【選挙ウォッチャー】 台風12号が直撃した観光で経済活性化を狙う小田原市。
これまでの台風の常識を覆すかのごとく、日本列島を東から西に駆け抜けた台風12号は、各地に大きな被害をもたらしたものの、幸いにも死者を出すことなく過ぎ去りました。数多くのお祭りや花火大会が予定されていたタイミングで直撃したため、経済的な損失は大きかったものと思われますが、2011年の台風12号が82人もの死者を出したことを考えると、人命が奪われなかったのは不幸中の幸いだったと言えると思います。西日本豪雨災害の被災地も台風の進路となったため、大変心配されましたが、深刻な被害は出なかったようです。そんな中、神奈川県小田原市では、なかなか馴染みのない「高波」という被害を受け、来年5月の開業を目指す観光施設が壊滅的な被害に遭いました。「災害大国」と言える日本で暮らす僕たちは、「高波」という被害についても学んでおく必要があるかもしれません。
■ 「高波」とは、どんな被害なのか
いまや多くの日本人が東日本大震災をキッカケに「津波」が恐ろしいものだということは知っていると思いますが、今回、神奈川県小田原市で起こった被害は「高波」です。あんまり馴染みがないので、「津波」と何が違うのかと思うかもしれませんが、日本は海に囲まれているので、海に面している所ではどこでも「高波」の被害が起こる可能性があります。「高波」と言うと「波が高いだけでしょ?」みたいな感じですが、波にさらわれるだけでなく、大きな石が直撃するかもしれないことを知っておいた方がいいでしょう。
「高波」とは、高い波と海底にある石や岩が沿岸の家や施設を直撃する被害のこと。波が高いだけなら水をかぶって終わりなのですが、海底にゴロゴロ転がっている大きな石や岩を波が運んでしまうため、人に直撃したら死ぬ危険性があります。「噴火」と言うとドロドロとした真っ赤な溶岩が流れるイメージですが、実際には「噴石」と呼ばれる石に当たって亡くなる方が多いように、「高波」の場合も波にさらわれるだけでなく、波が運んできた石が直撃して死ぬ可能性があるということは覚えておく必要があります。そして、その波と石が直撃すると、建物や車はいとも簡単に破壊されてしまうというわけです。
熱海のホテルでも高波の被害を受けましたが、小田原漁港に7億円かけて建設中の観光施設も被害を受けました。建物の目の前には波を避けるための壁が建てられているのですが、それを乗り越えて建物を直撃しているので、どうやって防いだらいいのかが分かりません。今回は幸いにも建設中だったため、営業していたわけではなく、人がケガをすることはありませんでした。もしこれが営業中だったらケガ人が出ることは避けられなかったのではないでしょうか。「台風が来た時にはみんなで逃げる」というルールを設けることで被害を減らす方法もありますが、今後も高波で施設がやられる可能性は否定できないので、石や岩が直撃しても簡単に壊れない丈夫な造りにするなどの対策は必要かもしれません。台風の日には不要不急の外出を避けるべきだといいますが、本当にその通りだと思いますので、国民一人一人がしっかりとした「防災意識」を持つことが犠牲者を減らす第一歩だと思います。今年は猛暑、水害、台風と災害だらけの夏になりましたので、これを機に、家や会社の防災を見直してみてもいいかもしれません。
■ 観光で経済活性化を狙う小田原市のプロジェクト
いまや「地域活性化」は、どの自治体でも真剣に考えるべきテーマの一つとなっています。安倍政権はアベノミクスが成功していると言いますが、アベノミクスの恩恵を受けてバクバクに儲かっている街を見たことは一度もなく、街の経済を回そうと思ったら独自の知恵と努力は不可欠です。「プロ野球選手になりたければ練習しなければいけません」ぐらい当たり前すぎる話なので、こんなことを偉そうに記事にしていること自体がおかしいのですが、地元議員がどいつもこいつもポンコツすぎて、アイディアらしいアイディアも出さず、平日の昼間からゴロゴロゴロゴロ、「あーあ、アベノミクスで100億円ぐらい入ったらな!」と言っている奴だらけです。しかも、それで100億円ぐらい入ったのは、自治体ではなく、加計学園です。
