見出し画像

魔法少女から魔法使いへ

 長年たった一人で魔法修行をつづけてきた魔法少女が魔法使いとなって帰ってきた

のは今月中旬の話。


 過酷な修行を成し遂げたにもかかわらず、彼女はちっともそんな素振りを見せずに新鮮な空気を深く吸い込み味わっていた。

我が家にてささやかながら新年会を開き、誕生日と修行明け、たくさんの祝いを兼ねて娘たちも含め5人で乾杯。

想像を絶する苦行、大切なことだけ残し何もかも忘れられたら楽に生きられるだろう。これ以上の痛みはもう要らない。

私は魔法は使えない。もし使えるようになったとしても、顕示欲をコントロールできるほど器用じゃないから、今はこのままでちょうど良い。

彼女に出逢ってから、あちこちに散らばり何年も見つけることの出来なかったパズルのピースをいくつも見つけることができたけれど一緒に探してほしいなんて言ったことは一度もない。それも彼女の魔法のひとつ。

彼女の姿は、確かに私はこの目で見ることができるけれど、通りすがりの赤の他人からは見えていないらしい。と思えるほどに空気に溶け込んでいる。植物の葉が風になびくように。
ああほんとに見えないのかもしれない。そういう次元にいるんだよ彼女は。丁重に扱っていただきたい。


彼女の持つ魔法のひとつに人間の嘘を簡単に見抜く力がある。
だから私は彼女と一緒に過ごす時、心から純粋に素直でいられる。どうせ何もかもバレるんだからカッコつける必要も無理することもない。

魔法使いの彼女でさえ、ホウキに跨がってこの世界の大空を飛ぶことはできないけれど、そもそもこの世界とはどの世界?

どうやら、別の世界ではホウキを使うまでもなく瞬間移動が可能だから飛ぶ必要も無い。

魔法使いとなった彼女が「低次元の人間どもめ」と思わずに日本の暮らしを粛々と営むことの難しさは、過去の厳しい修行の比では無いように思う。


世界中の魔法少年や魔法少女たちが美しく大空を飛び回り、大海も自由に泳ぎ回れますように。







魔法?魔法使い?信じる?
たかだか100年前の時代にポンとタイムスリップしただけでも、現代人の暮らしぶりや生活アイテムその全てが当時の人々からは魔法でしょう。それが幸福かどうかは別として、地球の裏側の人とも画面上でリアルタイムの会議が開かれていることに今やなんの不思議も無い。
コスパやタイパってワードの陳腐さが際立ってしまうけど、瞬間移動が常識になってしまえば・・・
とにもかくにも「今」吸っている空気の美味しさを味わうことに集中できれば楽。



魔法使いの彼女の平和を今日も祈ります。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?