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【学び直し】アダム・スミスを読んでみたい⑤分業の制約条件~価値のない「分業」はチームの生産性を下げる

(引用元)
アダム・スミス(著)高哲男(訳)「国富論」(上)講談社

はじめに

今回は、第一編第三章「分業は市場の広さに規制されるということ」の部分になります。

前回分業を引き起こす理由について言及された部分を紹介しました。

かなり概念的なお話が多いため、若干理解に苦労しましたが、今回は比較的単純明快な内容となっています。

とはいえ、経済発展の基本的な事実をはっきりと提示しているので、その意味でも重要な観点です。

以下、今回の引用ポイントです。

今回の引用ポイント

分業の程度は、つねにその力の程度、言い換えれば、市場の広さによって制限されるはずである。
(中略)
水上輸送という手段は、どのような産業の市場であれ、市場を大幅に広げるから、あらゆる種類の産業が自然に枝分かれしながら発展し続けるのは、沿岸部や航行可能な河川の両岸であって、このような進歩が地方の内陸部まで普及していくのは、かなり遅くなってからのことが多い。

前半の文章は、仮に分業したとき、自分の仕事の成果を買ってくれる(需要してくれる)人が少なければ、分業した結果として貧しくなってしまう可能性があることを示唆しています。

そういった意味では、意味のない分業(分けてもそこから価値を生まない分業)は行われず、そのままあらゆる仕事を一手に引き受けた「何でも屋」にならざるを得なくなるということですね。

一方、後半の文章は、当時の物流と経済発展との関わりについて述べています。

当時の海運は、陸運に比べると非常に多くの物資を運搬することができる、効率の良い物流経路でした。

さすがに、飛行機で人間や物資が空を飛ぶことは、いかにスミスといえど想像できなかったようですが(^◇^;)、当時の遠隔地同士の交易は基本的に海運が担っていたようです。

そのため、多くの物資が集まる「港町」では、様々な市場が形成され、取引が活発に行われる中で、都市全体が成長を続けます。

結果として、現在見られる大都市の多くが沿岸部に位置し、現在も、その恩恵を受け続けているというわけですね。


「価値のない役割」が「何でも屋」のリーダーを生み出してしまう

前半部分の文章で示唆されていることは、例えば、会社内のリーダーシップや人的資源管理の考え方にも通じるものを感じます。

チームで仕事をしている際、通常は役割分担(分業)をし、効率的に業務を進めようとすると思います。

しかし、一部の人が怠惰であったり、個人の能力が足りなかったりすることで、チームの進捗に悪影響が出た場合、リーダーはこの人の仕事を肩代わりしようとすることがあります。

そうすると、他のメンバーにも悪影響が出て、「あいつが仕事していないなら自分も仕事しない!」などと、不平不満が募り、結局はリーダーが「何でも屋」となってしまって、生産性の低いチームへと変貌してしまいます。

この結果を招いた、表面上の要因は、最初の一人(怠惰、または力不足)によるものですが、実は、裏に隠れている原因は、その役割分担された業務が、明確に「誰かに需要されている」こと、つまり、「自分の担当する市場がある」ことを感じられるか、ということなのではないかと考えます。

スミスの言によれば、分業は、そこに価値が存在しない限り、必然的には起こりません。

にもかかわらず、無理に分業しようとすれば、そこに「価値のない役割」が生まれます。

この「価値のない役割」こそが、人間のモチベーションを引き下げ、その人の持つ能力を発揮させない原因と捉えることも可能ではないでしょうか。

「価値のない役割」は、人間の業務に専念しようとする気持ちを阻害します。

また、本来価値は存在していても、担当する人間がそれを認識していないという場合も、同様の結果を招きやすい状態となり得ます。

リーダーがチームをマネジメントする際には、この役割分担(分業)によって「価値のない役割」を部下に与えていないか、価値があることを部下に伝えるための努力を怠っていないかを再確認する必要があるのではないでしょうか。

物流の壁~デジタルは物流を変化させるか?

もう一点、気になることがあります。

スミスは物流の規模に市場は制約されるため、そこで分業は制限されると述べています。

従って、いかに効率的に物流システムを構築しようと、ある程度までで流通量は限界を迎え、そこから生産性の拡大は起こりにくいということになります。

一方で、デジタル化の推進によって、商品の一部がデジタル化され、実物を輸送するというコストが発生しなくなりました。

人間が食べるものがデジタル化することはないと思います(ないと信じたい(..;))が、デジタル商品(コンテンツ)のシェアは年々増加している傾向が見られますので、スミスの考える「物流の壁」を超えて成長する可能性も考えられますね。

この点についてはまだまだこれからのお話なので、結論を求めることはできませんが、「デジタル化」が「物流の壁」を超えられるのならば、スミスの思考を人間の科学技術の発展が超えたことを意味しますね。

そんな時代がくるかもしれないと思うと、今の世の中がどんな風に変わっていくのか楽しみなところでもあります(*゚∀゚*)


まとめ

いかがでしたでしょうか。

スミスが提示した「分業」を制約する条件は、様々な知見を与えてくれていると感じます。

いや~学び直している甲斐がありますね(^^)

次回第四章はちょっと変わって「貨幣」についてのお話です。

どんな知見が得られるか、わくわくです。

ではまた次回(・∀・)ノシ

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