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柔道・井上康生監督が、スピードスケートの小平奈緒選手から学んだこと
メダルラッシュに沸く東京五輪で、圧倒的な実績を残している男子柔道。この男子柔道を率いるのが、井上康生監督です。
井上康生監督が、選手たちに伝えてきた3つの大切な言葉とは? また、スピードスケートの小平奈緒選手から学んだこととは?
「覚悟を決めよう」
井上康生(全日本柔道男子代表監督)
『プロの条件』(致知出版社刊)という本の中に、仕事を成就するために欠かせないものとして「熱意」「誠意」「創意」という3つの言葉が紹介されていて、まさしくその通りだと思いました。以来、選手や柔道教室などでもその三つの言葉の大切さを伝えてきました。
監督としても、掲げた目標に対して「こんなもんでいいや」という中途半端ではなく、何が何でも達成するのだという「熱意」を示すことが大事だと思いますし、また、周りの協力なくして本当の成功はないと思っていますので、相手に対しての信頼や敬意といった「誠意」も忘れてはいけません。
そして、考えたり、想像したりする「創意」がなければ、掲げた目標や夢も達成できません。「創意」の源は何かというと知識力だと私は考えているので、指導者として常に学び続ける心を忘れないでいたいと強く思っています。
あと大事にしてきたのは覚悟を持つことです。オリンピックほど生きがい、やりがいを感じられる場はありませんが、一方でその過程においては、苦しいことや辛いことの連続であり、様々な犠牲も払わなくてはなりません。
そういう中では、人間そこまで強い存在ではないので、本当の意味で覚悟を持たなければ、どうしても挫折したり、諦めたりということになってきます。ですから、監督になった時に、選手やスタッフたちにも、「覚悟を決めよう」という話を一番最初にしました。
ただ、先週、平昌オリンピックのスピードスケートで金メダルを獲得した小平奈緒さんの講演会を聴きにいったのですが、彼女がこんなことを言っていたのです。
自分はコーチによく覚悟を決めろと言われてきたけど、覚悟は外から言われて決めるものじゃない、覚悟は自分自身で持つものなんですと。
私はいつも「覚悟を決めろ」と選手に指導していましたから、恥ずかしい思いをしまして、これからは「覚悟を持とう」というように指導していかなくてはいけないと思っているところです。
『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』より