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【選挙ウォッチャー】 沖縄県知事選2018・佐喜眞淳さんの公約実現性を検証する。

先日は、佐喜眞淳さんのプロモーションビデオがとってもユニークなことになっているという記事をお届けしましたが、佐喜眞淳さん陣営がまた新たな公約動画をアップしたのですが、これがまた「ディズニーリゾートを誘致する」と同じくらいの非現実的な公約となっているので、普段、政治に興味関心のない人たちのために、これがどれくらい非現実的なことなのかを検証したいと思います。

選挙の公約というのは、本来、当選したら確実に実現してもらわないといけません。「なんだかんだで実現できませんでした」と言われてしまうと、何のために投票したのか分からなくなってしまうからです。しかし、昨今の選挙では公約を真剣に守ろうという人は少なくなりました。とにかく嘘でもいいから良さそうな公約を掲げて、もし実現できなくても投票した人たちは政治や選挙に関心がないので、その頃にはすっかり忘れているからです。ただ、こんなことを繰り返していたら僕たちの生活はどんどん悪くなるばかりです。だから、僕たちはその公約が本当に実現できるものなのかどうかを見極めて、投票する人を決めなければならないのです。それでは佐喜眞淳さんが掲げている公約を見ていくことにしましょう。

【公約①】日米地位協定の改定

佐喜眞淳さんは「日米地位協定の改定」を公約に掲げています。「日米地位協定」とは、その名の通り、日本とアメリカの地位を決めるものです。ここで言う「地位」とは、日本とアメリカ、どちらの方が上かという話で、第二次世界大戦で敗戦国となり、沖縄はアメリカに支配されていた土地になりますので、当然、アメリカの方が上であるということを認めた協定になります。なので、佐喜眞淳さんが紹介しているVTRにあるように、日本は米軍が事故や犯罪を起こしても日本の警察が介入することができず、最近はレイプや殺人のような凶悪犯罪の場合に身柄の引き渡しが行われるようになってきましたが、一昔前は犯人がわかっていても、その犯人がノコノコとアメリカに帰ってしまい、捕まえることができませんでした。この「日米地位協定」を変えるべきだという話は、沖縄でずっと言われていることであり、佐喜眞淳さんが知事を目指す前から歴代の沖縄の政治家たちがずっと頑張ってきたことになります。

なので、日米地位協定を変えるために努力することは、佐喜眞淳さんの専売事項ではなく、玉城デニーさんもまた国会議員として日米地位協定の問題に取り組んできた人物の一人なので、わざわざ大きな声で言うことでもありません。それどころか、佐喜眞淳さんは日本会議に所属しており、非常に偏ったカルト右翼思想の持ち主です。日本会議は「右翼団体」に位置付けられますが、従来の右翼とは異なり、「対中従米」という姿勢です。中国には非常に厳しい態度を取ろうとしますが、アメリカには靴の裏まで舐める性質を持っており、佐喜眞淳さんが宜野湾市長だった時に普天間第二小学校に米軍ヘリの窓枠が落ちた時、校長先生が生徒たちに口止めをしたという話もありますし、佐喜眞淳さんは保護者との面会を断っています。このような姿勢で日米地域協定が見直されるほど甘いものではありませんので、日米地位協定を改定するんだと意気込むことは素晴らしいことですが、その実現性については大いに疑問が残ると言わざるを得ません。

【公約②】携帯電話料金の4割削減

先日、菅義偉官房長官が突然、記者会見で「携帯電話の料金が高すぎる」と言い出し、ドコモやソフトバンクなど大手キャリアの株価が暴落するという騒動がありました。この時、多くの人が「どうして突然、携帯電話の料金が高いなんて言い出したのだろう」と疑問に思い、これは海外からキャリアを参入させるための布石ではないかという邪推が起こりました。しかし、まさかこんな所に答えがあるとは思いませんでした。佐喜眞淳さんとタッグを組んでいる菅義偉官房長官が、佐喜眞淳さんが知事になったら携帯電話の料金が4割削減されるかのような話を匂わせ始めたのです。沖縄の貧困率は非常に高く、世帯年収が300万円を下回る家庭がたくさんあります。少ない生活費の中で携帯電話料金が占める割合は高く、確かに携帯電話の料金が安くなることは生活の一助になることは間違いありません。ただ、大手キャリアからすると沖縄だけ料金を安くすることに正義はありません。東京で1000円のものが沖縄で600円になる理屈がないのです。むしろ、大手キャリアとしてはコストの観点から言って、東京だったら600円でいいけど、沖縄だったら1000円にしたいところを一律料金にしているくらいなので、官房長官や沖縄県知事から「安くしてくれ」と言われて安くする道理がないのです。なので、もしこれを実現しようということになると、大手キャリアに対して補助金を支払うという方法になろうかと思いますが、その財源はどこから捻出されるのでしょうか。

