ただの一般大学生がSteamで「デバッグ彼女」をリリースするまで
1.ただの一般大学生がゲームクリエイターになるまで
ネット上には様々なクリエイターが存在しています。
「このクリエイターすごい!!」と思った人が実は高校生だったり、はたまた専業主婦の方であったり、本職は全然違うお仕事をしている方だったりと…
私もネット上やイベント会場でよく驚かれるのですが、本職は大学生、しかも専門は教育史という、ばりばりの文系です。
そんな私ですが、3日後、わくわくゲームズさんから、「デバッグ彼女」というゲームをSteam(・Switch)でリリースすることになりました(パチパチ)。
さて、話は少し戻りますが、私の専門が教育史ということで、「なぜ、全然関係なさそうなゲーム開発をはじめたの?」とたびたび尋ねられることがあります。
ということで、最初に「なぜゲームクリエイターをはじめたのか?」、デバッグ彼女が生まれる第一歩目のお話をしていきたいと思います。
私が大学に入学した時は、まだコロナ化のほとぼりが冷めておらず、授業などもZoomなどによるオンライン形式のものでした。サークル活動なども少なく、友達ができる機会も少ない、バイトもしにくい…そんな状況のためかなりの時間を持て余していました。
また、当時、一番精神的にきつかったことが大学受験の失敗です。今では笑い話にしていますが、1点という差で志望校に落ち、失意に暮れる日々を過ごしていました。
加えて失恋なども重なり、人生のどん底にいたのではないかと思います(笑)
そんな中、夢中になったのがゲームという”エンタメ”でした。日々の辛いことを忘れさせてくれるゲーム世界に入りびたり、毎日のようにゲームをする自堕落な生活を送っていました。
そんなゲーム生活を送る中で転機が訪れます。私の脳裏にふとこんなことが思い浮かびました。
”ゲームってどうやってつくられるんだろう????????”
気になって調べてみると、ゲームというのは意外と簡単に作れることがわかりました。私の性格上、気になったら即チャレンジなので、大学1年生の夏休みを利用し、ゲーム開発にどっぷりと時間を注ぎました。そして、案外これが天職なのではないか!、と思うくらいに楽しいと感じるようになり、私は”ゲームを遊ぶ側”から”ゲームを作る側”の世界に飛び込むことになりました。
2.「デバッグ彼女」が生まれた理由
前章で”ゲーム制作は私の天職だ!”的なことを述べたのに早速矛盾するようなことを書くのですが、実は「デバッグ彼女」の企画を立てていた時期はゲーム制作を諦めようと思っていました。
「???」と思った方も多いと思いますが、ちゃんとした理由があります。
”ゲームクリエイター”と聞くときらきらした感じで、楽しそうイメージを持たれる方が多いと思うのですが、実際は想像以上に大変です。
私の場合は個人開発なのですが、その場合は、企画からゲーム制作(プログラムやサウンド、イラスト)、広告、販売と様々なことをすべて一人で行わなければいけません。もちろん外注など行えば、いくつかの工程を省くことはできますが、新たな手続きやコミュニケーションなどが生まれます。
そして、多くの時間と労力を割き、やっとのことでゲームを完成させることができます。
しかし、数多にあるコンテンツの中から、自身の作品を見つけてもらい、遊んでもらうのは非常に難しいです。批判コメントが付くのはまだいい方です。なぜなら、気づけてもらない、遊んでもらえないことがほとんどだから…
当時はそんなことが続いて時期であり、ゲーム制作を諦めようと思っていました…
そんな時、”諦めずもう少し頑張ってみよう!”と思えたのは元恋人の影響がありました。
少しばかりお恥ずかしい話なのですが、私は付き合っていた当時から元恋人にとても依存する部分が多くありました。例えば、部活を頑張ったり、勉強を頑張ったり、優しくしたりと、なにかしらの行動には元恋人に自分のことを認知してほしいという身勝手な依存が働いていたのです。
自分のために頑張るのではなく、なにもかもが元恋人のため、といった思いが強かったのです。もちろんそれは、ゲーム制作にも表れていました。他の人とはちょっとばかり違うことをやってる自分を認知してほしい…と。(みなさんも似たような経験ありますでしょうか?苦笑)
もちろん別れたあとなので、相手は自分のことをミジンコも意識してはいないと思っていましたが…自分の中で別れた後も、未だにそのような意識が潜在的に存在していたのです。そこで、私自身…
”そんな思いや考え方を変えたい!”
”自分の意志で、自分の未来のために頑張りたい!”
”その一歩としてゲーム制作を頑張りたい!”