街の経済を活性化するには、みんなでどうするべきかを考えなければなりません。そんな中、新幹線も止まるし、箱根の玄関口でもある最高の立地を生かして、「観光」で地域活性化を狙おうと奮闘しているのが神奈川県小田原市です。それまでは箱根のおこぼれで宿泊してもらえればいいという意識だったそうですが、2016年に箱根で噴火リスクが高まったことを受け、観光客が大激減。このままではダメだと国際観光都市を目指し、本格的に観光に力を入れることになりました。今回、その地域経済活性化の目玉にしようとしていた施設が、台風12号の高波の影響でめちゃくちゃになってしまったのですが、みんなが観光に来てくれるようになれば、地元の飲食店、旅館、お土産屋さんなどが儲かり、経済が回るようになります。日本人の平均年収は下がるばかりで、来年10月には消費税が10%になると言っているのですから、みんなが気軽に海外旅行に行ける時代ではなくなります。さらに、都心で暮らす人たちはどんどん車を持てなくなっているので、電車で行ける手軽な観光地として「小田原市」にはチャンスが訪れているのです。まさかの形で「アベノミクスの効果」と言えるのかもしれませんが、神奈川県全体では観光客が前年比マイナス1.4%、約270万人の減少になっているのに、小田原市の観光客は前年比31.0%増、約141万人の増加となっているのです。この伸び率は神奈川県内でもダントツで、地元企業の奮闘も大きいと思いますが、行政のサポートも大きいのです。これがひとえに市長や市議のおかげだとは言わないのですが、あの手この手で観光地としての魅力を高めようと努力していることは確かです。
小田原市が観光に力を入れるようになったのは、地元の商工会が強く、市長や市議のケツを叩きまくっていることにあります。特に、小田原市は観光客が来てくれないと商売上がったりなので、地元の商工会も本気になります。これに応えるように駅前の再開発が進んだり、小田原城のライトアップに力を入れたりしているのですが、努力の甲斐あって効果が出ており、多くの自治体が経済が沈んでいく中、小田原市は好調をキープしているのです。実際に街を歩いてみましたが、どうやって営業しているのか分からないような昔ながらのお店もシャッターを下ろさずに頑張っていますし、小田原市の経済はギリギリ死んでいません。まだ有効活用できそうな土地やビルが残っているので、伸びしろもありそうです。
小田原市では「観光アプリ」にも力を入れており、これをダウンロードして小田原城に行くと、ARを使って当時の様子が再現されたり、お城のすぐ近くで「食べ歩きかまぼこ通り」という社会実験を行い、観光客を集めようとしていたり、天守閣では展示内容を面白く一新し、刀剣や甲冑を展示する「SAMURAI館」もオープン。忍者体験をできるスペースがあったりと、観光客が喜ぶ仕掛けをたくさん用意しています。できることは何でもやるというスタンスで、とにかく観光に力を入れている小田原市。箱根に行く前に小田原市内で楽しむという観光客はこれから増えてくると思いますし、ベンチャー精神に溢れている人なら、小田原市内でビジネスを始めるのは面白いかもしれません。
小田原駅の地下街「ハルネ小田原」は、2007年に当時の運営会社が営業を終了し、長らく通路として使われてきましたが、市は地下街を再生するため、2014年11月に観光案内所やイベント広場、店舗を兼ねた施設として再オープン。地下街は前年比13%増の売上を記録するなど、着実に利用者が増えており、アンケートでは20%の人が毎日利用していると答えるなど、駅前の活性化にも少しずつ成功しています。
■ 小田原と豊洲と万葉倶楽部