もし県民税から支払われるのであれば意味がないし、国から支払われるのだとすると、どうして沖縄県民のスマホ代を東京都や神奈川県はもちろん、島根県や鳥取県の人たちまで負担してやらなければならないのかが分かりません。そもそもスマホ代を安くする方法は公約を掲げなくても存在します。格安スマホが続々と登場していますし、今の時代、スマホを「電話」として使っている人は少なく、ほとんど「ネット端末」と化しています。つまり、Wi-Fiスポットさえたくさんあれば、大手キャリアを使わなくても生きていくことができるというわけです。沖縄はFree Wi-Fiが少ないと言えばそうかもしれませんが、結局、山奥の村までFree Wi-Fiを整備することはできないので、ただ都市部にFree Wi-Fiスポットを増やすだけでスマホの料金問題はある程度、解決してしまいます。大手キャリアを巻き込んで「スマホ代を安くしろ!」と言ってしまうから話が大きくなるのですが、都市部のFree Wi-Fiを増やすというのなら、それは佐喜眞淳さんじゃなくてもできることであり、既に道筋が立っていることを大きな声で言っているだけに過ぎません。これに官房長官が加担しているのですから、どれだけ県民を騙そうとしているんだという話です。

【公約③】沖縄にプロ野球チームを創設

もし、鹿児島に野球チームを作ろうとか、熊本に野球チームを作ろうとか、三重に野球チームを作ろうとか言い出したとしたら、皆さんはどう思うでしょうか。「そんな場所にプロ野球チームがあったところで、客が入らないんじゃない?」と思うと思います。しかし、沖縄県の人口は全国25位で、三重県は22位、熊本県は23位、鹿児島県は24位です。つまり、お客さんが来るというポテンシャルで言えば、沖縄県より三重県、熊本県、鹿児島県の方が高いことになり、ましてや三重県なら中京圏や関西圏に近く、熊本県や鹿児島県であれば九州の人たちが来てくれるかもしれませんが、レギュラーシーズンにプロ野球の試合を観戦するためにわざわざ沖縄まで行く人はレアケースなので、沖縄県は沖縄県民だけで客席を埋めなければならないことになります。参考までに東京ドームの収容人数は4万6000人なので、毎日の試合を沖縄県民の約3%が見に行く計算になり、この3%の中には赤ちゃんや明らかにヨボヨボの高齢者も含まれるため、野球ファンがほぼ全試合を観に行くぐらいでなければビジネスとして成り立ちません。スカパーやDAZNなどで応援するチームの試合がすべて家のテレビやスマホで見られる時代に、沖縄県で暮らす野球ファンがほぼ全試合、球場に足を運ぶくらいでなければビジネスとして成り立たないのです。ビジネスとして成り立たないものは、どれだけ頑張っても続きません。僕の「選挙ウォッチャー」というビジネスも全レポートを無料にしてしまうと成り立たないので、すべては有料レポートを買ってくださっている方々のおかげです。

