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夕方

夕方になると赤ちゃんには「黄昏泣き」をする時期があるらしい。夕方という時間帯には、人を不安定にさせる何かがあると思う。

子どもの頃から夕方になると、胸の奥の方がギューってなって、おかしくなりそうだった。

いつも思い出すのは小学3年生の私。
友だちと遊んでいると夕方には決まって友だちのお母さんが「暗くならないうちに帰りなさい。お家の人が心配するから。」と言う。帰り道には、どこの家からか夕飯の匂いがした。

家の玄関を開ける瞬間が1番嫌いだった。
真っ暗で無音な空間に耐えられないから、見たくもないテレビをすぐにつける。
父が帰ってくるのは20時か21時頃だ。家に着くまでの道の途中でもしも私が何者かに連れ去られてもすぐには気付いてもらえない。心配するお家の人などいないのだ。温かい夕飯もない。
だけどお腹は空くので食べたくもないパンをかじる。パンを噛みながら私の胸の奥がギューっと締め付けられる。
今、この瞬間、私だけがこの世の中で一人ぼっちなんじゃないかと想像する。
みんなには心配してくれるお母さんと温かい夕飯がある。みんなにはあるのにどうして私にはないんだろう。と。いつもは感じないようにしている寂しさが夕方になると、感じざるを得ないのだ。

私はもう大人になったのに、
やっぱり今でも夕方が嫌いだ。

#日記 #エッセイ #コラム #夕方 #黄昏泣き

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