辺隆男さんは政党からの表立った推薦や支持は得ていないものと思われます。これは栃木県に限った話ではありませんが、日本は全国的に少子高齢化が進み、さらには東京一極集中が進んでいます。最近は新型コロナウイルス対策で、より安全な地方で暮らす動きというのも増えているようなのですが、その人たちが栃木県を選んでくれるのか。もう少しピンチをチャンスと捉える動きがあってもいいのではないかと思いますが、このあたりが真面目に取り組まれていれば、今頃、栃木県の魅力度ランキングが最下位であるようなことはないのかもしれません。

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福田 富一  67 現 実質的に自民・公明が応援
田野辺 隆男 60 新 無所属(元NHK宇都宮放送局長)

これはかなり珍しい構図であると言ってもいいと思います。どこにでもあるような「自民vs共産」みたいな構図ではありません。保守分裂でもなく、圧倒的な組織力を持つベテラン現職に、いわゆる地元のエリートとして活躍してきたオジサンが完全無所属で戦いを挑んでいるという構図です。裏で何らかのつながりがあるかもしれませんが、少なくとも表向きは政党色がありません。サラリーマン時代はNHK宇都宮放送局の局長まで経験している人物なので、大番狂わせがあるかもしれない。そんな淡い期待を胸に取材をしたわけですが、実際に見てみると、選挙をやる前から結果が決まっているような選挙ではないかと思わずにはいられませんでした。


■ 局長より輝かしい伝説を持つ男がいる話

そもそも世の中には「政治」「選挙」をフィールドに活躍するジャーナリストがそれほど多くありません。もちろん、数としては少なくても、ちゃんとした人はそれなりにいるし、その人たちが活躍していないわけではありません。しかし、だいたいは総理大臣や閣僚の動きを追いかけていたり、政局を追いかけていたり、政治家が起こした不祥事を追いかけたりで、「NHKから国民を守る党」という弱小泡沫政党を追いかけているのは、僕しかいないという状況です。本当は僕だって面倒臭いことに巻き込まれるのは御免ですが、僕が伝えなくなったら誰も伝えないわけですから、戦場カメラマンが戦場に行くのと同じように、僕は「NHKから国民を守る党」という弱小泡沫政党が、どれだけこの国の民主主義や人々の生活を破壊しているのかを伝えるために、今日も筆を執っている次第です。

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さて、今回ご紹介する田野辺隆男さんは、東京大学法学部を卒業後、ディレクターとしてNHKに入局し、最終的に「元NHK宇都宮放送局長」にまで出世した人物です。東京大学法学部という時点で、めちゃくちゃ頭が良いことは間違いないですが、逆に言えば、そんな超エリートであっても、出世のゴールは地方局の局長だったという話になります。一方、NHKから国民を守る党の立花孝志という男なんですが、偏差値38の高校卒業後に、和歌山放送局の庶務部に入局し、あの爆発的ヒットドラマ「冬のソナタ」を韓国で買い付けたり、選挙の情勢分析をしてどこよりも早く当選確実の報を打つためのシステムの開発をしたり、社内のセクハラやパワハラの相談窓口の責任者をやったり、ある時は記者、ある時は経理、ある時は海老沢会長の秘書として、NHKの巨額の裏金工作に貢献していたという設定です。東京大学法学部という最高峰の学歴を持ったディレクターのオジサンが「放送局長」なのに、偏差値38の高校を卒業した庶務のオジサンが記者をやり、経理をやり、会長秘書をやり、さまざまなシステムを開発し、ドラマを買い付け、さらには巨額の裏金を作っていたというスーパーサラリーマン伝説。ブサイクでハゲかかっている上にスラップ裁判を仕掛けられているせいで貧乏まっしぐらのオジサンの僕が、広瀬すずちゃん、土屋太鳳ちゃん、吉岡里帆ちゃんと付き合っていたと言い出しているに等しい状況です。優しい人は「そうなんだ」と言ってくれるかもしれませんが、一体、どれだけの人が信じてくれるでしょうか。普通は誰も相手にしないことでしょう。しかし、NHKから国民を守る党を熱烈に応援するN国信者たちは、信じてしまうのです。すべてが自称で、客観的な証拠は一つもないのに、話の一つ一つが具体的だからその気にさせられてしまう。それは広瀬すずちゃんとどこでデートをしたのかを具体的に語っているようなものなのですが、そのほとんどはデタラメなのです。さあ、立花孝志はこの記事を訴えてくるでしょうか。


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