そこから、もう少し踏ん張ってみようと思い、今までにない少し大きめのタイトルを作ろうと、「デバッグ彼女」の企画がスタートしました(元恋人には感謝です)。
前置きがだいぶ長くなってしまったのですが、前述の思いから作品のテーマを
”クリエイターが共感でき、前向きになれる作品”
にしました。
このテーマから様々キーワードが浮かんできたのですが、そこで注目したのが”デバッグ”と”応援”です。
”共感”を考えたとき、ゲーム制作者あるあるを想像したのですが、そこで浮かんできたのが「デバッグ」でした。「デバッグ」とは、ゲーム内にあるバグを探すことなのですが、ゲーム開発をしていると本当にたくさんバグに出くわします。
誤字や反応しないボタンなど小さなバグから、進行不能になるバグや、セーブデータが消えてしまう重大なバグなど、大なり小なりゲームを作っていると本当に様々なものに出くわします。実際、私の制作した「デバッグ彼女」の場合、デバッグ修正期間に5か月ほどかかりました。初期リリースがいい加減すぎたというのはあるかもしれませんが、修正リストが優に100を超えていた時は泣きました…
そんな、多くのプログラマーが格闘する内容をゲームの核に入れたら面白いのではないか思い、ゲーム内にデバッグ作業を入れるというアイデアが生まれました!
そしてもう1つ、ゲーム開発に対して”前向き”になれることを考えたときに思い浮かんだのが「応援」でした。
私自身、とてもアイドルが好きであり、辛い時などに頑張れたきっかけの1つでした。また、個人開発をしている身のため、孤独での開発に嫌気がさしていたということもありました。そこで「一緒にゲームを作ってくれる仲間がいたら楽しいだろうな」、「ゲーム制作を応援してくれる仲間がいたら頑張ることができるだろうな」、といった妄想が膨らみ、先ほどの「デバッグ」のアイデアと合わせて”デバッグ彼女”が誕生しました!
ちなみにここだけの裏話ですが、デバッグ彼女のヒロイン「佐倉くるみ」には実在のモデルが存在します。かれこれ5年近く推し活をしている「桜木こと」さんというアイドルの方です。彼女すごく一生懸命な方で、ファンのことを本当に大切してくださる素敵なアイドルなのでここでこっそり宣伝しておきます(笑)
3.イベント出展、そしてパブリッシャー「わくわくゲームズ」との運命的な出会い
さて、前章で色々な葛藤を乗り越え、「デバッグ彼女」の制作を始めたわけですが、これがやはり思った以上に大変でした。少し大きめのタイトルを作るなら、ということでインディーゲームを中心に扱うゲーム出展イベントに応募したのですが、応募した段階では企画もあいまいな完全見切り発車状態であり、加えて出展日まで3か月もないという状況であったため、地獄の開発生活になりました。
前章でも述べたように、ゲームを作るには、プログラムやイラストの準備、イベント用のフライヤーやPVなどの提出物作成など、多くの作業が必要になってきます。そのため当時は毎日平均して、10時間ほどゲーム制作に時間を割いていました。しかし、当たり前のように学校(この時は大学+専門学校)やバイトもあるため、睡眠時間などはかつかつの生活でした。
そうしてなんとか地獄の日々を乗り越え、ゲームを完成させてイベントに出発。結果としては、多くの方々に興味を持っていただき、たくさんの出会いや温かいお言葉をもらうことができ、非常に満足感・達成感のある経験になりました!
こうして無事イベントも終了し、機材を片付けている途中、ある方が私の方に挨拶をしにやってきてくださいました。ここでご挨拶を交わしたのが、後に「デバッグ彼女」のパブリッシングをお手伝いしてくださることになるわくわくゲームズの大柳さんでした!
私の方はお客さんの対応で全く気付いていなかったのですが、実はわくわくゲームズさんもいくつか作品を出展しており、出展ブースがなんと私のエリアの真向かいだったようでした。そこで、私のブースがありがたいことに盛り上がっていたため、気になり、イベント終了後に声をかけてくださったようでした。
実のところ、他の会社様からもパブリッシングのご案内などは受け取っていたのですが、わくわくゲームズさんに運命感じ、パブリッシングのお願いをさせていただくことになりました。
4.ただの一般大学生がSteamで「デバッグ彼女」をリリースするまで
さて、ここまでがゲーム制作を始めた経緯から「デバッグ彼女」のパブリッシングがつくまでのお話をしていきました。
実はこの後にも、リリースにいたる現在までに様々なストーリーがありました。初のイベント終了後、作品の完成度を高めるために、イラスト変更を行ったり、ストーリーラインに大幅な修正を加えました。
また、ラジオ出演や新たなイベント出展など、様々な経験をし、そこで得たものや感じたものもすべてゲームにつぎ込みました。
ゲーミングカフェ「Creator seed」|【No.71】Creator Seed ‐ゲームクリエイター Chickenさん‐|AuDee(オーディー) | 音声コンテンツプラットフォーム
そして、リリースにあたり、本当に多く方にデバッグしていただきました。Ver0.1.0.0をだした1月(2024年)から約5か月の地獄の”リアルデバッグ期間”を乗り越え、ついにリリースまでたどりつきました。
「デバッグ彼女」のスタートは私一人でしたが、リリース至るまで本当にたくさんの方々にお世話になり、お力を添えていただきました。最後になりますが、イラストレーターの方、サウンド制作の方、パブリッシングの大柳さん、デバッグや開発のアドバイスをしてくださった方々、たくさんの応援をしてくださったみなさまに感謝の意を表し、本記事を終えたいと思います。
プレイヤーの皆さん、「デバッグ彼女」を是非よろしくお願いします!
(リアルバグあったらこっそり教えてください…)
Chicken