小田原駅東口のお城通り地区開発は、地元の「万葉倶楽部」が優先交渉権者となり、和風の商業棟で宿場町をイメージした建物になる見込みだといいます。基本計画によると、ホテル棟は14階建て、1階と2階は観光バスの乗降場となり、3階は商業施設など、6階には市の図書館や子育て支援施設が入り、7・8階は医療施設、10~13階はホテルの洋室、14階は展望広場とレストランを設け、高さ55メートルからの眺望を楽しむといいます。お城通りに面する商業棟は4階建てで、4階にはホテルの和室15室を置くといい、ホテル3階を連絡する歩行者通路の設置も検討中です。完成は2020年前半の予定です。
「万葉倶楽部」の社長さんがとても顔の広い人物だということなのでしょうけど、小田原駅前の再開発を担うのも「万葉倶楽部」だし、豊洲の千客万来施設を手がけるのも「万葉倶楽部」のようです。今、日本の観光産業の中心にいるのは「万葉倶楽部」だと言っていいかもしれません。
■ 経済が重視される一方で無視される生活保護
経済が回ることは大事なことで、こんな時代だからこそ経済を回すためにどうしたらいいのかを考えるのだと思いますが、その一方で、小田原市は生活保護を認めない街として知られています。市の職員が「生活保護なめんな」というジャンパーなどを着て受給者に対応していたことが発覚したり、駅前に「名物」と言われてしまうホームレスの女性がいるなど、新自由主義経済を体現するような街になりつつあります。これからたくさん観光客が訪れ、市の税収が増えた時に、福祉にしっかりお金を回すのかどうか。既に市の文化施設は「財政難」を理由に縮小していますので、市で暮らす弱者が蔑ろにされるようなことが起こらないように、市民の皆さんは経済と同時進行で行政を見守る必要があります。そうでなければ、お金儲けには税金を投じるけれど、本来は税金でやるべき行政サービスがどんどん縮小され、貧富の差がさらに拡大することになってしまいます。
■ 選挙ウォッチャーの分析&考察
小田原城の城主である北条氏は、今で言う「税金」を低めに設定し、人々の暮らしを守る優しい城主でした。ところが、現代の小田原市は、市の職員が「生活保護なめんな」とプリントされたジャンパーやTシャツなどのオリジナルグッズを作製し、不正受給バスターを気取り、本当に生活保護を必要としている人たちをも冷遇しています。経済振興策には億単位のお金を使うけれど、生活保護は切り捨てる。それなら最初から国も自治体も必要ありません。観光を軸にして経済を回すことに成功しているのは大変素晴らしいことなのですが、経済が回って増えた税収で、きちんと弱者をケアして、自治体の役割を果たすつもりはあるのでしょうか。今、日本は「新自由主義経済」が主流になろうとしています。弱者が弱者となるのは自己責任で、強者がより強くなるための経済政策が主流です。これが行き過ぎると、「防災」が軽視されてしまう可能性もあります。「防災」というのは、起こるかどうかも分からないものにコストをかけることです。小田原市は活火山が近くにあり、海に面した場所でもあります。安心して観光してもらうためには万全の防災対策が不可欠だと思いますが、今回、高波の被害を受けた建設中の観光施設に、どんな対策を施してオープンするのかは、かなり興味深いところです。高波なんて滅多にあるものではないので、何の対策も取らずにオープンするのか。それとも、何らかの対策をした上でオープンするのか。これである程度の「街のスタンス」というものも見えるのではないかと思うのです。地方経済が疲弊している今、「経済再生」を公約に掲げる政治家は人気があります。安倍政権の人気を支えているのも「アベノミクス」という経済再生計画です。公文書さえ改竄する人たちなので、あらゆる数字が信用できない「アベノミクス」ですが、今の日本人は経済が回れば幸せになれるはずだと考えているのです。本当に経済が回った先に幸せが待っているのかどうか。経済を優先してしまったばっかりに起こる不幸はないのか。小田原市はそれを測るモデルケースになるかもしれません。僕たちはしっかり見守っていく必要があると思います。[了]
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