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てぬ歩き#02 | 常滑


常滑にある杉江製陶所さんのオリジナル手ぬぐい


日焼け止めを忘れてきたのが一番の失敗だった。事前に調べた休暇中の天気予報は、どの日もいやなものばかり。旅の2日目にフェリーに乗る予定があったので、もし海が荒れて運行停止になったとき、どう予定を変更しようか、そればかり考えていた。前日になっても予報はずっとかわらず、旅行中はずっと曇りだろうと、高を括っていたところもある。男なので、肌のことなんてさほど気にしなくてもいいと思っていたフシもある。
常滑駅に着いたとき思った。陽差しが痛い。常滑は暑かった。いや、7月なのだからどこも熱いはずだ。まして、昨今の温暖化のなかでは。

常滑は愛知県の知多半島にある。焼き物の産地として有名。詳しくはないが、とかくものづくりが好きなので、陶器を見るのは好きだ。益子の陶器市などに足を運ぶこともある。欲しい!と思うのだが、まず貧乏。手仕事のものはそれなりにするもの(だし、払うべき)なので、安々とは買えない。それに、食器類などは物欲に身を任せて集めだすと手につけられないくらい場所が必要になるので、躊躇してしまうのだ。ううん、物欲の敵は空間とも覚えたり。

もっとおおきな「とこにゃん」もいるので、ぜひ見ていただきたい

観光地のはじまりには、大きな招き猫がお出迎え。ガイドで見ていたものの……うん、こんにちわ、シュール。
細い道を曲がると、いわゆる観光地。坂町の脇に積み上げられた焼酎瓶。資料館、のんびりしたカフェ、煉瓦の煙突。常滑は有名な陶器の産地。大体的な陶器市も開かれている。褐色のものが特徴的だろうか。これはこれで趣がある色合い。
炎天下の中の坂道を、お店や登り窯を見学した。常滑は海が近かったはずだが、こう、焼き物のように土の色ばかり眺めていると、もっと内陸の街にいるような気がしてくる。
陶芸は2度ほど体験レベルでやったことがある。高校時代の工芸の授業と、淡路島の洲本にある窯で初心者向けのコース。ろくろを回して2、3点湯呑を作った。そのとき、「やっぱりやったことがあるんだねえ」と、ちょっぴり褒められ(?)はしたが、うーん……粘土を練るのも、ろくろで形を整えるのも、自分ではしっくりこなかった。作るのは向いてないかな、の思う。釉薬の色の出しかたなどには興味がある。後日焼き上がったものが送られてきて……あれはまだどこかにあっただろうかと、部屋にひとつだけ残っていた。たしかこれは水漏れしてたからペン立てにしていた。
昼頃に喫茶店の固まった一角に出た。常滑牛乳のスタンドでコーヒー牛乳を購入。ロゴ可愛い。ランチで食べた定食に落花生煮付けがあって、「このあたりでは落花生を煮豆にするのよ」と教えられた。そのお店にスマホを置き忘れ、慌てて引き返したのを、ぼんやりと覚えている。

そびえたつ煙突
溶けそうな猫。雑貨屋の美人さん

物欲過多とも関係ありそうだが、貧乏性でもある。旅行のときに、とにかく予定を詰め込みたい。時間を持て余すほうがソワソワする。昼過ぎに常滑を出て、名古屋へ引き返す。覚王山を歩いて、大須、名古屋あたりをひたすら歩いた。夕刻にまた南下して、吉良温泉で一泊。
次の日は、一色港から佐久島へ向かう。伊勢湾にあるちいさな島。私が旅好きになったきっかけのひとつに、しまなみ海道へ行ったことがあり、それ以来、島を巡ることに楽しみを感じるようになった。海の遠い場所で育ったせいもしれない。佐久島の隣の日間賀島へも過去に行った(ただ、日間賀島が南知多市で、知多半島の港からいった。佐久島は西尾市で、一色港から行く。これって不便じゃない?)
佐久島は端から端まで2時間くらいで歩けるだろうか。離島にありがちな(といっては失礼か)アートの島になっているので、散歩するのが楽しい。のどかな島の街も十分楽しいのだが、観光地として盛り上げようという姿勢と、のんびりした島の時間が混ざり合って歩くのがたのしい。無料販売所においてあった卵に蛇がにじり寄っていたのを覚えている。
昼すぎに佐久島から戻り、竹島へ。竹島水族館が近年人気が高いのだが、あいにくの休館日で……これは事前にわかっていたので、まあ、竹島の神社へだけ参る。残念だけど、いずれまた来よう。そして名古屋へ戻り、ひととおり駅の中で食事を済ませて帰郷。新幹線待ちにひつまぶしと味噌カツの(いかにも名古屋な)セットを食べた。
日焼けは、常滑でもう手遅れなのに気がついた。暑さと、日差し。さすがに炎天下の無防備。途中で日焼け止めを買うのもやめた。あんのじょう、風呂では皮膚が痛いし、ともかく色が引くまで、残念なくらいみすぼらしい日焼け姿だった。

ご存知「矢場とん」
佐久島のオブジェ
佐久島にいる人魚


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