プロ野球チーム以上にディズニーリゾートやUSJなどの大型テーマパークを誘致するのは難しかったわけですが、その反省も検証もなく、舌の根も乾かぬうちにプロ野球チームを創設しようと言っているのですから、どれだけ頭の悪い話をしているのでしょうか。そんなことをするくらいならプロ野球チームに「沖縄ウィーク」を設けてもらい、沖縄で試合を開催してもらうとともに、沖縄県出身の選手たちを盛り上げる演出をすれば、今よりもっとプロ野球を楽しめますし、既に野球場は県内各地にあるので、そいつを少しリニューアルするだけで、プロ野球を使った経済振興策は実現します。プロ野球チームを作って「基地跡地を利用して開閉式のドーム球場を作る」などと言っていますが、これほど無駄な話はありません。そんなものにお金を使うなら、とっとと「ゆいレール」を延伸するために全力を尽くした方がよっぽど経済効果があるってなものです。そもそも普天間基地の返還が約束されていない段階で辺野古基地を作る人なので、プロ野球チームが創設できるかどうかも分からないのに開閉式のドーム球場だけはとっとと作ろうとするのではないかと思わずにはいられません。だいたい普天間基地を返してもらえるとしても辺野古基地が完成した後です。だとすると、基地跡地に開閉式のドーム球場を作るにしても、さらに時間がかかるという話になり、一体、何年後を想定した話をしているのかが全然わかりません。最低でも10年以上先の話をしているのですが、これを任期4年の公約に掲げていること自体が、そもそも詐欺みたいな話です。

【公約④】中小企業支援で賃金アップ

これもまたアベノミクスのトリクルダウンと理屈は同じです。賃金を上げるために中小企業にお金を出すと言っているのです。しかし、企業に補助金を出したところで、それが従業員にそのまま還元されるケースというのは極めて珍しいのです。だから、もし本当に沖縄県民の賃金を上げたいのであれば、まず賃金を上げなければならないという条例を作るなりして、沖縄県民の賃金を上げる環境をしっかり整えた上で、ただ人件費が上がるだけだと困ってしまう中小企業のために補助金を出す「二段階構造」にしなければなりません。ところが、実際には中小企業にお金をばらまくことで、最終的に票を獲得したいだけです。自民党に投票しないと補助金が出ないかもしれないと言われたら、弱小零細の中小企業は明日の生活のために自民党に投票せざるを得なくなるわけです。補助金を握っているのは自民党なのですから、企業は常に自民党を応援することになります。これはちょっとした人質みたいなものです。

ただし、補助金を握る人が変われば、企業は別の政党を支持するようになります。実際、大阪では「大阪維新の会」が与党になっているため、大阪タクシー協会をはじめ、大阪維新の会に良い顔をしておかないと経営が悪化しかねない会社や団体は、自民党ではなく大阪維新の会を支持しています。このような構造もあって、自民党が強い沖縄県では企業や団体が自民党を応援しているわけですが、「最低賃金を上げる」と言ったら企業も困るので、どうしても企業にお金をばらまく「トリクルダウン方式」を取らずにはいられなくなるわけです。ただ、そうすると企業は補助金をもらうだけもらって従業員には配らないので、実は、沖縄県民の最低賃金を上げるということにはならないのです。これはアベノミクスで貧富の差が急速に広がっていることを見ても証明されている話です。

【公約⑤】公費留学・就活支援

こんなに沖縄県のためにならないことを、果たして、佐喜眞淳さんが本当に実現するのかどうかは極めて微妙なところです。将来有望な若者たちに税金を使って留学させてあげるのも、東京の大手企業に就職するために税金で交通費を出してあげるのも、若者たちの将来のことを思えば大変素晴らしいサービスだと思います。しかし、これでは沖縄県から優秀な人材が外に出て行くだけで、沖縄県のメリットはありません。ただ沖縄出身の優秀な人材が海外で活躍したり、あるいは、優秀な人材が東京の一流企業でバリバリに働き、東京のマンションに住むだけの話です。本当は東京や海外から沖縄に来てもらい、バリバリに活躍してもらって経済を活性化しなければならないのに、その逆のことをしようとしているのですから、選挙で人気を取るためにそうは言うものの、実際にはすぐに打ち切られるという運命を辿るのではないかと思わずにはいられません。

■ 選挙ウォッチャーの分析&考察

こうやって並べてみると、実現性の高いものは何一つなく、宜野湾市長選の時に大風呂敷を広げた「ディズニーリゾート誘致」の公約から何も成長していない上に反省もしていないのだということがよくわかります。公約が立派なので魅力的な人間に見えますが、結局、最初から実現性が極めて低いと言わざるを得ないので、詐欺的な公約に沖縄県民が騙される人がたくさんいるのだと思うと、沖縄の未来があまり明るいとは言えないと思います。冷静になって考えてみると、ものすごくおかしなことを言っていることに気付いていただきたいと思います。[了]

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