労働力不足
経済産業省のウェビナー「なぜ、実質賃金が低下しているのか?:新型コロナ禍後の内外の経済環境を踏まえて」で指摘されている点、「マクロ経済全体では人手不足は生じていない」とのことでした。
職種や業種、地域によって労働力のマッチングに凸凹が生じていることから、局所的には人手不足が生じている一方で、経済全体では労働力はむしろ余剰のある状態なのでしょう。
局所的に労働力不足が生じている職場として、建設業や物流業がよく取り上げられますが、おそらくこの業界内でも現場作業員やドライバーが足りていない一方、事務職などで募集を出した場合には多数の応募があるのだと思います。
また、東京では人が余っていて地方では足りていないだとか、その逆だとか、同じ業界内でも職種や地域によって人手不足だったりそうでなかったりということは当然生じるはずです。
私のいる業界は今のところ人手不足が著しく、同業他社の知人に聞く限りどの会社でも長時間労働が常態化しています。
勤務先の会社も例に漏れず、常に多忙な状態が継続していて、完全に人手不足に陥っているなといった様子で、今のところは我々従業員の長時間労働で対応できているものの、いずれパンクするのだろうなと容易に想像できます。前線の崩壊は近い。
労働力の不足している業界では、どの企業も新規受注に対応する余力は乏しくなってしまっているのですが、そんな状況でも企業経営者は心配性な人間が多いのか、積極的に新規受注を増やそうと努力してしまうことがしばしば見られます。
こんな状況でカルテルでも組めば安心できるのでしょうが、生憎どの業界でも当然のように競争が行われていることから、常にシェア拡大の焦りに駆られてしまうのでしょう。
そもそも、労働力不足に陥るような状況なので、それ以上受注しても生産が追い付かないのです。
追加的な生産量を増加させられない状況で新規受注を増やしたとしても、業務遂行に遅れが生まれたり、従業員がどこかで無理をしたりと、至る所に歪みが生じてしまいます。
私の勤務先でも、労働力不足に関する問題は従業員の間で共通で認識している課題となっている様子ですが、経営者が拡大路線に夢中で社内を顧みることがない傾向にあることから、必要以上の新規受注を行っています。
経営戦略部門のようなものが曲りなりにも存在はしているものの、実質的に拡大路線を敷く経営者の意向には逆らえないようで、最も深刻な問題である労働力不足についてさほど抜本的な策を練らない一方で、新規営業の話題で盛り上がっている様子。
経営戦略的な部門と思い込んでいるようですが、あれではただの営業部門だよなあと思いつつ、自分は火傷したくないので距離を取っている立場から文句の一つも言えないのが少しもどかしい。
おそらく、様々な企業で労働力不足の問題はあって、同業他社も労働力不足にあえいでいる状況では、過度に競争環境へ挑戦する必要はないはずです。
むしろ、今保有している労働力に無理をさせることで、退職や傷病などの事由でさらに労働力の不足する状況が悪化することのほうが問題です。
労働者一人当たりの労働時間を追加的に増やすことが難しい状況で、ひとりでも労働力が脱落すると、残ったメンバーへさらに強い負荷がかかることにより、退職者や傷病者が増加して総崩れとなるリスクが高いのではないでしょうか。
そのような状況に陥った場合、新規開拓営業を行って受注を増やしても、そもそも対応できるスタッフがいないという状況になるのですから、せっかくの努力が水泡に帰すこととなります。
そもそも、経営戦略を立案する部門は、営業戦術を立案する部門ではないので、全社的なバランスだとか業界の競争環境を見極めた上で、拡大路線を採るか保守的な路線を採るかといった判断をしなければならないのですが、私の勤務先では「拡大路線」のみが至上命題と信仰する経営者の影響により、保守的路線へ進む選択肢が失われている状況にあります。兵站を軽視して戦線を拡大した某帝国を連想する状態で、直感的に崩壊が近いと思ってしまうんですよね。
残業が多すぎる愚痴なので取り留めもない文章になってしまったな~